焦点:経済好調でも先行き不安台頭、民主に逆風の米中間選挙

2022/11/08
更新: 2022/11/09

[ワシントン 7日 ロイター] – 米国の家計資産は過去最高水準に近く、人々はレストランや旅行に出かけ、新車を購入している。労働市場も好調で、求職者にとっては売り手市場だ。それなのに国民は民主党のバイデン米大統領に不満を募らせている。世論調査によると、8日の中間選挙では共和党が議会を制する可能性がある。

国民をこの方向に駆り立てているのが経済を巡る悲観論であることが、各種調査からうかがえる。国民の認識と目下の経済状況との間に大きな食い違いが生じているのだ。大統領支持率は40%と低い。

国民を最も悩ませているのは高いインフレ率だが、経済全体を見ると、失業率は3.7%と低く、労働市場は過去数十年間で最も好調だ。年初には米経済がマイナス成長に転じると懸念されていたが、現時点では2022年の成長率は小幅ながらプラスを維持する見通しとなった。総合すると、どんなに悪く見積もっても「まだら模様」といったところだ。

ところが、モーニング・コンサルトが最近実施した調査では、回答者の56%が経済に「落第点」を付けた。また、ここ数週間の消費者信頼感指数は、2020年に新型コロナウイルスのパンデミックでロックダウン(都市封鎖)が実施された期間よりも低くなっている。

CNNの調査では、経済はリセッション(景気後退)に陥っていると感じるとの回答が過半数を優に超えた。実際には、どの基準に照らしてもほぼ、リセッションには入っていない。

民主党は不満を感じている。民主党政権はこれまで大規模なインフラ・地方産業投資から学生ローン返済一部免除まで、人々を経済的に助ける目玉政策を実現させてきたはずだからだ。

先週、バイデン大統領は「米国民が経済の恩恵を実感し始めている」と強調した。

しかし、多くの人々はインフレによって賃金の伸びが相殺されており、金利は上昇し、株価と住宅価格は下落し、多くのエコノミストの見立てでは米経済は来年、リセッションに入る見通しだ。つまり将来に対する人々の不安には根拠がある。

<インフレは誰のせいか>

共和党側は経済を中間選挙の最大の争点に据え、バイデン政権が大型財政出動によってインフレをあおり、エネルギー料金や食品価格の高騰に苦しむ国民を見殺しにしたと攻撃している。

だが、足元で年率8%を超えるインフレの原因がどこにあるのかについては、ほとんど議論されていない。コロナ禍に対応した財政支援策によって国民の懐に入った資金が今なお需要を押し上げているのは事実だが、大方のエコノミストの見立てでは、供給面のショックという外的要因が最近のインフレ高騰の主因だ。

だが、食品やガソリンなどの値上がりに直面して政治家を批判する有権者にとって、インフレの原因など大した問題ではないのかもしれない。

経済の主要部分は、歴史的に見ても堅調だ。

今年3月以来の失業率の平均値は3.6%と、トランプ前政権下で迎えた2018年の中間選挙前よりも低いばかりか、1966年の中間選挙以来、最も良好だ。最近まで、低賃金労働者の賃金はインフレ率よりも速いペースで上昇しており、求人件数が求職者数をはるかに上回っている。

<住宅ローン金利が上昇>

中小企業の業界団体・アライナブルが会員企業を対象に最近実施した調査では、半数以上が最大の懸念材料として、借り入れコストの上昇を挙げた。この背景には、米連邦準備理事会(FRB)による急激な利上げがある。

また、最近のロイター/イプソス調査では、インフレに対応して貯蓄率を下げる、休暇をキャンセルする、安いブランドに切り替えるなど行動を変化させたか、との質問に対し、80%が「どれにも該当しない」と答えた。

しかし、民主党、共和党いずれの支持者でも、回答者の3分の1は金利が上昇したため「住宅、オフィス、その他の購入」を先送りしたと答えた。30年物住宅ローン金利は最近、20年ぶりに平均7%に上昇。これは、特に初めて住宅を購入する若い世代を直撃する。

<赤信号の点灯>

政治的に重要なのは、人々が将来に対して大きな不確実性を感じていることかもしれない。家計資産が増加しているにもかかわらず、消費者信頼感が低下している背景には、この不確実性がありそうだ。

パンデミック開始以来の期間、つまりトランプ前政権の最終年からバイデン政権の2年間にわたり、家計資産は32兆ドル、約30%増えたことがFRBのデータで分かる。特に資産水準が下から50%の層では、2倍以上に増えている。

だが、直近の1年間で増加は止まり、中間選挙を迎える現在は楽観論がほとんど姿を消している。

ロイター/イプソスの調査によると、民主党支持者で70%、共和党支持者で77%が、1年前に比べて金銭状況は良くも悪くもなっていないと答えた。

モーニング・コンサルトの首席エコノミスト、ジョン・リーア氏は、経済の実態と、経済に対する人々の姿勢のギャップは「非常に大きい」が、経済データと実態との間にも大きな開きがあると指摘。「雇用は強く伸びているし、国内総生産(GDP)も伸びている。しかし、すべてに赤信号がともっている」と語った。

(Howard Schneider記者)

Reuters
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