米国各地の都市や町が、電力を大量に消費するデータセンターへの対応に苦慮する中、中国共産党(中共)政権はこの問題を利用して分断を煽っている。
米国の小さな町の住民たちは、雨後の筍のように増える電力消費の大きいAIデータセンターへの対応に追われているが、中共勢力はその混乱に乗じ、米国社会の分断を拡大させようとしている。
中共政権は、水利用や電力需要、環境コストを巡る緊張関係を利用し、影響工作と偽情報という常套手段で米国社会の分裂拡大を図っている。
米国の町の住民たちが、地域社会でのデータセンター建設に強い不満を抱いていることは無視できない実態だとされる。ワシントンに拠点を置くデータセンター監視団体データセンター・ウォッチ(Data Center Watch、DCW)によると、住民の反対運動により、2026年第1四半期だけで少なくとも75件、総額約1300億ドル相当のデータセンター計画が中止または延期に追い込まれた。
データセンターへの反対をすべて中共政府に帰することには慎重であるべきだとアナリストらは指摘するが、その一方で、中共政権が背後で干渉しているリスクは依然として深刻であり、拡大し続けているとも述べている。
ワシントンに拠点を置く民主主義防衛財団(FDD)のクレオ・パスカル上級研究員は、電力問題であれ水資源問題であれ、いずれも「間違いなく現実の問題」だと大紀元に語った。同氏は「同時に、こうした問題は中共勢力が喜んで悪化させたがっている現実の問題でもある。中共の狙いはさらなる分断を生むことにあり、解決策を求めているのではなく、米国を機能不全に陥れることが目的だ」と述べた。

「データセンター・ブーム」
中共政権による干渉工作には、米国のAI技術を利用して論点を作り出す手法が含まれる。
中国の運営者らは仮想プライベートネットワーク(VPN)を用い、中国本土からはアクセスできないチャットボットChatGPTに侵入した。そして英語の風刺画やコメントを生成するよう指示し、AIセンターの建設が一般の米国家庭の電気料金を押し上げているとほのめかす内容を作らせた。
サンフランシスコに拠点を置くOpenAIが6月に公表した報告書によると、こうした風刺画の一つには、米国人の三人家族と、スーツ姿で葉巻をくわえ現金の詰まった袋を持つ男が描かれ、一家の主が男に向かって「これは不公平だ」と怒鳴る場面が描かれていた。その後、こうした内容が偽アカウントとみられるものによってソーシャルメディア上で大量に拡散された。
OpenAIはこの一連の工作を「データセンター便乗運動(Data Center Bandwagon campaign)」と呼んでいる。同社は報告書の中で、中国の影響力工作関係者がAIインフラを巡る様々な主張を「テスト」していると指摘し、AIインフラは米国が技術的優位を維持し、経済成長を続け、より広範な民主的AIエコシステムを構築する基盤であるとした。

AI分野での優位性は中共政権にとって極めて重要な意味を持つ。今年3月に採択された中共の「第15次五か年計画」は、AIを経済のあらゆる分野に組み込むことを強調している。7月17日、中共の習近平は演説の中で新たな世界的AI秩序の構想を示し、その中で中国が発展途上国のAI技術訓練・協力を主導するとした。
米海兵隊退役大佐で、中共政権のグレーゾーン戦術に警鐘を鳴らす著書『中国が攻撃するとき:米国への警告(When China Attacks: A Warning to America、2023年)』の著者であるグラント・ニューシャム氏は、中共当局はAIを一つの「戦い」と捉えていると述べた。

ニューシャム氏は大紀元の取材に対し「彼らは勝ちたい。我々を打ち負かしたいのだ」と語った。同氏によれば、中共が米国を打ち負かすとは、米国を中国に後れを取らせ、理想的には米国が中共に依存する状態にすることを意味するという。
ニューシャム氏はグリーンエネルギーの事例を挙げて説明した。過去数十年にわたるクリーンエネルギーへの世界的な転換の結果、中共への深刻な依存が生じており、中国は世界の太陽光パネルおよび電池の約80%、風力タービン設備の70%を生産している。電気自動車用電池に使われる複数の主要原料の精錬工程も、主に中国で行われている。
ニューシャム氏は、中共政府は現在、AI分野でも同様の状況を作り出そうとしていると指摘した。

現時点では、中共の関与が疑われる工作員らは偽のソーシャルメディアアカウントを使い、依然として試行錯誤の段階にあるとみられるが、アナリストやOpenAIは、その手口が日増しに巧妙化していると警告している。
カナダ連邦法執行機関の元情報顧問スコット・マクレガー氏は、中共政府は即効性を求めていないと指摘する。同氏は大紀元に「これは段階的なプロセスだ」と説明した。
米国のサイバーセキュリティ専門家で、米空軍の元最高ソフトウェア責任者を務めたニコラス・シェイラン氏は、規模がものを言うとし、AIによって中国は大規模な影響力工作を展開できるようになっていると述べた。
シェイラン氏は「声を上げることができ、かつ十分な音量があれば、世論を掌握し、自分たちの考えを人々の頭の中に本当に植え付けることができる。声が大きく、繰り返しの回数が多いほど、それを信じる人は増えていく」と大紀元に説明している。
分断工作
中共はAI分野での主導権を争うため様々な手法を用いており、水面下でのネット工作と並行して、より公然とした宣伝攻勢も展開している。
ここ数か月、中共の官製メディアは中国語・英語で数十本の記事を発表し、米国がAI分野で直面する様々な障害を揶揄する一方、中国のAI分野での成功を誇示してきた。こうした記事の多くは、偽のソーシャルメディアアカウントの主張と軌を一にしている。
こうしたパターンは米政府の注目を集めているとみられる。ダグ・バーガム内務長官は5月の政策イベントで、データセンターに反対する一部の急進的な活動が「外国からの闇資金」によって動かされていると示唆し、「これらの活動は自然発生的なものでも、地元発のものでもない」と述べた。
複数の共和党議員は、上海在住の米国人実業家ネヴィル・ロイ・シンガム氏が、中共政府の公式見解を繰り返し発信するネットワークに資金を提供していると指摘している。シンガム氏は現在、資金の不正移転の疑いで連邦大陪審の捜査を受けている。
同氏と関係のある団体は、以前にも米国内での抗議活動を扇動したとして議会の審査対象となったことがある。これらの団体の一部は中共政府の戦略的利益を公然と擁護し、中共の官製メディア上で米国を非難し、中国の社会主義を称揚する講座を組織してきた。
連邦下院歳入委員会のジェイソン・スミス委員長(共和党・ミズーリ州選出)は、こうした人物が反データセンター抗議活動の扇動に果たした役割に注目している。

連邦下院歳入委員会のジェイソン・スミス委員長(共和党・ミズーリ州選出)は6月に開かれた中共の影響力に関する議会公聴会で「中共はAIの未来を支配したいと考えている。彼らが米国人の正当な懸念を利用し、我々自身の裏庭で不和を生み出そうと画策していることは明らかだ。その目的はただ一つ、自分たちがこの技術的優位を手に入れることにある」と述べた。

スミス委員長は「資金の流れを追跡し、闇の資金源を徹底的に解明する」と表明した。7月下旬には、シンガム氏と関係のある非営利団体3団体に対し、同氏を通じて数千万ドルがこれらの団体に流れたとして召喚状を発行した。
一方、反対運動の一部からは、自分たちが重視しているのは政府の透明性の欠如だとの声も上がっている。ソルトレイクシティに拠点を置き、州内の大規模データセンター計画に反対してきたアライアンス・フォー・ア・ベター・ユタ(Alliance for a Better Utah)の広報担当エリザベス・ハッチングス氏は「住民は、今後数十年にわたり自分たちの生活に影響を及ぼす決定に発言権を持つことを望んでいる」と大紀元に語った。同団体は、自分たちの活動が外国勢力の干渉を受けているとの見方を否定している。
議員や専門家は、真に地域主導の反対運動と中共の影響力工作は別問題だとしている。米国防情報局(DIA)の元副長官代行デービッド・シェッド氏は「データセンターやAIに対する正当な懸念は存在するが、こうした議論と中共勢力による悪意ある影響工作は区別すべきだ」と大紀元に説明した。同氏は、米国人同士を分断させることは「中共政権自身の利益に完全に合致する」と述べた。
マクレガー氏もこれに同意し、中共政権はAI分野で米国に追いつこうとしており、あらゆる手段で米国の歩みを遅らせようとするだろうと述べた。記者はシンガム氏本人にコメントを求めたが、連絡は取れなかった。

「話の半分しか語らない」
開かれた社会の内部にある対立点を利用して分断を生み出すのは、中共政権が常用する手口である。
2021年、米国が反アジア系ヘイトクライムの問題に苦しんでいた際、中共政権はこれを自国内の人権問題への関心をそらす好機と捉えた。中共の外交官や官製メディアは米国の偽善を非難し、中共の統治モデルの優位性を誇示した。
東京の国際基督教大学で政治・国際関係学を教えるスティーブン・ナギ教授は「彼らは話の半分しか語らないか、あるいは真実がゆがむほど大幅に話を改変する。AIはこうした現象をさらに悪化させ、加速させるだけだ」と大紀元に語った。
台湾のソフトウェアエンジニアで台湾AIラボ(Taiwan AI Labs)創設者の杜奕瑾氏は、AI技術を用いて協調的な影響力工作を追跡している。同氏は、ほとんどの場合、こうした工作の目的は公衆の信頼を損ない、双方を極端な立場に追いやり、理性的で客観的な対話の余地をなくすことにあると述べた。同氏は大紀元に「民主主義が機能不全に陥ったとき、人々は『民主主義とは結局、混乱にすぎず、中国と何ら変わらない』と考えるかもしれない」と説明した。
AI分野において、中共政権はあらゆる手段を通じて渇望するAI優位性を獲得し、それを足がかりに米国への攻勢を強めている。技術で米国に及ばない分野では、米国の技術を窃取し、第三国を経由して半導体を密輸し、サプライチェーンへの依存関係を利用して米国のAIインフラ整備を妨げている。

米国家情報長官(DNI)室が2025年に公表した報告書は、これまでのところ米国にとって最も能力の高いAI分野での競争相手である中共政権が、世界で最も影響力のあるAI大国として米国に取って代わるべく「多面的な国家戦略」を実行していると指摘している。
一部の議員はこの点に懸念を示している。連邦下院外交委員会のブライアン・マスト委員長(共和党・フロリダ州選出)は、米国はAI分野で「間違いなく中共の影響に対処している」と述べた上で、「米国の地方レベルでは、我々はワシントンにコントロールされていない。各コミュニティが自分たちにとって何が最善かを自ら決めることができる。これが我々の最も基礎的な統治システムだ。しかし実際には、この分野でも我々は中共の影響を確かに受けている。計算能力が不足すれば、それは中共にとって有利になるからだ」と大紀元に語った。
スミス委員長と同様、ジム・バンクス上院議員(共和党・インディアナ州選出)もシンガム氏に対する大陪審の捜査を支持しており、中共政権は「そもそも米国の政治的議論に登場すべきではない」と述べた。

同議員は大紀元に「これらは重要な地方の政治議論であり、しばしば地方や州の法律・政策に関わるものだ。中国側がこうした議論に干渉すべきではない。だからこそ我々はこうした行為を厳しく取り締まり、その動機を十分に理解する必要がある」と語った。

台北の国立政治大学で中共の政治戦工作を長年にわたり研究してきたケリー・ガーシャネック教授は、中共の目論見が成功すれば、米国および他の民主主義国家にとって「存亡に関わる(existential)」脅威になると述べた。ガーシャネック教授は大紀元に対し、中共の統治者は「AIの兵器化において他のいかなる国よりもはるかに先んじている」と指摘し、AIを「膨大な世界規模のデータ収集エコシステム」と組み合わせれば、中共政権はその全体主義モデルを対外的に輸出し、「内部から我々を破壊する」ための究極の手段を手にすることになると述べた。
(TheEpochTimes記者Sean Tsengも本稿に貢献した)
原文:「In Race for AI Dominance, China Fans Disinformation in America」は英文大紀元に掲載された。

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