2017年8月24日、コネティカット・オープンの7日目、ポーランドのアグニエシュカ・ラドワンスカ選手との試合に臨む中国の彭帥(ペン・シュアイ)選手(Maddie Meyer/Getty Images)

中国テニス選手の性被害騒動から見る「道徳的に破綻した」北京五輪

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テニス女子ダブルスの元世界ランク1位の彭帥さん(35)が先月、中国の張高麗前副首相(75)に性的関係を強要されたと告発後に消息不明になった事件は、2月4日に開幕する2022北京冬季オリンピックに影を落としている。

人質を取り、レイプ犯を保護し、大量虐殺を行う中国共産党政権に、この大会を主催することを望むのは、道徳的に破綻した人間だけだろう。今こそ世界は、中国共産党と、その共産党が構築した恐ろしい政権の現実に立ち向かうべきである。正しい選択はただ一つ、「2022北京オリンピックを他国に移すこと」である。

何十年もの間、人々は中国共産党の重大な犯罪を見て見ぬふりをしてきた。それは、中国共産党が時とともに進化し、親切で善良な存在になると期待していたからである。1978年末、改革派の鄧小平が、毛沢東の後継者に選ばれた華国鋒から権力を奪い、「歴史的な転換」とも言われる中国共産党第11期三中全会を開催したとき、世界ははるかに優れた「新しい中国」を見たと思った。

確かに、鄧小平が経済の改革開放路線を開始したとき、対外政策を緩和し、全体主義的な社会統制を緩和または廃止した。それに伴い、楽観主義が蔓延していた。

しかし、今は状況が一変した。現政権下では、ただでさえ冷酷無比な中国共産党は、これまでの統治スタイルを変え、その邪悪な本性をさらに露わにした。

そこに登場したのが、テニス界のスーパースターであり、国民的人気者でもある彭帥さんだった。11月2日、彼女は中国版ツイッターと呼ばれる「微博(ウェイボー)」で、張高麗前副首相が妻の助けを借りて彼女に性的関係を強要したと告発した。

このような告発は、中国共産党の歴史上、前例がない。張高麗は、2012から17年まで、中国共産党の最高統治機関である中央政治局常務委員(定員7名)を務めた。

彭さんの投稿は30分以内に削除された。そして、2013年ウィンブルドンと2014年全仏オープンでダブルス優勝の実績を持つ彭さん自身も姿を消した。

11月17日、中国国営放送CCTVの国際放送部門である中国環球電視網(CGTN)は、彭さんが書いたとされる英語の電子メールの文面を公表した。多くの人に「不気味」と評されたこのメールで、彼女は「私は安全だ」と主張していた。また、このメールでは、女子プロテニス協会(WTA)が彼女に確認せずに関連情報を発信したことを非難し、性的暴行に関する彼女の以前の主張は虚偽であるとしている。このメールは、偽造されたものか、強要されて送られたものと考えられる。

11月19日、CGTNの編集者は彭帥さんの「最近の写真」3枚をツイッターに掲載し、これは彭さんの友人が中国のSNSに投稿したものだと主張した。これらの写真では、彭さんは猫やパンダぬいぐるみと一緒に遊び、楽しそうにしていた。

同日、中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報の胡錫進編集長は、彭さんが「近々、いくつかのイベントで公の場に姿を現す」とツイッターで発表した。

その翌日には、彼は彭さんがその月に撮影したとされる2つの動画を公開した。そのうちの一つは11月20日にレストランで撮影されたもの。しかし、テーブルでの会話はぎこちなく、撮影日を強調するために演出されたものと思われる。

もうひとつは、11月21日の朝に撮影されたと思われるもので、北京で行われたテニスの試合で笑顔を見せる彭さんの映像である。

ここ数ヶ月の間に突然消息不明になった有名人は彭さんだけではない。実業家のジャック・マー氏、市民ジャーナリストの張展氏と陳秋実氏、タレントのヴィッキー・チャオ氏らも姿を消している。このような事が頻繁に起こるようになった。

中国共産党政権は、過去30年間に比べてはるかに強圧的で陰湿になっており、毛沢東時代の統治スタイルに回帰しつつあることを示唆している。これは中国共産党の性質を反映したものである。

また、この政権は、彭さんの事件が示すように、競技のために中国を訪れるアスリートの安全を脅かすものでもある。

民主主義防衛財団(FDD)のシニアフェローであるクレオ・パスカル氏は米保守系シンクタンクGatestone Instituteに対し、「アスリートは、党にとって便利な道具でしかない。彼らが『個人』を追及するとお荷物になってしまう。党にとって危険だと思われれば、排除される」と語った。

パスカル氏が述べたように、彭さんは今や党にとって「危険」な存在となっている。そのため、中国当局は彭さんに告発の撤回を迫り、それに応じなければ彼女を滅ぼすだろう。中国共産党は、個人の尊厳や命を好き勝手に踏みにじっている。国営テレビが、明らかに拷問を受けたと思われる人々の「告白」を繰り返し放送するのもそのためである。

11月18日、大統領執務室で記者の質問に答えたジョー・バイデン米大統領は、北京オリンピックの外交的ボイコットを検討していると述べた。トム・コットン上院議員(共和党)は、「完全なボイコット」を呼びかけた。

冬季オリンピックボイコットし、北京から移転させる理由はたくさんある。これまでのところ、中国共産党によるウイグル族をはじめとする少数民族に対する虐殺政策や、その他の人道に対する罪に注目が集まっている。確かに、強かん、強制労働、拘留、拷問、殺人、強制臓器摘出(臓器狩り)などを行う政権が、世界的なスポーツイベントなどを組織することは許されるべきではない。

国際オリンピック委員会(IOC)は、これらの残虐行為はIOCの任務とは関係ないと主張している。しかし、アスリートを守るのは彼らの責任であるはずだ。彭さんに起こったことは、中国ではアスリートが安全ではないことを示している。IOCはアスリートの安全を第一に考えなければならない。

パスカル氏は、中国での開催はオリンピック精神に反すると指摘した。「オリンピックは、個人が最高の状態になろうと努力するもの。それは、国家の目標のために個人を従属させる共産党とは相反するものである」と語った。

北京オリンピックの開催日が間近に迫っているが、今こそ大会をボイコットし、中国から移動させるべきである。

執筆者プロフィール

ゴードン・G・チャン(Gordon G. Chang )は、Gatestone Instituteの著名な上級研究員であり、同研究所の諮問委員会のメンバーでもある。『The Coming Collapse of China (邦訳:やがて中国の崩壊がはじまる)』の著者である。

オリジナル記事:英文大紀元「China’s ‘Morally Bankrupt’ Olympics」より

(翻訳・王君宜)