【分析】李克強は暗殺されたのか (1)

2023/10/28
更新: 2023/11/14

中共前国務院総理(日本で首相に当たる)李克強氏が突然の死を遂げ、多くの注目を集めている。分析すると、李克強氏はかつて北京大学の優秀な学生であり、10年間国務院総理としての役職にあったが、彼のリーダーシップは「情けないものだった」との声もある。

彼には良心的な面も見受けられたが、共産党の体制内での彼の立場は常に微妙であり、何度も抑圧されることもあった。李克強氏のような経歴を持つ者たちは、中共とどのように共存してきたのか。この「李克強の悲劇」はまだ完結していない。

 「李克強は暗殺されたのか」

中共中央テレビは10月27日の朝、李克強氏が心臓病発作により、27日の午前0時10分に上海で死亡したと報じた。享年68歳だった。 

李克強氏の死因については、インターネット上で多くの疑問が持たれている。台湾の政治大学東アジア研究所の名誉教授である丁樹范氏は、李克強氏が公然と派閥を作ることもなく、習近平氏との対立も示さなかったため、習近平氏が彼に対して手を下す理由は考えにくいとの見解を示した。 

一方、李克強氏の北京大学の同窓で、現在、米国在住の中国の政治学者である王軍濤氏は李克強自殺説について「何らかの形で彼が追い詰められた可能性は否定できない」「自分の部下たちが次々と逮捕されていたため、彼はいつ自分が巻き込まれるか心配していたのかもしれない」と述べている。

医師であり、作家の蔡依橙氏はFacebookで心臓病による突然の死には心筋梗塞や心の乱れが考えられる原因としてあげた。

しかしここ10年で心臓のCT検査が広まってきたため、必要な治療を事前に受けることが可能である。中共の指導層も、世界と同様の予防策や治療器具を利用していることは疑いようがない。

蔡氏は「これらの状況が高位の国家指導者の突然の死の原因とは考えにくい」との見解を示した。

一方で蔡氏は、習近平氏の助言者や提案者たちが次々と姿を消しているとも指摘した。中共の最高指導者が二番手の人物を排除するのは、伝統的な行動で、過去には、毛沢東が次期国家主席とされていた林彪を排除した例や、周恩来の膀胱がんの治療を毛沢東が許さなかった事例などがあると、彼は述べている。

 「李克強逝去」が話題の中心に

中国中央テレビの報道の後、中国のSNS上で「李克強逝去」という言葉が急速に注目され、トピックスの首位となった。2時間の間に、微博では10億9千万視聴数と45万件のコメントを記録し、350を超えるメディアがこの報道を取り上げた。

しかし中国中央テレビの公式アカウントを除いて、多数のメディアのSNSのコメント欄は制限されており、内容の確認が不可能になっている。 

丁樹範氏は次のように述べている。「習近平の経済政策は十分ではないとの見解が広がっている。李克強が10年間役職にあったにも関わらず、彼の経済に対するビジョンは習近平とは異なっていて、実質的な権限は限定的だった。習近平は経済のコントロールを一手に握っていたと言える」

多くの追悼記事において、中共が「貧困削減」の達成を強調する中、彼は「6億人が月収1千元にすぎない」と公然と指摘したことや「改革開放は途絶えることはなく、長江や黄河が逆流することは考えられない」「これは国の命運や民族の将来に関わる重要な問題である」など李克強氏の著名な発言が紹介されている。

市場経済に関しては、彼は「矢を放つと、もう戻ることはできない」との立場を取っていた。政府の権限縮小やシンプルな政策については「政府の権限の削減の『苦痛』と、企業や市民の利益の『喜び』とを取引すべきである」と位置づけた。

そして今年3月の首相を退任する際のスピーチでは、「人々は行動し、天はそれを監視している。天には目がある」と表現した。

彼の北京大学時代の同窓生である呉国光氏は、ボイス・オブ・アメリカに寄稿し「公正に評価すれば、中国共産党の高位の李克強も、まだその良心を喪失していないと言えるでしょう」とコメントした。

 (続き)

程静
酪亜
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