深刻化する中国の地方財政 公務員まで賃金カット「政権崩壊につながる可能性も」

2023/03/03
更新: 2023/03/02

悪化の一途をたどる中国経済。民間企業のみならず、国有企業、ひいては政府部門までもが深刻な財政難に陥っていることは疑いない。

最近では、地方政府の財政が逼迫したため、官公庁が電気代などの公共料金を滞納したり、一部地方の郵便局や税務局職員など公務員の給料が払えないため、庁舎前で「職員が抗議する」などの異常事態が起きている。

中国時事評論家の唐浩氏は「これらの現象は、中国共産党政権そのものを危うくする」と指摘する。 

省公安庁に「電気料金の督促状」

米国に拠点をおく新唐人テレビ(NTD)の、3月1日付の報道番組「中国新聞快報」は、省公安庁による公共料金滞納や地方郵便局職員による集団抗議などについて報じた。

2月27日、広西省の省都である南寧市の電力供給局から、同省の公安庁宛てに滞納している電気料金の「催促状」が送られてきた。

それによると、2月24日時点での滞納金と違約金が合わせて48万元(約951万円)に上るという。直ちに支払わなければ、通知した当日である「27日から電力供給を停止する」という、まさに最後通告だった。

送電会社である広西電網の顧客サービス担当者からも、同庁の電気料金滞納は事実であることの確認がとれている。

省の公安庁たる機関の公共料金滞納が明るみになり、ネットで注目を集めたためか、同庁は直ちに滞納金を納めた。滞納した理由について同庁からのコメントはないが、今までに経験したことのない「重大な財政難」の他に考えられないのではないか。

郵便局でも「給料不払い、賃金カット」

同じころ、黒竜江省ハルビン市にある郵便局前でも、同局の職員と思われるグループによる抗議事件が起きた。

先月28日にネット上に流出した動画の中には、中国郵政集団ハルビン支店前で、多くの人たちが横断幕などを掲げて抗議する姿があった。

抗議者たちは、大声をあげて「中国郵政、給料不払い、悪質な賃金カット、それは天理が許さない!」などと叫んだ。
 

ついに税務局まで「火の車」か

さらに、ツイッターに投稿された動画の中には、江蘇省鎮江市税務局の職員が白い紙を掲げて、同局による賃金不払いに抗議する様子が映されている。

税務局の前で、抗議グループが掲げる横断幕には「鎮江市税務局は職員の賃金を払わない」「鎮江市税務局の葉華局長は職務怠慢だ」などと書かれている。

これには、抗議の光景を見慣れているネット民も「まさか税務局職員の給料まで不払いか」と衝撃を受けた。

あるネット民は「テラ銭(本来の意味は、地元のヤクザが自分の縄張りから取り上げる金銭)をとる部門まで、すっからかんか?」と揶揄した。

路線バスも、あやうく運行停止に

先月23日、河南省商丘市で、路線バスなど市内の公共交通を担う河南省商丘市公共交通有限公司が「バスの運行停止」を宣言する騒ぎがあった。

この日の朝、同公司は「深刻な経営難のため、3月1日から市内の路線バスなど公共交通の運行を全線で停止する」と発表した。

その理由について、同公司から出された声明は「パンデミックによる影響」「国家新エネルギー補助金政策調整の影響」「補助金不足」などを挙げている。

さらに、具体的な事情として「深刻な経営難のため、職員の給料や社会保障費を支払えない。車両のメンテナンスや車両保険などに充てる資金も底を尽いた」という。

この「あまりに率直過ぎる公告」にSNSなどは騒然となった。すると同公司は、その日のうちに「やっぱり運行停止はしない」として、朝公表した決定を撤回した。撤回声明の中で、同公司は「今朝の公告が社会にもたらした良くない影響」について謝罪もしている。

撤回の理由が何であれ「バスの運行を全線停止する」としたほどの苦境は、同公司の本音とみて良いだろう。 

中国共産党にとって「悪夢」の到来

賃金不払いや減額を起因として中国各地で頻発している抗議事件について、中国時事評論家の唐浩氏は大紀元の取材に対し「これらの現象は、中国共産党政権そのものを危うくする」として、以下のように述べた。

「これらの事件は、中国各地の地方政府の財政状況が非常に悪いことを示している。特に経済規模の大きくない中小の都市では、そもそも財政収入は非常に限られている。しかし、過去3年間に及んだゼロコロナ政策下での全民PCR検査や都市封鎖(ロックダウン)などの封鎖措置、安定維持費用など巨額の費用は全て地方政府が負担しなければならなかった。地方政府には、それ以前から積み上げてきた巨額の債務もある。古い借金に新たな支出が加わった結果、地方政府の財政はますます苦しくなっている」

「今後も地方政府では公務員給与の減額や不払いが、ますます増えていくだろう。政府は、いろいろな口実をつけて、職員に対して過去に支払ったボーナスを返上するよう求めるかもしれない。あるいは、職員に自発的寄付を要求するなど、資産徴用の動きに出る可能性もある」

「政府には財源の余裕がないため、国民が現在もらっている各種の社会福祉手当や補助金は、すぐにでも減額されるか支給停止されるだろう。その結果、中国各地で、先日の『白髪運動』のような抗議活動が増えるが、それでも政府は本当にお金がないので国民の要求に応えることはできない」

そうなると、警察を出動させて無理やり市民の抗議を押さえることになるため「官民の衝突は激化していくのが目に見えている」と唐氏は分析する。

警察が抗議者の列に加わる「Xデー」

唐氏はさらに、警察などの安定維持を行う部門にまで減給や賃金不払いの波が及んだとき、中国共産党政権は危ういことも指摘した。

「警察や公安など、これまで社会の安定維持を行う側だったグループまで減給されたり給料がストップすれば、大変なことになる。彼らは、直接政府と対峙するまではいかなくても、抗議する市民の鎮圧には加担しなくなるだろう」

「さらには、警察までもが抗議する側の列に加わりかねない。警察部門が政府に反旗を翻す事態となれば、中国共産党の体制はいよいよ危うくなる」

「今日の中国国民は、中共の党員ですら、本気で共産党や共産主義を信じている人はいない。ほとんどの人が信仰しているのはお金である」

「彼らは、ただこの体制を利用して権力や利益を手に入れようとしているだけだ。今の体制がそのような恩恵をもたらすことができなくなれば、彼らは体制擁護をやめるか、ひいては体制を攻撃し、倒す側に回りかねない」

そう指摘する唐氏は、中国共産党にとって、今年は中国夢(チャイナ・ドリーム)の復興ではなく「悪夢が到来する年になるかもしれない」と述べた。

 

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
関連特集: 中国