「グレート・リセット」を加速させたパンデミック

2022/04/01
更新: 2022/04/01
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「あなたは何も所有せず、幸せになる」

国際的なロビー団体・世界経済フォーラム(WEF)のメッセージである。

同団体を設立したのは、ドイツ人エンジニアで経済学者のクラウス・シュワブ氏。毎年開かれるダボス会議では、各国の政界・財界・文化界のリーダーが一堂に会し、グローバルな問題について話し合う。近年、彼らが強く推進しているテーマは「グレート・リセット」だ。同団体のビデオでは、何も所有せず、すべてレンタルで済ませる男性が幸せそうに微笑んでいる。

「グレート・リセット」とは、世界経済を“リセット”するための、急進的な国際社会主義者の計画である。彼らが目指すのは、高度に中央集権化された、より厳格な規制を敷く全体主義システムだ。中国式の社会信用システムと言えば分かりやすいかもしれない。

シュワブ氏は、株主の利益を最優先する「株主資本主義」を否定し、「ステークホルダー資本主義」の必要性を訴える。「ステークホルダー資本主義」とは、大手企業がすべてのステークホルダー(社会のメンバー全員)の幸せと快適さを育み、社会に貢献すべきとする考え方だ。パンデミック後の“持続可能な”社会の再建を目指すには「ステークホルダー資本主義」が不可欠だ、というのが彼の持論だ。

つまり、彼は企業に対して、営利目的を放棄し、人々と地球の福祉を最優先せよ、と言っているのである。これは従来の概念を根本から覆すものだ。

国際社会はすでに、企業に対してESG(環境、社会、ガバナンス)という三つの指標を提示している。気候変動や人権問題などの「社会正義」を重視せず、ESGに配慮しなければ、劣等企業とみなされる基準である。ESGを満たさなければ、投資家からも忌避されてしまう仕組みだ。

新型コロナの流行は、「グレート・リセット」に有利な条件を与えた。多くの中小企業が倒産し、全体主義的な意思決定が促進した。経済を動かしていた競争意識が薄れ、「持続不可能な」福祉国家が出来上がった。長引くロックダウンによって、子供たちの教育にも多大な影響を与えた。

また、市民のデジタル管理が進み、顔認識やデータ収集が加速した。ワクチン接種の義務付けや、非現実的な「CO2排出ゼロ運動」と相まって、「グレート・リセット」は着々と進んでいる。パンデミックに対する権威主義的な政府の対応は、社会をディストピア(暗黒世界)に変えてしまった。

デジタル革命は広範囲に及んでいる。個人の考えや願望を含め、人々の生活のあらゆる側面に入り込む。「ステークホルダー資本主義」とは、企業と大きな政府が協力し、個人主義の精神を打ち砕くことを意味している。

「何も所有せず、幸せになる」というメッセージは、社会が自由意志を持つ個人で構成されているという現実を無視した、非常に無責任なものである。

「グレート・リセット」推進派は、パンデミックを好機と捉えている。もし彼らのアジェンダが成功すれば、21世紀の共産主義が到来するかもしれない。現在の経済システムは中央集権的な経済システムに取って代わられ、個人の権利は甚だしく損なわれるだろう。

執筆者プロフィール

ガブリエル・モーエンズ(Gabriël A. Moens)

クイーンズランド大学法学部名誉教授。オーストラリア、アジア、ヨーロッパ、米国で幅広く教鞭を執る。最近の著書に、「A Twisted Choice」、「The Coincidence」 がある。

オーガスト・ジンマーマン(Augusto Zimmermann)

オーストラリア・パースにあるシェリダン高等教育機関の教授兼法学部長。西オーストラリア(WA)州法律理論協会の会長も務める。「COVID-19 Restrictions & Mandatory Vaccination-A Rule-of-Law Perspective」 の共同執筆者。

オリジナル記事:「The ‘Great Reset’ Is a ‘Great Setback’」より

(翻訳編集・郭丹丹)