【プレミアム報道】パナマ新大統領、ダリエン地峡移民ルートの閉鎖を誓う

2024/05/14
更新: 2024/05/14

5月5日に行われたパナマ大統領選で、ホセ・ラウル・ムリノ・ロビラ(José Raúl Mulino Rovira)氏はサプライズ当選を果たしたが、これはバイデン政権に影響を与える可能性がある。ホセ・ムリノ氏は、米国南部国境に向かう移民に対するダリエンギャップの閉鎖を含む綱領を掲げている。

5月6日、コロンビアのラジオ番組とのインタビューで、次期大統領は、パナマに入国する移民を送還し、不法移民の主要ルートを閉鎖するという公約を再度述べた。

ムリノ氏は、「送還プロセスが始まれば、入国しようとする人々は考え直すだろう。それは、出身国に送還されることになるからだ」と述べた。ムリノ氏は、これが断固たる決定であると述べた。「その目的は、私たちがこのような(移民を)を支援するのではなく、それを止めるためのことを、皆に知らせることだ」と語った。

移民問題研究センターの国家安全保障上級研究員であるトッド・ベンスマン氏は、ムリノ氏のダリエン地峡閉鎖の公約が、ジョー・バイデン大統領にとって当惑する可能性があると主張した。バイデン大統領は国境開放を優先し、不法移民抑制を目的としたトランプ大統領の時の政策を廃止したからだ。

ベンスマン氏はエポックタイムズに対し、「ここで注目すべきは、バイデン政権がアメリカにとって良い政策、多くのアメリカ人が喜んでいる政策にどれほど反対しているかということだ」と語った。

アントニー・ブリンケン米国務長官は、ムリノ氏の勝利を祝福し、移民規制は両国の共通目標の一つであると述べた。

「戦略的パートナーシップを継続し、民主的な統治と包括的な経済繁栄という共通の目標を推進することを楽しみにしている」「ダリエン地域からの不法移民を抑制するための協力という共通の目標を達成するために努力を続けていく」とブリンケン氏は5月6日の声明で述べた。

スペインメディアの報道によれば、ムリノ氏は選挙期間中、ドナルド・トランプ前大統領がホワイトハウスに復帰する場合、ダリエン渓谷の壁建設用の「セメント」の援助が得られると冗談を言ったという。トランプ陣営はコメントを拒否し、まずムリノ氏の発言の全記録を見る必要があるとしている。

今回のパナマ大統領選で、ムリノ氏は 35%近い票を獲得し、最も近い競争相手に 9 ポイントの差をつけた。2位に続いた反汚職候補のリカルド・ロンバナ氏のほか、マルティン・トリホス元大統領、ロムロ・ルー元外相と対決した。ムリノ氏は7月1日に就任し、任期は5年となる。

2024年5月7日、パナマ・シティの大統領官邸で初の公式会談を終え、メディアに手を振るパナマのホセ・ラウル・ムリノ次期大統領(右)とラウレンティノ・コルティソ大統領。(Martin Bernetti/AFP via Getty Images)

現職のラウレンティーノ・コルティソ大統領は、ムリノ氏に電話で祝辞を述べるとともに、秩序ある政権移譲のために協力することを誓った。

ダリエン渓谷の惨事

昨年だけでも、50万人の移民が危険なジャングルの中を旅し、NGOや国連が運営するパナマの移民キャンプにたどり着いた。

パナマの前国境長官オリエル・オルテガ氏は今年2月、NGOや国連は大量移民を促進するのではなく、自国の移民を教育し助けるべきだとエポックタイムズに語った。

2021年10月5日、コロンビアのアカンディ近郊で、アメリカへ向かうダリエンに入る前にキャンプを張る移民たち(多くはハイチから)(John Moore/Getty Images)

2月、エポックタイムズはダリエン渓谷にある4つの移民キャンプをすべて訪れ、中国、ソマリア、ベネズエラ、エクアドル、コロンビアなどからの移民たちに話を聞いた。

ラハス・ブランカスのキャンプでは、移民たちは、NGOや国連機関によって提供された、米国への詳細な移民ルートを示す多数の大きな地図を見ることができる。

HIASの地図には、コロンビアからコスタリカへの移民ルートが示されており、バス停、気温、標高、「移民ブース」の場所などが記載されている。

HIASはもともとヘブライ移民援助協会として設立されたが、現在はすべての移民に援助を提供している。ポスターには、米国と欧州の国旗、国際連合児童基金(UNICEF)のロゴが目立つように表示されている。

英語に翻訳されたスペイン語の看板には、「米国政府と欧州連合(EU)の人道支援の共同出資に感謝します 」と書かれている。

左翼団体は、難民キャンプを設置し、ルート上の移民を支援することを人道的大義と見なしている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)などの団体は、パナマがこの「溝」を完全に埋めることができるのか懐疑的な見方を示し、移民がより危険な他のルートを探さざるを得なくなることを恐れている。

HRWのフアニータ・ゴベトゥス米州局長はAP通信の取材に対し、「ダリエン地峡を通る移民や亡命希望者は、どのような理由であれ、基本的な安全保障を受け、人権を尊重される権利がある」と述べた。

2024年2月17日、パナマのラハス・ブランカスで、ダリエンのギャップを渡った後、足の痛みに苦しむベネズエラ人移民。 (Bobby Sanchez for The Epoch Times)

元国境警備隊長官のロドニー・スコット氏は現在、テキサス公共政策財団で国境警備のシニアフェローを務めている。彼はトランプ政権末期から2021年のバイデン政権最初の8か月間、米国国境警備隊の長官を務めた。

彼はエポックタイムズに、バイデン政権や左派の人々は、移民が米国に渡航するのを支援するのは、思いやりがあることだと考えているかもしれないが、正反対であることが証明されたと語った。

移民が容易になるにつれ、何百万という人々が恐ろしい結果に直面している、と彼は言った。

スコット氏は、死、レイプ、殺人、人身売買、違法薬物などが、不法移民問題の暗部を構成していると述べた。ダリエン地峡の閉鎖は不法移民の阻止に大きな影響を与え、何千人もの命を救うことができると語った。

また、スコット氏は「パナマの新大統領が移民ルートを完全に遮断することはできなくても、彼の誓いによって移民を阻止することは可能だ」と述べ、「トランプ政権初期のように、言葉だけで国境を越えた不法活動は劇的に減少した 」と語った。「アメリカ国民は安全であることを望み、移民法が守られることを期待しているからだ」と付け加えた。

米国とメキシコの国境沿いに住むアメリカ人は、人種に関係なく、一般的に国境警備を支持しているという。スコット氏は、「これがパナマの人々にとって大きな問題であることは、米国と同様、驚くにあたらない 」と述べた。

強力な非政府組織

しかしベンスマン氏は、パナマのNGOが築き上げた膨大なインフラと、これらの組織に提供された数十億ドルものアメリカの税収を止めるのは難しいだろうと述べた。

「一部のNGOはこの危機を利用して大儲けしている。これらのNGOはパナマで政治的影響力を持っている」という。

パナマ滞在中、エポックタイムズはナレッジ・シティにあるいくつかの国連機関のドアをノックし、国連とHIRSの職員に、キャンプでの活動についてインタビューを試みたが、失敗に終わった。

国連の国際移住機関(IOM)の事務局長であるエイミー・ポープ氏は、ジョー・バイデン大統領の移住担当上級顧問、国土安全保障省のバラク・オバマ大統領の副顧問を歴任した。

2024年2月20日、パナマのダリエン地峡にあるサン・ビセンテ移民キャンプに到着した国連難民機関の職員たち(Bobby Sanchez for The Epoch Times)

今年初め、ポープ氏は移民援助資金を求めるアピールの中で、「適切に管理されれば、移民が世界の繁栄と進歩に大きく貢献できるという証拠は豊富にある 」と述べた。

ベンスマン氏は、パナマの大統領は、理論的には「移民を国から追い出し」、NGOが運営する移民キャンプを閉鎖することができると述べた。しかし、数十万人の移民を強制送還しようとすれば、そのコストは法外なものになり、米国の協力なしには事実上不可能だと述べた。

しかしベンスマン氏は、アメリカが現在NGOや国連に流している数十億ドルを、集団強制送還の資金に振り向けた方が良いと述べた。

国境危機について2冊の著書を持つベンスマン氏は、移民キャンプを拠点とする米国移民税関執行局(ICE)の空輸を利用すれば、解決できるかもしれないと述べた。

カオスとコントロール

専門家によれば、敵対的な政権は不法移民を利用して米国の国境を弱体化させ、混乱を引き起こしているという。

非従来型戦争を研究する「安全で自由な社会のためのセンター」のジョセフ・ユミア事務局長によれば、大量移民は米国を圧倒し、弱体化させ、最終的には崩壊させるために「武器化」されているという。

スコット氏は、トランプ大統領とバイデン大統領が打ち出した国境政策の異なる結果は、対照的だと述べた。

2023会計年度、国境当局は過去最高の320万人の不法移民を逮捕した。

バイデン大統領のもとで国境警備隊の長官を務めていたスコット氏は、新政権にどのような政策が不法移民を遅らせるのに役立つかを政府職員とともに説明したという。 しかし、バイデン大統領のチームは、不法移民を釈放する前の処理を早めることしか考えていなかったという。

2023年5月12日、テキサス州エルパソの米メキシコ国境で、国境警備隊に投降した不法移民がバスに乗り込むのをテキサス州兵が見守る(Patrick T. Fallon/AFP via Getty Images)

「我々は彼らに、これはトラブルを招くだけだと説明した。 こうなると警告した」「米国を守ろうという話をすると、その話は数秒で打ち切られた」とスコット氏は語った。

ブリンケン氏は5月7日にグアテマラを訪問した際、2022年に米国とラテンアメリカ諸国が署名した「移民と保護に関するロサンゼルス宣言」について議論し、「安全で秩序ある人道的で規則的な移民のための条件を整え、国際的な保護と協力の枠組みを強化する」ことを求めた。

「それ以来、私たちは協力して、この歴史的な課題への対応方法を変革してきた」とブリンケン氏はスピーチで述べた。

「私たちは、非正規移民に代わる合法的な移民の道を拡大し、取締りを改善し、受け入れコミュニティを支援し、弱い立場にある人々の保護を強化するための有意義な措置を講じた」と述べた。

一方、共和党主導の下院は5月8日、「平等代表法」を可決した。これは、国勢調査に、回答者と各世帯構成員が米国市民であるかどうかを示すチェックボックスを含めることを義務づけるものである。

この法案は、下院の議席と選挙人団の票を配分する際に、市民のみを考慮することを求めている。

トランプ大統領は、2020年の国勢調査を、米国市民のみを対象とするよう求める大統領令に署名したが、国勢調査法、国勢調査条項、合衆国憲法修正第5条および第14条に違反するとして、左派の公民権団体から訴訟を起こされ、阻止された。

スコット氏は、非市民をカウントすることは代議制の形を歪めることになると述べた。

「アメリカの将来を決めることができるのはアメリカ人だけだ」とスコット氏は語った。

テキサス州を拠点に活動する米国のエポックタイムズ記者。州政治や選挙不正、失われつつある伝統的価値観の問題に焦点を当て執筆を行う。テキサス州、フロリダ州、コネチカット州の新聞社で調査記者として活動した経歴を持つ。1990年代には、プロテスタント系のセクト「ブランチ・ダビディアン」の指導者デビッド・コレシュについて暴いた一連の記事「罪深きメシア(The Sinful Messiah)」が、ピューリッツァー賞の調査報道部門で最終候補に選出された。