物議をかもすmRNA技術、今度は家畜が標的に

2023/05/04
更新: 2023/05/04

昨今議論を呼んでいるmRNA技術や遺伝子治療に関して、米国では法制化の動きが見られる。

ノースダコタ、テネシー、アリゾナ、アイダホ、ミズーリなど少なくとも5つの州で、mRNA技術や遺伝子治療を家畜に使用することを制限し、製品パッケージで消費者への完全な情報開示を要求する法案が提出された。

ミズーリ州で提出された法案HB1169は、遺伝子治療を受けた家畜肉が含まれる可能性のある製品すべてに表示を義務づけるとしている。その筆頭提案者である共和党のホリー・ジョーンズ議員が、エポックタイムズの取材に応じた。

「世界中のあらゆるものがラベル付けされている。遺伝子組み換え作物であるか、グラスフェッド(牧草のみを与えられて育った牛)であるか、抗生物質が使用されていないか、ナッツを扱う工場で製造されたものかなど、ラベルで表示されている」 。

「新型コロナワクチンのように、安全性も効果も証明されていないものは表示すべきだ。CDCでさえそのことを公表している」 。

同法案にはmRNAが明記されていないものの、全ての「潜在的な遺伝子治療製品」を禁止項目に含んでおり、遺伝子治療として作用しうる製品、または使用者の遺伝物質や遺伝的変化に影響し、それらを改変、導入する可能性がある製品の表示を義務付けるとしている。

2022年3月1日、オーストラリア・ニューサウスウェールズ州リズモアの牛。(SAEED KHAN/AFP via Getty Images)

「使用者」には、製品に触れた人や、製品を使用した人に触れた人も含まれるという。

この法案HB1169が成立すれば、ミズーリ州の畜産農家や生産者は、インフォームドコンセントのルールのもと、牛や豚などの家畜に使用されるmRNA技術を、製品パッケージに全面表示することが義務付けられる。

家畜に対するmRNAプログラム

「もしそのようなものが使用され始めているなら、教えてもらう必要があるが、現状ほとんどすべての州でそうなっていない」とジョーンズ氏は指摘している。

彼女は、米国内の家畜に対するmRNAプログラムが進んでいることを、複数の農業関係者を通じて確認したと述べたほか、オーストラリアでも進行中であるとした。

オーストラリアのクイーンズランド州政府の声明によると、肉牛のランピースキン病のためのmRNA関連ワクチンの開発に150万ドルの資金が投じられているという。

声明の中で、マーク・ファーナー農林水産大臣・農山漁村担当大臣は「現在、海外で使用されている生ワクチンはオーストラリアでは使用できないため、新しいmRNAワクチンはゲームチェンジャーとなるだろう」と述べている。

2023年4月19日、豪クイーンズランド州政府が牛用のmRNAワクチンの創薬を発表 (Screenshot by The Epoch Times)
 

アイオワ州立大学の獣医微生物学・予防医学科では、牛のRSウイルスに対するmRNAベースのワクチンの開発が進められている。

牛RSウイルス病は、治療しないと肺炎につながる可能性がある。

連邦政府は、RSウイルスに対する免疫保護を提供する「新規mRNAシステム」の開発を目標とする助成プログラムを打ち出している。

米国農務省の研究・教育・経済情報システム(REEIS)のプログラム概要には、「我々は、継続的に投与されるmRNA注射によって、長持ちする強固な細胞および抗体免疫が得られると仮説を立てている」とある。

また、米国のアニマルヘルス研究所(AHI)の報告では、獣医学で使用されるmRNAワクチンは、普及に少なくとも5年から10年かかるとされている。AHIのウェブサイト上の説明は以下の通りだ。

「寄生虫を駆除するためのmRNA技術によって、より効果がある新たなワクチンが確実に生産できるようになるだろう。従来の手法で開発された寄生虫ワクチンは、企業にとって確実な製造が困難な場合が多い」。

「その結果、動物用医薬品として利用できる寄生虫ワクチンはほんの一握りだ。しかし、mRNAを用いれば、従来の手法における困難を回避できるため、より確実な製造が可能になりうる」。

mRNA技術が全て有害なわけではない

ジョーンズ氏は今回の法案について、あくまで全てのmRNA技術を有害とみなすものではないと述べている。

「彼らは様々な医学研究や臨床試験でそれを用いている。そして私たちは、自分たちにとって最良のものかどうか分からないものをカバーするために、良い仕事をしている」。

「私の関心は、消費者のためのインフォームドコンセントにある。そのために徹底的に戦うつもりだ」。

「もし牧畜業者や養豚業者が家畜へのワクチン投与を選択した場合、その肉を購入するか、100%オーガニックの肉を購入するかについて、消費者が気づけるように教えて欲しい」。

ロビイストたちは、ジョーンズ氏が消費者に恐怖を与え、最終損益に影響を及ぼしているとして、彼女を非難したという。

「腹立たしい限りだ。私は、自分の体に入れるものを選ぶ権利は誰もが持っているという高い道徳を堅持している」。

テキサス州は懸念を表明

4月3日、テキサス州農業委員会のシド・ミラー長官は、当局が食品や家畜のmRNA技術に関連するリスクについて「事実に基づく分析」に取り組んでいることを明らかにした。

「私自身、この問題を非常に真剣に受け止めている。政治的な問題はない。ただ出資者 、科学者、農業関係者、その他の専門家からの幅広い意見に基づき、十分に推論され、研究された提案があっただけだ」。

「私たちは州農務省でこの問題に注目しており、皆さんの懸念を共有するつもりだ」とミラー氏は述べている。

テキサス州農務省のコミュニケーション・ディレクターであるレブ・ウェイン氏は、同州では多くの人々がmRNA技術に関して懸念を表明していると述べている。省は「安全で豊かな食料供給」を目標にしているという。

「我々の仕事は初期段階にあり、ミラー長官は業界と一般市民がmRNAに関する事実を扱っていることを確認したいと思っている」とウェイン氏はエポックタイムズに語った。

ジョーンズ氏は、ミズーリ州の法律は、食品やその他製品に含まれるmRNAの影響について、知る権利のある企業や人々のためのものだと述べている。

「私たちは、インフォームド・コンセントと食品供給の透明性を確保するだけでなく、自分たちの知らないところで何かが起こった場合に断固として立ち上がる方法について確認することを望んでいる」とジョーンズ氏は述べた。

「この動きは野火のように広がっている。当然のことだ」。

エポックタイムズ記者。アリゾナを拠点に米国時事を担当。