不動産市場の危機は避けられない 中国経済に激震が訪れるか

2023/10/28
更新: 2023/10/28

中国の不動産大手は多額の負債を抱えている。そして多くの不動産企業がデフォルトに陥り、国民の不安が高まっている。米スタンフォード大学の許成鋼客員研究員は、中国共産党は不動産企業を救いたいが、不動産市場を救うことはできないと指摘している。

中国最大の不動産開発会社、碧桂園(カントリー・ガーデン社)は1540万ドル(約23億円)の利払いを猶予期間内に履行できず、初のデフォルトと判断された。碧桂園は先週、ブルームバーグに対し、オフショア債の支払いを全て期日通りに履行できる見込みはないと回答した。

碧桂園は、世界で最も多くの債務を抱えるデベロッパーの一つであり、総債務は1兆4300万元(約20兆円)、負債比率は82.3%。2、3線級の都市で3千以上の住宅プロジェクトを持っており、約7万名の従業員を有する。

同じく大きな規模を誇る恒大集団は、30日に清算の公聴会を開催する予定だ。恒大は2021年にデフォルトに陥って、負債総額は2兆4千億元(約49兆円)となった。

他に、華夏幸福基業投資開発、融創中国、陽光城集団など、数十社のデベロッパーがデフォルトに陥った。

許成鋼氏は、これは長期間にわたり蓄積されてきた問題で、現在それが爆発している。実際には予想内のことだと語った。

不動産市場危機 庶民の生活に衝撃

多くの中国人にとって、住宅は一生の貯蓄だ。

許成鋼教授は不動産は中国の全ての都市に直接的な影響を与えているため、不動産市場で大きな問題が発生すると、即座に中国の都市の住民に影響を及ぼすことになると指摘した。

「なぜなら、一部の人が買ったのは建築中の分譲物件で、支払いは済んだが、竣工を待たなければならない。こうした人々が影響を最も受けるだろう。竣工済み物件を購入した場合、最大の問題は、抵当ローンで住宅を購入したかどうかということだ」

多くの人が、住宅価格が高い時に抵当ローンで家を購入しているが、現在の住宅価格は大幅に下落している。これはその物件の持ち主が既に損していることを意味している。許成鋼教授は、実際の状況は、はるかに深刻である可能性があると指摘。

「なぜなら、資産を担保にして銀行からお金を借りているからだ。現在は住宅価格が下落しているため、銀行は自己資本の不足を避ける、破産を避けるため、借り手に追加資金を支払うよう要求することができる。この状況下で、借り手が追加資金の支払いができない場合、銀行はその不動産を競売にかけることができる。これはローンを借りた人にとっては大きな打撃だろう」

中国は不動産市場を救うのだろうかという事について、許教授は、可能性はあるが、中国共産党(中共)は危機の発生の形を変えることはできても、危機を食い止めることはできないと説明した。

「企業は救えるが、市場は救えない。企業を救うとは、急激に市場に一連の反応を引き起こさせないようにすることだ。不動産市場を救うのなら、一方では、企業に資金を注入するか、その債務を免除する。もう一方では、市場をある程度凍結させる。市場の凍結はつまり、住宅価格を下落させないこと。実際に、中共はこれをしてきた。そうすると、そんな高値では誰も買おうとしないので、取引はゼロになる。不動産が売れなくなると、デベロッパーは借金を返済することすらできなくなる。 そのため、デベロッパーは次々と危なくなる。だから私は、中共は不動産市場を救済することはできないと言うのだ」

不動産問題で経済に激震が走る 20年前に逆戻りするかも

不動産とその関連産業は、中国のGDPの約25%を占めている。不動産市場の低迷は、中国経済にさらなる困難をもたらす。

格付け機関S&Pは、中国の不動産危機が拡大し、2023年の住宅販売が2022年に比べてさらに20%〜25%減少する場合、中国のGDP成長率は2.9%にまで減少すると推測している。

「様々なデータから見れば、昨年の中国経済はマイナス成長に違いない」「今年、中国経済は5%成長ではなく、マイナス成長とは言わないまでも、総じてゼロ成長前後なのだ」と許教授は明言した。

常春
程静
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