地球規模の環境災害に突入は本当だったのか?検証してみた

2023/04/09
更新: 2023/04/10

「世界は地球規模の環境災害に突入しており、人類に残された時間は数年しかない」。近年の気候関連の報告書や報道にはこうした鬼気迫る言葉が並ぶ。

これまでも、いわゆる「環境専門家」が何十年にもわたり未来に起こるべき壊滅について語ってきた。なかには「食糧危機に陥り飢餓があと10年で起きる」「人口を削減するために飲料水に殺菌剤を添加すべき」といったものまであった。それらの予言の多くは、気候の激変がすぐそこまで来ているように思わせておきながら、時期が迫るとたちまち外れていった。

環境保護主義者のビョルン・ロンボルグ氏は、著書「False Alarm: How Climate Change Panic Costs Us Trillions, Hurts the Poor, and Fails to Fix the Planet(偽りの警告:気候変動パニックがいかにして私たちに何兆ドルも要求し、貧しい人々を傷つけ、地球の修復に失敗してきたか)」の中で、そうした失敗した予測事例をまとめている。

約90年前にまで遡る豊富な例からは、これまでも「気候危機」というテーマが人々の強い関心を集めてきたことが伺える。

1939年12月

「グリーンランド東部の氷河のすべてが急速に溶けている」とハリスバーグ・サンデー・クーリエ紙は報じた。

報道は、スウェーデンの地質学者であるハンス・アールマン教授が北極探検後に地理学会に提出した、「ノルウェーの氷河のように、この氷河も壊滅的な崩壊の可能性に直面していると言っても過言ではない」とする報告書を引用した。

また、1923年にもニューヨーク・タイムズ紙が「1918年以降、実際、北極の氷には後退がみられる。昨年の冬は、スピッツベルゲンの北海岸でも海は凍らなかった」と報じたが、今冬でもスピッツベルゲン島の海岸には海氷が低濃度ながら到達している。

1947年5月

「カリフォルニア大学地球物理学研究所の著名なスウェーデン人地球物理学者であるハンス・アールマン博士が、北極圏における気候現象によって、海面の驚異的な上昇とその結果として、広範囲にわたる浸水の可能性を取り上げた」とウエスト・オーストラリアン紙が報じた。

「北極圏で起きている変化は非常に深刻であるため、世界規模で状況を調査するための国際機関が必要であり迅速な設立が望まれる」とアールマン氏は述べた。

オーストラリアの管轄する南極地域、2008年撮影  (Photo by Torsten Blackwood – Pool/Getty Images)

1952年2月

豪州のケアンズ・ポストが運営するニュースワイヤーは、「ノルウェーとアラスカの氷河面積が、50年前の半分の大きさになっている」とする北極圏の専門家であるウィリアム・カールソン博士の発言を取り上げた。

1955年3月

ニューヨークのロチェスター・デモクラット・アンド・クロニクル紙は、「北極圏の氷は現在600万平方マイルといわれているが、かつては1200万平方マイルあった」とする、北極探検家のドナルド・マクミラン提督の発言を取り上げた。

1958年10月

「一部の科学者たちは、極地の氷塊が半世紀前よりも40%薄く、面積は12%少なくなったと言っている。今の子供たちが生きているうちに、北極海が開き、航行できるようになるだろう」とニューヨーク・タイムズが報じた。

当時の指摘によれば、北極の氷床の厚みは約7フィートだったということだが、現在でも氷の厚みは、約7フィートであり変わりない。北極圏の氷塊の融解に対する懸念は、1960年代まではそれほど差し迫ったものではないことが明らかになっている。

1967年11月

米紙ソルトレイク・トリビューンは、「1975年までに飢饉が発生する」というポール・エーリック氏氏の予測を引用して、「世界が長期にわたる飢饉を避けるには、すでに手遅れだ。」と報じた。

スタンフォード大学の生物学者で『人口爆弾』の著者であるポール・エーリック氏は、米国の人口増加を抑えるために、食料と飲料水に殺菌剤を添加することまで提案した。

続いて、70年代に入ると氷河期到来説が流行する。

1970年4月

「科学者の中には21世紀までに新たな氷河期の到来を予測する人がおり、また、汚染の専門家であるジェームズ・ロッジ氏は、大気汚染が太陽光を遮断し、新世紀になり30数年以内に新しい氷河期が起きる可能性がある」と、ボストン・グローブ紙は報じた。

1970年10月

カリフォルニアのレッドランズ・デイリー・ファクト紙は、「米国が1974年までに水を配給し、1980年までには食料を配給するようになるとエーリック氏が予測した」と報じた。

1971年7月

ワシントン・ポストは、米国航空宇宙局(NASA)とコロンビア大学の大気科学者S・I・ラソール氏が「50年か60年後に、世界は悲惨な新氷河期に突入する可能性がある」と語ったと報じた。

1972年1月

スウェーデンのダーゲンス・ニューヘーテル紙は、「国連環境長官のモーリス・ストロングが、大惨事を止めるためには10年かかる」と語ったと報じた。

1972年12月

ブラウン大学の地質学者2人がニクソン大統領に手紙を書き、次のように報告した。「米国と欧州のトップ研究者42人が参加した会議の中で、現代人類がこれまでに経験したことのない桁違いの気候災害が起き、それは非常に現実的で直ぐに起きるかもしれないという議論が行われた」。また、「現在の寒冷化は、このままのペースで続けば、約1世紀で氷河を形成する温度に達するのに十分な速さだ」と彼らは語った。

1974年1月

ガーディアン紙は「宇宙衛星からの観測によれば、新しい氷河期の急速な到来が見て取れる」と報じた。

1974年6月

タイム紙に「新たな氷河期か?」といった見出しが踊った。記事は「アイスランド近海の流氷の厚みが予想以上に増し、アルマジロのような暖かさを好む動物が中西部から南下するなど、至る所に寒冷化の兆候が見られる」と書いている。

1978年1月

「気候に関する8つの指標を検討した国際的な専門家チームは、過去30年間続いてきた寒冷化傾向は、少なくとも北半球で終わる気配を感じられないと結論付けた」と、ニューヨーク・タイムズ紙は報じた。一年後、新聞は反対のことを報告した。

80年代に近づくと地球温暖化に基づく危機の言説が一角を占めるようになる。

1979年2月

「現在幼児期にある人々が生きている間に、北極の氷が融解する可能性があり、それは気候に対して迅速で壊滅的な変化を引き起こすだろう」と、ニューヨーク・タイムズ紙は報じた。

1982年5月

ニューヨークタイムズ紙は、当時の国連環境計画事務局長であるモスタファ・トルバ氏の発言を引用して、「もし、世界が進路を変えなければ、2000年までに核のホロコーストと同じくらいの環境大災害に直面し、修復できないほどの荒廃をもたらすだろう」と報じた。

1988年9月

フランス通信社は「小さな島国モルディブは海面上昇によって、30年以内に海水に覆われてしまう恐れがある。さらに、飲料水の供給が1992年までに止まってしまえば、モルディブと国民の終焉がより早くなるだろう」と報じた。

モルディブのヴェラナ国際空港で記念撮影する観光客(AFP via Getty Images)

現在、モルディブは水没の危機に瀕してはいない。実際、新型コロナウイルス のパンデミックによって、観光業が壊滅的な打撃を受けたにもかかわらず、モルディブは新しい開発事業を誘致している。先週、ホテリアー・モルディブが「アラブ首長国の開発会社が1億4800万ドルの契約を締結した」と報じたばかりだ。この事業は、モルディブの南マーレ環礁の水上とビーチフロントで豪華なヴィラ120棟を建設する予定だという。

1989年6月

カリフォルニアのサンノゼ・マーキュリー・ニュースは、「国連の環境担当高官であるノエル・ブラウン氏は、2000年までに地球温暖化が抑制されなければ、海面上昇によって国全体が地球上から消滅する可能性があると述べている」と報じた。

そのブラウン氏は、「沿岸洪水や農作物の不作はエコ難民を生み出し、政治的混乱を招くだろう」と、国連環境計画のニューヨーク事務所長を務めていた時に語っている。

2000年3月

英インディペンデント紙は、「降雪は今や過去のものとなった」と書いている。「子供たちは雪がどんなものかを知ることはできない」と、英国イーストアングリア大学の気候研究ユニットの上級研究科学者であるデビッド・バイナー氏は語り、「数年以内に、冬の降雪は非常にまれでエキサイティングなイベントになる」と指摘した。

イングランド南部で雪はまれだが、それでもほぼ毎年英国のどこかでは冬に雪が降っている。

2001年12月

米国議会から委託され2001年の地球温暖化レポート(共著)を書いた著者の一人であるジョージ・ハート氏が、「気候変動によって、20年以内にニューイングランドのサトウカエデ産業がなくなる可能性がある」と米アルバカーキ・ジャーナルが報じている。

今でもニューイングランドでは、サトウカエデから作られるメープルシロップがたくさん生産されている。

2004年2月

英ガーディアン紙は、「国防総省の秘密報告書は、気候変動が核戦争につながり、ヨーロッパの主要都市が海に沈み、英国の気候が2020年までにシベリア気候になると予測していた」と報じた。

2006年1月

AP通信は、地球温暖化の脅威を訴えてきたアル・ゴア氏の言葉を引用して、「今後10年以内に、温室効果ガスを削減するための抜本的な対策が講じられない限り、世界は後戻りできない転換点に到達する」と報じている。

2007年11月

当時、国連の「政府間パネル」の責任者だったラジェンドラ・パチャウリ氏が「今年は気候変動との戦いにおける決定的な瞬間だったと述べ、当局者は2012年までにいかなる行動も起こさなければ手遅れになる」と述べたと、ニューヨーク・タイムズ紙が報じた。

2007年11月

カナダのキャンウェスト・ニュース・サービスは、極地研究者のルイス・フォルティエ氏を引用して、「2010年か2015年の夏、北極海には氷がなくなる可能性がある。これは100万年以上も起こっていなかったことだ」と報じた。

2007年12月

「5年以内に夏の北極海から海氷がなくなる?」 と題した記事をAP通信が掲載している。

記事では、NASAの気候科学者であるジェイ・ズウォーリー氏が「このままでは、2012年には夏の終わりの北極海からほとんど氷がなくなってしまうかもしれない 」と述べている。

2007年12月

「2013年までに夏の北極圏から氷がなくなる」とBBCは報じた。

さらに、カリフォルニア州モントレーにある米海軍大学院の研究者は、「2013年夏に氷が減少するという予測は、2005年と2007年の2度の極小期を考慮していない」とBBCに語り、「その事実を考えると、2013年の予測は控えめすぎる」と主張した。

2008年3月

中国官製メディアの新華社通信によれば、ノルウェー国際極年事務局の責任者であるオラフ・オルハイム氏が、「ノルウェーの今年の平均気温が2007年と同じなら、北極圏にある氷冠はすべて溶けてしまうだろう。現在の状況から判断するとその可能性はかなり高い」と述べたという。

2007年から2008年にかけて、ノルウェーにおける平均気温の上昇はわずかなもので、氷を溶かすことはなかった。

2008年4月

「2008年、北極に氷がなくなる可能性がある」と、ニュー・サイエンティスト誌が報じた。

記事によると、「現時点で、今年は北極に薄い氷しか張っていない初めての年だ。北極の氷は今年中に無くなるのかもしれない」と、米国立雪氷データセンター所長のマーク・セレーズ氏は述べていた。

2008年6月

ナショナル・ジオグラフィック・ニュースによれば、マニトバ大学のデビッド・バーバー氏が、「歴史上はじめて、今年は北極から氷が無くなる可能性があると予測している」と述べたという。

同月AP通信は、NASAのゴダード宇宙科学研究所の所長であるジェームズ・ハンセン氏が「5年から10年以内に夏の北極圏には氷がなくなる」と語ったと報じた。

2009年12月

USAトゥディ紙は、「早ければ2014年の夏には、北極海からほぼ氷がなくなる可能性がある」とアル・ゴア氏は語ったと報じている。

2012年9月

「今は雪を楽しんでくれ。2020年までにはなくなるだろうから」と豪紙オーストラリアンは報じた。依然として、豪州では雪が降っている。実際、昨年の降雪量は平均を大幅に上回っていた。

2013年7月

「2年間氷のない北極に、メタンガスによる大災難が到来する:科学者」と題する記事を英ガーディアン紙が報じた。

2014年2月

ニューヨーク・タイムズの論説の見出しには「雪の終わり?」として、米国西部の積雪の減少について語っていた。しかし過去10年間、この地域の降雪量が大幅に減少することはなかった。

2017年7月

BBCによると、トランプ政権下で米国が国連のパリ協定から離脱した後、物理学者のスティーブン・ホーキングは次のように語ったという。

「地球温暖化は後戻りのできない転換点にまで近づいている。トランプ氏の行動は地球を瀬戸際まで押しやるもので、これから地球は250℃の温度と硫酸の雨が降る金星のようになる可能性がある」

2017年8月

「気候変動により積雪地が後退して豪州のスキー産業は下り坂になった」と、シドニー・モーニング・ヘラルド紙は報じた。

近年、オーストラリアではいつものように雪が降っていることを、気象データは示している。

2018年1月

フォーブス誌によれば、「2022年以降、北極圏に氷が永続的に残る可能性はゼロだ」と、ハーバード大学の大気化学教授であるジェームズ・アンダーソン氏は語った。

2019年3月22日、オスロの国会議事堂前に集まった小学生、高校生、大学生たちが、気候変動を食い止めるために十分なことをしていないと思う政治家に反対する集会を開催(TOM HANSEN/AFP/Getty Images)

2020年7月

オーストラリア・ジオグラフィック誌は、「雪の終わり ── 温暖化が豪州の壮大な高山風景を台無しにしてしまうのだろうか?」という見出しを飾った。

オーストラリアでは、2021年も2022年も特に雪不足はおきなかった。

2021年12月

「雪のないカリフォルニアが想像より早く来るかもしれない」とロサンゼルス・タイムズ紙が報じた。

数週間後、「12月は同州で最も雪の多い月となった」とカリフォルニア大学バークレー校セントラル・シェラ・スノーラボが発表した。

2022年8月

米国西部で雪が消えてなくなってしまうという予測に言及して、ブルームバーグは、「雪がなくなってしまえば、米国人7600万人の生活が一変してしまう恐れがある」と報じた。

数か月後、シエラネバダ山脈は、記録上2番目に雪の多い冬を迎えることになった。

2023年3月

ワシントン・ポストは、「2007年以降、北極の氷は薄氷化し後戻りできなくなった」と報じた。

実際のところ、過去10年間氷はほとんど薄氷化していない。

1979年以降5~7年おきに、夏場の最低気温は記録的な低さを記録していたが、2012年以降、その更新記録はないとデータは示している。

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