ファウチ博士、ワクチンと呼吸器系ウイルスについて全てを打ち明ける

2023/03/03
更新: 2023/03/03

論説

全身作用の非複製型ワクチンで、粘膜呼吸器系ウイルスを制御する試みは、これまでのところほとんど成功していない ───アンソニー・ファウチ博士、新型コロナウイルスワクチンついて(2023)

最近、米医学専門誌セル・ホスト・アンド・マイクローブは、『コロナウイルス、インフルエンザウイルス、その他の呼吸器系ウイルスに対する次世代ワクチンを再考する』と題した論文を発表した。著者と内容を考慮する限り、この論文は新型コロナ時代において見過ごせないものだが、反響は驚くほど小さかった。

まず、著者に関してだが、この論文の最終著者は、米国国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)所長を退任したばかりのアンソニー・ファウチ博士だ。彼は普段、マスコミの注目を惹きつける存在だ。また、内容に関して言えば、この論文は、これまで権威ある人々が国民に対して働いた欺瞞の証拠を提供している。彼らは、新型コロナワクチンに関して、自分たちが知っていた真実に反することを、国民にたくさん伝えていたのだ。

このたび、ファウチ博士がウイルスと免疫学の基礎知識について打ち明けたことに、賛辞を贈りたい。もし、ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン誌やランセット誌などの一流医学雑誌が、3年前にこのような認識を持った編集者を雇っていたら、社会や人権を疎かにすることなく、公衆衛生に貢献できたかもしれない。権威ある人々がこれらの真実を説明し、それに基づいて政策を行っていれば、事態は変わっていただろう。

医学界全体についても同様だ。死、貧困、不平等の多くを回避できたかもしれないし、医療機関への信頼も維持されたかもしれない。

ファウチ博士が著者に名を連ねるこの論文は、コロナウイルスワクチン、および他の変異の速い呼吸器系ウイルスに対するワクチン開発の可能性について論じている。論文を読むにあたっては、三つのステップを踏むことをおすすめしたい。まず、著者によって提供されたエビデンスを検討し、次に、そのエビデンスに反しているにもかかわらず根強く残っているドグマを気に留めつつ、最後に、新型コロナの公衆衛生対応に関して論文が言わんとすることを検討してみてほしい。

本稿はその抜粋を紹介するものであり、読者には原著の閲覧を推奨する。

ワクチンの効果は低く、自然免疫が常に優位だった

この論文では、インフルエンザやコロナウイルス(「COVID-19」感染症のウイルス「SARS-CoV-2」など)のような呼吸器系ウイルスに対するワクチンは、他のワクチンに期待されるレベルの有効性を達成する可能性は極めて低いことが明らかにされている。CDCのデータによれば、現在米国で生後6ヶ月以上の全年齢層で接種が勧められているインフルエンザワクチンの有効性は、2005年以降、14〜60%(17年遡れば10%に下がり、平均ワクチン有効性は40%をわずかに下回る)であると著者らは指摘している。ファウチ博士は次のように述べている。

「現在承認されている最高のインフルエンザワクチンでも、ワクチンで予防可能な他のほとんどの疾患に対する認可には不十分であろう」

まさしく、次の指摘の通りだ。

「これまで、主に粘膜呼吸器系ウイルスがワクチンで効果的に制御されたことがないというのは、驚くべきことではない」

著者らは、その有効性の欠如について明確に説明している。

「この2つの全く異なるウイルス(SARS-CoV-2とその変異種)のワクチンには共通の特徴がある。それは、集団免疫を免れて進化する変種株に対する予防効果が、不完全かつ短期間であることだ。」

変異率の高さだけではなく、感染様式にも問題があるという。

「非全身性呼吸器系ウイルスは、ウイルス血症を引き起こすことなく、主に局所粘膜組織で複製され、全身免疫や有効な獲得免疫応答にはあまり遭遇しない。獲得免疫は成熟するのに少なくとも5〜7日かかり、通常はウイルスが複製され、他者に伝染するピークを過ぎてからだ」

この誠実な評価にもあるように、新型コロナワクチンが感染や伝染を有意に減少させる見込みは、全くなかったのだ。

また、血液中に多く分布する抗体(IgGやIgM)は、新型コロナのような感染症を制御する上で限られた役割しか果たさない。その一方、ワクチン接種では刺激されない粘膜免疫のIgA抗体が、上気道ではるかに大きな役割を果たす。ほとんどの感染症医や免疫学者が、新型コロナの大流行を通じてそういうことを知っていたと、論文は指摘している。

「呼吸器系ウイルス感染症に対する病原体特異的な反応において粘膜面に分泌されるIgA抗体(sIgA)の重要性は、インフルエンザウイルス、RSウイルス、そして最近ではSARS-CoV-2について、長い間評価されてきた」

ここで重要なのは、著者らが指摘するように、全身性ワクチンは粘膜でのIgAの産生を誘発しないことである。

ただ、全身性ワクチンは、感染歴のない人であれば、ある一定の期間内において、重度の新型コロナに対して有効性をもたらすという。観察に基づいて次のように説明されている。

「IgAが上気道においてより効果を発揮する一方、IgGは肺においてより有効だ」

SARS-CoV-2の初期の変異種は、肺の病変が特徴的であった。自然免疫の上にワクチンを接種しても、臨床的な効果はほとんどないことを、米国疾病予防管理センター(CDC)が示している一方で、ワクチン接種の初期に起こりうる免疫抑制と、その後に薬効減退するまでの間に、ワクチンが新型コロナの死亡率(全死因死亡とは異なる)を下げるという合理的な免疫学的根拠はある。

ただ、米国国立衛生研究所(NIH)が認めたように、T細胞もまたコロナウイルスに対する主要な防御手段であり、感染歴がない多くの人には、SARS-CoV-2に対する交差免疫が見られる。ファウチ博士らは、インフルエンザ感染後に免疫に関してT細胞の相関が見られるが、インフルエンザワクチン接種後には見られないという興味深い観察を行っていた。このことは、SARS-CoV-2の初期の変異種に対しても、自然感染と比較してワクチンの効果が低いことを説明できる、更なるからくりを暗示している。

つまり、コロナウイルスとインフルエンザワクチンは、どちらも効果が小さいのだ。

「この2つの全く異なるウイルス(SARS-CoV-2とその変異種)のワクチンには共通の特徴がある。それは、集団免疫を免れて進化する変種株に対する予防効果が、不完全かつ短期間であることだ」

実に明確かつ簡潔に表現したものだ。

ドグマとの闘い

この論文の真価は、新型コロナをめぐるドグマ(権威づけられた独断的な説)とエビデンスを対比させたところにある。著者らはまず、世界では通常、毎年500万人もの人々が呼吸器系ウイルスで死亡していることを指摘している。それを、新型コロナによって680万人が亡くなったという世界保健機関による3年間にわたる記録と比較したことは、有益な文脈を提供した(ただし、新型コロナによる死亡と、新型コロナやロックダウンの影響を含むめたパンデミックの総死亡を区別することが重要だ)。しかし、そうした認識は、論文中にある次のような記述とは食い違っている。

「SARS-CoV-2は、米国で100万人以上を死亡させた」

もちろんこれは誤りだ。これはPCR陽性者の死亡者数に基づいた数字であり、現在、CNNの新型コロナアナリストは、これが誇張であると認めている。しかし、さらに奇妙なのは、著者らが次のように主張していることだ。

「SARS-CoV-2ワクチンの迅速な開発と配備は、無数の命を救い、早期の部分的流行制御を達成するのに役立った」

ワクチンが多くの命を救ったと彼らが考えているというのは、驚くべきことだ。ファウチ博士は、新型コロナの最初の年にウイルスが免疫を持たない人々を襲ったときの死者数は、考えうるものだったとした。しかし、集団予防接種が行われた2年目も、死亡率は同程度で、重症化したのは比較的少数だったが、予防接種プログラムによって優先された高齢者に集中していたのは明らかだった。したがって、ワクチンによって回避された死亡数は比較的少なかったと考えるのが妥当だろう。このようなインパクトのなさは、前章の最後に示した著者らの見込みと完全に一致している。

IgG抗体の反応が、ウイルス血症と伝染のピークを過ぎるまであまり有効でないことを指摘してきた著者が、「早期の部分的流行制御」の達成を主張していることは、奇妙でしかない。ただ、ドグマに自分の評判がかかっている時に、それをエビデンスと戦わせるのは実に難しいことだ。葛藤があるのも理解できる。

こうした現実が、ワクチン接種プログラムに与えた影響を考慮すれば、論文中の以下のような曖昧な認識も受け止めることができる。

「(ワクチン接種が実施されたにもかかわらず)…相当数の死亡事故が依然として発生している」

つまり、著者らが認識している通りだ。

「全身作用の非複製型ワクチンで、粘膜呼吸器系ウイルスを制御する試みは、これまでのところほとんど成功していない」

本論文の重要性

この論文の著者らは、新型コロナワクチンの効果が期待はずれであった理由を説明するための、新しい仮説を立てようとはしない。単にこれまでの知見を再確認しているに過ぎない。ワクチンの高い予防効果が持続し、ワクチンによって「パンデミックから抜け出す道」が開かれるという予言には、実現の見込みすらなかった。それらの主張は、計画の遵守を促すための策略であり、特定の企業や公衆衛生関係者を劇的に豊かにするためのものだった。この問題についてそれなりの知識を持つ人々は、彼らのレトリックが正しくないことを知っていたが、それを口にする人は比較的少なかった。それ以外の人々は、恐らく騙されたのであろう。

今回、ファウチ博士とその共著者らは、過去2年間の欺瞞を強調したことで、「新型コロナのシナリオ」に大きく貢献することとなった。この欺瞞によって促進された「全体の利益」の主張、すなわちグローバル・パンデミックに対抗するために集団予防接種を遵守することが国民の利益になるという主張は、ファウチ博士らが示す証拠によって反証された。集団予防接種が上手くいくことは全く予期されておらず、少数の影響力のある人々に大きな経済的成功をもたらしただけだった。

実際は、自然免疫の方がワクチンよりも常に効果的だった。そういった主張に反対すべく、「ジョン・スノー・メモランダム」のような論考が一流医学雑誌ランセットに発表されたこともあったが、それはかえって専門家の理解と常識に反していたのだ。自然免疫の相対的優位性を指摘する人への誹謗中傷は、ただの誹謗中傷だ。ファウチ博士が「ウイルスから身を守るには自然免疫よりもワクチンの方がはるかに有効だ」と公言したとき、彼はそれがおよそ真実ではないことを知った上で発言していた。

新しい部類の医薬品の注射を促進するために、公衆衛生が国民を欺いた。ワクチンに長期的な安全性データはなかった。それに、ウイルスは大多数の人にはほとんど害がないことが分かっていた。しかも、ほとんどの人々は、より有効な自然免疫をすでに有していた。

この欺瞞の長期的な結論はまだ出ていないが、公衆衛生と医学の実践に対する信頼は失墜するだろう。これは正当であるし、良いことですらある。このシナリオを推進した人々に騙されたことを各人が確認し、どのように反応するか。それは個々の選択だ。

最も愚かな反応は、欺瞞などなかったのだと居直り、騙されていないふりを続けることだろう。

この記事で述べられている見解は、著者の意見であり、必ずしもエポックタイムスの見解を反映するものではありません。

公衆衛生医、ブラウンストーン研究所の上級研究員、グローバルヘルスにおけるバイオテクノロジー・コンサルタント。世界保健機関(WHO)の医務官および科学者、開発途上国に適した感染症の新たな診断技術の開発と普及を目的とした活動を行うスイスの非営利組織「FIND」のマラリアおよび発熱性疾患担当プログラム責任者、米ワシントン州ベルビューのIntellectual Ventures Global Good Fundのグローバルヘルス技術担当ディレクターを経て、現在に至る。
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