韓国の著名な講師・全韓吉(チョン・ハンギル)氏は、2月1日に釜山駅前広場で開かれた尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の弾劾に反対する集会で、「野党は強引な立法を進め、29回にわたる弾劾決議を行い、一方的に予算を削減した。その結果、政府は機能不全に陥った。国民はすでに野党の実態を見極め、メディアの偏向報道や憲法裁判所の役割を認識するようになった」と発言した。
全氏は、公務員試験の韓国史講師として有名で、26年の教育経験を持つスター講師である。多くの受講生を指導し、年収は60億ウォン(約6億6千万円)に達するとされる。
同氏は同日午後、釜山駅前広場で行われた集会で「尹錫悦大統領は、野党の暴力的かつ違法な方法で弾劾され、不当な罪名のもとに拘束された」と批判した。
また「緊急戒厳を通じて、国民は野党主導の29回にわたる弾劾と一方的な予算削減により、政府が麻痺したことを知った。そして、メディアの偏向報道と憲法裁判所の問題点を理解するようになった」と述べ、「緊急戒厳は、韓国国民が現実を直視するきっかけとなった」と強調した。
全韓吉氏、メディアや憲法裁判所を批判
全氏は、虚偽報道を拡散し、国民を分断しようとするメディアに対し、コメントで反論し、電話で抗議するよう呼びかけた。さらに、憲法裁判所の裁判官について「もし正義に背き、国民の意思を無視するならば、憲法精神を踏みにじる民族の逆賊となるだろう」と警告した。
これまで、同氏はソウルで開かれた反弾劾集会に参加しており、今回の釜山での集会が2回目となる。
「今後2週間のうちに、さらに2都市で実施される集会に参加する予定だ」と表明し、国民にも積極的な参加を呼びかけた。さらに、古代ギリシャの哲学者プラトンの言葉を引用し「政治を避ける最大の代償は、最悪の人々に支配されることだ」と述べた。
1日午後、冬の雨が降る中、釜山駅前広場には多くの人々が集まり、弾劾に反対する声を上げた。これは釜山で開催された最大規模の反弾劾集会であり、これまで大規模な集会は主にソウルで行われていた。
さらに同じ時間帯、ソウルの光化門広場や国会前でも多くの市民が集まり、弾劾に反対するデモを行っていた。
立場を変え反弾劾の中心人物に
全氏は、以前は尹錫悦政権の戒厳措置に対して厳しく批判していた。昨年12月3日、尹氏が緊急戒厳を発表した際、彼は「極めて誤った判断」「狂気の沙汰」と強く非難していた。
しかし、尹錫悦氏の弾劾案が国会で可決され、高級公職者犯罪捜査処(公捜処)が尹氏の捜査を開始した後、彼の立場は一変。
1月19日以降、全氏はYouTubeなどを通じて野党、司法部、中央選挙管理委員会、公捜処、憲法裁判所への批判を強め、弾劾に強く反対する発言を繰り返している。
以来、全氏の動画の再生回数は急増し、
- 投稿から3日で400万回以上の視聴を記録する動画が複数発生。
- 一部動画には10万件以上のコメントが寄せられた。
- YouTubeチャンネルの登録者数は、わずか2週間で2倍となり、100万人を突破した。
これにより、彼は韓国政界における反弾劾勢力の象徴的存在となり、最近の発言は世論を大きく動かす影響力を持つようになった。
全氏がYouTube上で選管委による選挙不正の疑惑を指摘した後、最大野党「共に民主党」はGoogleに対し、全氏のチャンネルを通報。
これに対し、同氏は1月25日に国会前で行われた反弾劾集会で「『共に民主党』による通報は言論の自由を脅かす行為だ」と強く批判した。
韓国警察は最近、全氏にスマートウォッチを支給し、身辺警護を開始した。これは、彼が「多くの脅迫メールを受け取った」と警察に報告したことを受けた措置である。
1月27日、全氏はYouTube上で「全韓吉がトランプ大統領へ宛てた手紙」と題した動画を公開。
彼は動画の中で「トランプ大統領、少しお待ちください。拘束されている尹錫悦大統領の支持率は現在50%を超えている。弾劾が覆れば、大統領職に復帰し、ぜひ両国首脳が速やかに会談することを願う」と述べた。さらに「任期中にトランプ大統領と共にノーベル平和賞を受賞したい」と希望を語った。
アメリカCBSの1月18日の報道によると、トランプ氏は自身の再選準備の中で初めて尹錫悦氏について言及し「もし韓国が弾劾を中止すれば、尹錫悦大統領と会談する」と述べた。
全氏は「今は国家の存続が最優先だ」と述べ、「国が安定しなければ、家庭も仕事も成り立たない」と強調した。
支持率50%に迫る
1月26日、韓国検察当局は尹錫悦大統領を拘束・起訴し、今後憲法裁判所での弾劾審判と、ソウル中央地裁での刑事裁判が並行して進むこととなる。しかし、この状況にもかかわらず、支持率は上昇を続け、50%に迫っている。
韓国メディア「今日アジア」が韓国世論評判研究所(KOPRA)に委託し、1月31日から2月1日に実施した世論調査では、尹錫悦の支持率は47%となり、前週比2ポイント上昇。これで3週連続で40%超となった。
また、1月中旬時点で韓国の主要7つの世論調査機関すべてが、尹錫悦の支持率が40%を超えていると報告しており、これは戒厳令実施直後の最低支持率11%からの大幅回復となる。
KOPRAが1月19日に発表した調査結果では、尹氏の支持率は一時50%に達し、2022年の大統領選挙での得票率(48.56%)を上回ったことも明らかになった。
さらに、K-Stat ResearchとKOPRAの最近の調査では、それぞれ40%と45%の市民が「弾劾案を棄却し、大統領職を回復させるべきだ」と回答している。
拘束後も強気の尹氏「国民を信じ、堂々と対応する」
1月26日、尹錫悦氏は自身の拘束・起訴を知った後、弁護団や側近に対し 「非常戒厳を宣言した時点で、この事態は覚悟していた。私は国民を信じ、堂々と対応する」と語った。
拘束により、尹氏の法的地位は「容疑者」から「被告人」へと変わったが、判決が確定するまでは勾留された状態が続く。
2025年の旧正月の元日(1月29日)、尹錫悦氏はソウル拘置所の約10平方メートルの独房で新年を迎えた。これは韓国の現職大統領が拘置所で旧正月を過ごすという史上初の出来事となった。
しかし、厳しい寒さの中でも支持者たちはソウル拘置所の前に集まり、新年の儀式を行い、尹錫悦氏の健康と復帰を願った。
「尹大統領市民弁護団」が発足—1000万人の署名を目指す
2月3日、尹錫悦氏の弁護団は一般市民が中心となる「尹大統領市民弁護団」の募集サイトを開設した。
弁護団は「市民弁護団に参加することで、弾劾反対の意思を示す署名活動となる」と説明し、当日の午後4時の時点で7000人以上が参加した。
さらに、弁護団は「国民の声を集約するため、1000万人の署名獲得を目指す」とし、弾劾反対の世論形成に力を入れる方針を示した。
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