中国を訪れている超党派の日中友好議員連盟は29日、中国共産党序列3位で全国人民代表大会トップの趙楽際と北京の人民大会堂で会談を行った。
同議連の会長で、自民党の幹事長である森山裕氏は、中国国内における日本人の拘束や東シナ海への進出、レアアース(希土類)の輸出管理など日中間の懸案をめぐり中共当局に対応を求めた。
これに対し、趙は関係部門の間でやりとりが行われていると述べたものの、日本人の釈放については詳細な回答を避けた。
また、森山氏らはパンダの新規貸与を要請した。趙は前向きな返答をしている。
パンダをめぐっては、和歌山県白浜町のレジャー施設「アドベンチャーワールド」で飼育中のジャイアントパンダ4頭が、今年6月末に中国に返還されることが発表された。
趙楽際との会談に先立ち、日中議連は28日に中国人民対外友好協会の楊万明会長と会談しており、楊会長にもジャイアントパンダの貸与を要請している。
森山氏は「パンダファンは日本にたくさんいる。別れを大変悲しんでいるので、また貸与してほしい」と会談で述べた。
今回の訪中は、自民党の二階俊博元幹事長から森山氏に代わってからは初めて。森山氏のほか、立憲民主党の海江田・前衆議院副議長、共産党の志位議長らおよそ15人が訪問している。
パンダ外交の影
中国共産党の「パンダ外交」は、ジャイアントパンダという国際的に愛される動物を利用して、他国との友好関係を深め、中国共産党政権の国際的イメージを高める「ソフトパワー」戦略である。
この外交手法は1950年代から始まり、特に1972年にアメリカにパンダを贈呈したことで国際的に注目されるようになった。
しかし、パンダの貸与が単なる友好の象徴ではなく、中共による政治的影響力の拡大手段であると警戒する見方がある。
自民党の和田政宗参院議員は、『月刊Hanada』で、パンダの貸与が中国の政治的影響力拡大の手段であると警戒する見方を示している。和田氏は、日中間の外交懸案が山積している中でのパンダ誘致は適切でないと指摘し、特に仙台市へのパンダ誘致に反対している。
そのうえで、中国がパンダを外交カードとして利用してきた歴史を挙げ、まずは日中間の懸案を解決することが先決であると述べている。
また、パンダは中国の動物園から10年以上の長期契約で他国に貸し出されるのが一般的であるが、その費用の高さも問題視されている。
パンダのレンタル料は年間1億円前後の費用がかかるうえ、飼育費用は数千万円、また死亡時の補償金は約5千万円かかる。
上野動物園では、パンダのレンタル料として年間約95万ドル(約1億円)を中国側に支払っているが、この費用は東京都が負担しており、税金で賄われている。
元東京都知事の石原慎太郎氏は「高い買い物だよ」とパンダ誘致に難色を示していた。
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