フランス軍事学校(フッケツ/大紀元)

自己検閲、活動の禁止 ハリウッドを屈服させた中国の手口=仏報告書

フランス国防省傘下の仏軍事学校戦略研究所(IRSEM)がこのほど公表した「中国(共産党)の影響力」と題する報告書は、文化の浸透による中国政府の対外プロパガンダを詳述した。中国当局は映画テレビドラマなどを輸出し、中国共産党のイデオロギーを外国に広める一方、中国進出を目指す海外の映画やドラマの制作にも影響を与え、検閲を行っている。

中国政府は2006年から、文化発展戦略を打ち出して、映画テレビドラマなど文化・宣伝類作品の制作・輸出を強化している。もっとも有効なプロパガンダとして認識されているからだ。

中国商務部の2017年の発表によれば、中国の文化作品のこれまでの輸出総額は900億米ドル(約10兆円)に達し、そのうち映画テレビドラマは4億米ドル(約450億円)超を占めた。同年、中国共産党の英字機関紙・中国日報(China Daily)は、中国が1600以上の映画・ドラマ作品を、英語、フランス語、ロシア語、アラビア語など36の言語に翻訳し、約100カ国で放送してきたと報じた。

文化類作品の輸出を担うのは、主に次の当局機関だ。

中国国際電視総公司(CITVC)

外国のテレビ局やチャンネルと提携関係を結び、中国のテレビドラマを売り込む。

■中国廣播電影電視節目交易中心(CHNPEC)

外国での中国の映画テレビドラマのマーケティングとプロモーションを担う。

■中国国際映画テレビドラマ番組展示会(CIFTPE)

毎年恒例、今年は16回目となる。映画テレビドラマの輸出成果と国際協力の現状をアピールする展示会。

■影視文化進出口企業協作體 (FTIEA)

中国共産党機関紙・人民日報によれば、FTIEAの役割は、「社会主義の核心的価値を反映する」映画テレビドラマの制作を主導し、「映画テレビドラマの輸出入の長期計画を立てること」。

■絲路電視国際合作共同體 (BRMC)

公式ホームページによれば、BRMCは五大陸各国のメディアが共同で立ち上げた組織。中国の報道・出版・ラジオ・テレビ局を統括する中央機関の副局長・童剛(ドウ ゴウ)氏は、2016年の設立セレモニーに出席した内外のメディアに「『一帯一路』の逸話を広めるナレーターになる」よう訓令した。

海外に広められた中国の文化作品

一般的な映画テレビドラマに加えて、『紅海行動(オペレーション:レッド・シー)』や『戦狼(ウルフ・オブ・ウォー)』のような「愛国主義」映画が海外に輸出された。

中国が輸出したSF映画『流転の地球(The Wandering Earth)』のテーマは、人類が絶滅の危機に直面したとき、アメリカ人は姿を消したが中国人は熾烈な戦いを展開し、全人類を救った、である。

映画テレビドラマのほか、中国当局はビデオゲームを通じて文化的影響力を広めようとしている。 近年、中国企業は外国のゲーム制作会社の買収に力を入れている。

中国のハイテク大手「テンセント(騰訊)」は2012年に米国のエピックゲームズ(Epic Games)の40%の株式、2015年に米国のライアットゲームズ(Riot Games)の100%の株式、2016年にフィンランドのスーパーセル(Supercell)社の84.3%の株式、2018年にニュージーランドのグラインディングギアゲーム(Grinding Gear Games)の80%の株式を取得した。

中国政府はゲーム市場を情報発信の強力なツールとみなしている。

中共のイデオロギーに背く芸術公演を阻止

中国大使館はここ10年間、デンマーク王立劇場に圧力をかけ、米神韻芸術団に同劇場を使わせないようにしてきた。中国共産党に破壊された中国伝統文化の復興を掲げる同芸術団は毎年、世界各地で巡回公演を行っており、中国政府に敵視されている。

2018年、ロンドンのロイヤルコート劇場はチベット関連の公演を断った。中国政府からの圧力というより、イギリス文化協会のアドバイスを受けて、中国でのビジネス活動がマイナスな影響を受けないよう、自己検閲したとみられる。

中国新疆ウイグル自治区をテーマとする写真集『Dust, André Frère Éditions, 2021』の制作者で写真家のパトリック・ワッカー氏は、中国政府の検閲は至るところにまで及んでいることを実感したという。 当初、コダック社は同氏に、自社の公式インスタグラムに同写真集をリリースするよう依頼してきた。キャプション付きの写真は、中国政府によるウイグル族への迫害の実態を反映した。

掲載してからまもなく、コダックは写真をすべて取り下げた。「ワッカー氏の見解はコダックの見解と一致するものではなく、コダックは承認していない」と説明し、「写真が誤解または被害を招いた場合、コダックは陳謝する」と続いた。

ワッカー氏は「コダックは中国政府の圧力を受けたと思う」と話した。

様々な手法で、外国の映画関係者をコントロール

中国進出を目指す海外の文化類作品について、中国政府は政権にとって不都合な内容のカットを命じる。

米非政府組織(NGO)のペン・アメリカは2020年8月、「中国市場への参入を目指す多くのアメリカ映画会社は、言論の自由の面で、葛藤の末、妥協することを選んだ」という内容の報告書を発表した。同報告書によると、米映画制作会社は、場合によって中国当局の検閲官を直接、撮影現場に招くこともある。

近年、ハリウッド映画産業への中国の投資は大幅に増加している。世界興行収入ベスト100の映画のうち、1997~2013年までの17年間は12本に、2014~18年までの5年間は41本に投資した。

むろん、中国政府は投資を受ける映画会社に対して強い発言力を持つ。中国政府は「ブラックリストへの登録」をちらつかせ、外国の映画関係者に圧力をかけた。

1997年からこの兆候がみられた。同年、ハリウッドでは、チベットの精神的指導者ダライ・ラマの青年時代を描く映画『クンドゥン』、中国政府のチベット侵攻を描く『セブン・イヤーズ・イン・チベット』、米国人弁護士が中国で殺人の冤罪をかけられた『レッド・コーナー』が制作された。

言うまでもなく、2本の映画は中国での公開を許可されなかった。消息筋によると、中国当局は映画監督や俳優らに対して、ブラックリストの登録と5年間中国での活動の禁止を通達した。

『クンドゥン』のプロデューサーのマイケル・アイズナー氏は、1998年10月に北京で当時の朱鎔基・総理と面会した際、映画の制作について謝罪した。

映画業界は徐々に中国政府の要求を受け入れるようになった。

俳優のブラッド・ピットは、『セブン・イヤーズ・イン・チベット』の出演により、2014年まで中国への再入国が許可されなかった。一方、同映画のジャン=ジャック・アノー監督は2009年にフランスと中国の共同制作映画の撮影に参加することになった。

2009年、同監督は中国のSNS「微博(Weibo)」に投稿した中国語記事で、同映画による中国へのマイナスの影響について、「非常に残念に思う」と述べ、「チベットの独立を支持したことはない」と宣言した。

中国政府の許しを得たアノー監督はその後、中国企業と映画『ウルフ・トーテム』(2015年公開)を共同制作したほか、中国映画業界と提携協議を結んだ。

(翻訳編集・叶子)