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米ウクライナ 鉱物協定の詳細

2025/05/02
更新: 2025/05/02

アメリカとウクライナは、新たに締結した資源開発協定により、今後数十年にわたり天然資源分野で共同投資を行っていく。米財務省の当局者は5月1日の記者会見で、この協定はレアアースの他に、ウクライナ国内の石油、天然ガスを含む資源全般、さらにはそれに関連するインフラ開発までを対象としていると説明した。

両国は4月30日にこの協定に署名した。アメリカ当局者は「歴史的なパートナーシップ」と位置づけ、両国経済が今後長期にわたり連携していくことになると述べた。

「これは単なるレアアースではない。石油・ガスを含め、天然資源関連のインフラ全体が対象であり、ウクライナ経済の成長に関わる全体的な価値連鎖を対象とする構想だ」と、財務省の関係者は語った。

資源開発の利益を還元する共同基金

この協定では、ウクライナ国内で進められる新たな資源開発プロジェクトから得られるロイヤルティ(使用料)、ライセンス料、関連費用を、アメリカ・ウクライナ両国が共同で設立する会社を通じて管理し、両国に利益を還元する仕組みが整備されている。

アメリカはこの投資スキームを通じ、将来的にウクライナの戦後復興において主要な受益国となることを目指す。また、長期的な収益の確保とウクライナへの継続的な関与を実現することが狙いである。

「この基金に入る資金は、アメリカとウクライナの両国民に長期的な利益をもたらすように再投資される。これは両国の国益に資する仕組みだ」と、財務省の担当者は説明した。

協定は3つの文書から成り、アメリカのトランプ大統領とベッセント財務長官が直接交渉に関与したという。第1の文書は、米ウクライナ間の法的合意書で、効力を持つにはウクライナ議会の承認が必要である。残る2つの文書は、共同基金設立のための有限責任組合契約書と、その基金を運営する合同会社(LLC)の設立関連書類である。

このパートナーシップの運営会社は、ウクライナ側3人、アメリカ側3人から成る理事会によって管理される。理事会は、資金の配分や新規投資の優先順位、両国政府への分配のタイミングなどを協議して決定する。

アメリカはまた、投資先企業の選定やアメリカ企業への優先的な機会提供について、一定の裁量権を保持する。ホワイトハウスが大紀元に提供した資料には、「アメリカがこれらの資源を取得したい場合、最優先で選択または第三者を指名できる」と記されている。

一方で、どの資源をどこで開発するかについてはウクライナ側が決定権を持つことが明確にされている。ウクライナはまた、すべての資源に対する所有権を保持する。

協定には、将来ウクライナがEUに加盟する可能性が残されており、すべての投資はEU候補国としてのウクライナの義務に合致することが求められている。また、ウクライナがEUに正式加盟した場合は、「誠意ある話し合い」によって協定の内容を見直すことになっている。

ロシアの関与排除、戦後復興の主導権狙う

この枠組みにより、アメリカは敵対国やその関連企業がウクライナの資源開発に参入するのを防ぐことが可能になる。

資料や財務省の発言ではロシアへの厳しい姿勢も明確に示されており、「ロシアの戦争遂行を支援した国家、企業、個人は、ウクライナの復興事業から一切の利益を得ることはできない」と記されている。

財務省の高官は記者会見で、今回のウクライナへの長期的な経済的関与は、アメリカがウクライナの主権を強く支持している姿勢が明確になると述べ、これは「ロシアによる全面侵攻で引き起こされた大規模な破壊への対応」の一環でもあるとした。

また、「このパートナーシップは、大統領が主導する和平プロセスにおいても不可欠であり、アメリカがウクライナの成功に本気で関わっていることをロシアに強く伝えるものだ」とも述べた。

長期的には高収益の可能性

今回の協定は、トランプ氏が当初掲げていた「アメリカが3千億ドル相当の鉱物権を取得する」という案とは内容が異なっている。トランプ氏は、ウクライナ支援にかかる費用を回収するための手段として鉱物協定を構想していた。

アメリカは2022年1月から2024年12月までに、約1200億ドルをウクライナに直接支援しているが、これらはすべて無償であり、融資や債務ではない。今回の協定にも、ウクライナ側に新たな債務を課す条項は含まれていない。

ただし、この投資構造によって、アメリカは当初案以上の長期的利益を得る可能性がある。財務省の関係者は、この協定の斬新な枠組みは、将来の国際投資協定の雛形として活用できる可能性があると考えている。

「これは国際的な金融協定の在り方を根本的に変える可能性がある。今後の国際経済協定のモデルになるだろう」と述べた。

 

エポックタイムズ特派員。専門は安全保障と軍事。ノリッジ大学で軍事史の修士号を取得。