処理水めぐる中国の世論調査、選択肢が「実質的に一択」…国内でも非難相次ぐ

2023/08/28
更新: 2023/08/30

中国国営の新華社通信は24日、東京電力福島第1原発の処理水放出をめぐり中国のSNS上で世論調査を実施した。「強くけん責する」「全人類に災いをもたらす」「歴史的汚点」の3択しか設けられておらず、処理水放出を非難する内容の選択肢しか選べない。

これに対し、ネットユーザーから「これは中国式の世論調査であり、3択は1択に等しい」などの調査の公平性に疑義を呈する声が相次いだ。

東京電力は24日、政府の方針に基づき福島第1原発の処理水の放出を開始したと発表した。放出前に東京電力が実施した検査では放出する処理水に含まれるトリチウム濃度は安全基準となる1リットル当たり1500ベクレル未満を大きく下回っていることが確認されている。

放出の完了には30年程度の長期間が見込まれている。

同日、新華社は処理水放出に合わせて世論調査を実施。中国のミニブログ投稿サービス「微博(ウェイボ)」に「日本からの核汚染水放出に強く反対する」とのタグをつけて投稿し、ネットユーザーからの回答を求めた。

選択肢は3つあり、「断固反対、強くけん責する」「将来の世代と全人類を苦しめる」「20230824を忘れるな、日本は歴史に残る恥ずべき柱に釘付けにされるだろう!」のような処理水放出を非難する意味の選択肢しか用意されていなかった。

この投稿には通常のコメント数の約10倍、1000件近くのコメントが寄せられた。コメントは調査の公平性に疑問を呈するような内容がほとんどだ。

「この選択肢はまだ投票が始まってもいないのに、すでに結果が決まっている」

「ハハハ、まさに中国式投票だ」

「これらの選択肢はすべて同じ意味ではないか」

そのほか、「私は日本の排出量を理解している」「誰も理解していない日本の処理水の海洋放出」とのコメントがあった。

現在、新華社による世論調査の投稿は削除されている。

新華社以外にも、中国国営メディアは処理水海洋放出について「汚染水」という表現を繰り返し、批判的な報道を連日続けている。

経済発展を「一党支配の正当性」の根拠として主張してきた中国共産党。処理水放出への批判は、国内経済の冷え込みによる国民の不満をそらしたい狙いがあるとの指摘も出ている。

香港で発行されている日刊紙「明報」などによると、中国のSNSで処理水に関する「心配する必要はない」との投稿が削除された。

投稿には、中国の原発で当局が定めているトリチウム放出の上限は福島原発が放出する8倍であると書かれていた。中国政府は、処理水放出に反対する当局の意向に反する投稿内容に神経をとがらせているとみられる。

処理水放出をめぐっては、中国政府は24日に日本産水産物の全面禁輸に踏み切ったほか、日本国内の無関係な個人や団体が相次ぎ、中国から嫌がらせの電話を受けるなど日中間の緊張が高まっている。

在中国日本大使館は24日以降、中国にいる日本人に対し、不測の事態が発生する可能性が排除できないとして、「不必要に日本語を大きな声で話さない」などと注意を呼びかけている。

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