疲れて腰を下ろそうにも、公共ベンチがすべて鉄柵で囲われていた……。
中国版GWこと「労働節(メーデー)」の連休中、上海の観光名所「外灘(ワイタン)」で、公共ベンチが鉄柵で囲われ使用できなくなり、訪れた大量の観光客は、地面に座って休むという異様な光景が広がった。
SNS上では「座らせない管理」に対する非難の声が爆発的に広がり、「人をもてなす気がない」「これが世界都市の姿か」といった批判が噴出した。
上海・外灘は、黄浦江沿いに高層ビルと歴史的建築が立ち並び、中国屈指の観光名所である。外国人観光客はもちろんのこと、中国人にとっても「上海へ行った記念」に必ず訪れる場所で、夜景を背景に記念撮影をするのが定番だ。
だが、なぜかその一等地のベンチが休憩のためではなく「鑑賞用」になっていることに、多くの人々は驚きと憤りを隠せない。
(鉄柵で囲われたメーデー連休中の「外灘」の公共ベンチ)
公共ベンチの封鎖理由について、当局は「群衆事故を防ぐための措置」と説明する。ネット上では「座ると事故になるというが、地面に座るのは安全なのか?」「柵が通路を狭くしてかえって危険なのでは」と疑問の声が多くあがった。
外灘のみならず、こうした「管理優先」の施策は、中国全土で散見される。
例えば、湖南省の省都・長沙市の空港近くのバス停ベンチは、「(尻の半分しか乗らないため)座ると尻が痛い設計」と批判が殺到している。そのように設計された理由は、「市民がベンチに横たわることを防止するため」と当局者は説明する。また江蘇省昆山市の、とある公園の「鉄パイプ付きのベンチ」も有名だ。理由は同じく、ホームレス対策、夜間の滞在防止であった。

こうした「座るより立ったほうが楽」「思いやりゼロの不快な設計」と市民から不満が噴出する公共ベンチは中国の多くの都市で見かける。
公共空間とは、本来、人々の憩いや自由の場であるはずだが、中国共産党が管理する中国では、市民の憩いよりも「治安維持」「秩序管理」が最優先で、その結果、公共のベンチですら自由に座ることが許されないのだ。
世界の先進都市というが、実に程遠く、牢獄のようではないか?
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。