5月13日、トランプ米大統領は2期目初の外遊としてサウジアラビアの首都リヤドを訪問し「サウジ・アメリカ投資フォーラム」で演説を行った。経済協力の強化と安全保障の再構築を軸に、米国への投資を呼びかけた。
今回の中東歴訪では「ディール(取引)重視」の姿勢が全面に打ち出され、経済と投資が主要なテーマとなった。
演説でトランプ氏は、自らが政権を引き継いだ際の国境危機に触れ、不法越境が数週間で歴史的低水準にまで減少したこと、インフレ率の低下、就任以来すでに約50万人の新規雇用が創出されたことなどを成果として挙げた。さらに、イギリス、中国との貿易協定を「大きな勝利」と位置づけ、2025年第1四半期における対米投資が22%増加したことや、米議会が「過去最大規模の減税と規制緩和」を間もなく可決すると見込まれていることも強調。「今こそがアメリカへの投資の好機である」と訴えた。
「アメリカは今、熱い国(世界で最も注目を集める国)だ…あなた方の国を除いてはね」と笑顔で会場を沸かせた。
トランプ氏が初の外遊先としてサウジアラビアを選んだのは、1期目と同様に、石油資源に恵まれた同国との戦略的関係を重視している姿勢の表れである。
6千億ドル規模の投資と「史上最大」の防衛契約
訪問初日には、サウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子と戦略的経済パートナーシップ協定に署名。サウジアラビアはAIデータセンター、航空宇宙、エネルギーインフラ、防衛、医療など米国のさまざまな分野に6千億ドルの投資を約束した。
この合意の一環として、サウジ側はエネルギーおよび次世代防衛技術にそれぞれ50億ドル(約7800億円)のファンドを設立。アメリカからはガスタービンやエネルギー関連サービスが輸出される見通し。また、サウジはアメリカから、数十億ドル相当のガスタービンやエネルギー関連ソリューション、各種サービスを輸入する予定。また、サウジアラビアは、アメリカの防衛関連企業十数社から総額約1420億ドルに上る最新鋭の軍事装備およびサービスを購入する方針だ。
ホワイトハウスはこれを「史上最大の防衛契約」と表現した。
この大規模な合意に関連し、トランプ氏は「われわれは“黄金時代”を迎えた。共に歩み、共に成功する」と語った。
トランプ氏は大統領就任後、訪問先を決定するにあたり「アメリカへの大規模投資を約束する国々を優先する」との方針を打ち出していた。今回の訪問はその方針に沿う形で実現したものとなっている。

米企業幹部も多数同行
今回の訪問には、米政府の主要閣僚に加え、複数の著名企業の幹部も同行した。昼食会には、テスラ最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスク氏、ブラックストーンのスティーブン・シュワルツマン氏、ブラックロックのラリー・フィンク氏、ボーイング、OpenAIの各CEOが出席し、経済協力の拡大について意見交換を行った。
会場では、Nvidiaがサウジ企業に最新AIチップ1万8000個超を供給する契約を発表。サウジアラビアの国有石油会社であるサウジアラムコも、米テキサス州の製油所に34億ドルを投じる拡張計画を発表した。マスク氏は、衛星通信サービス「Starlink」のサウジ国内での運用許可を得たことを明らかにした。
地域の安全保障
トランプ氏は演説の中で、サルマン国王およびムハンマド・ビン・サルマン皇太子の下で進められているリヤドの変革について「まさに驚くべき成果」と称賛した。
トランプ氏は、サウジアラビアおよび湾岸諸国が、石油依存型経済からハイテク産業を含む多角的な経済構造へと大きく転換しつつあると述べ、この流れは「混乱ではなく商業に定義され」「テロではなくテクノロジーを輸出する」中東の未来を切り開くものであると強調した。
「幾十年にもわたる紛争を経て、いま我々は、先人たちが夢見ることしかできなかった未来『平和、安全、調和、機会、イノベーション、そして達成の大地としての中東』をついに手にできる位置に来ている」と語った。
注目を集めたのは、米国がシリアへの経済制裁を解除する方針を明らかにしたことだ。2024年12月に旧政権のバッシャール・アル=アサド前大統領が退陣し、新たに就任したアフマド・アル=シャラア大統領との会談を、5月13日に予定していると述べた。
シリアは2011年に始まった内戦をきっかけに、アメリカから厳しい制裁措置を科されてきた。歴代の米大統領は、民間人への暴力を停止させ、政治改革を促す目的で圧力をかけてきた経緯がある。
新大統領のアル=シャラア氏は、過去に一部のテロ組織との関係を指摘されているが、現在は穏健な政治指導者としての立場を打ち出しており、西側諸国との外交関係の構築を目指している。就任以降、言論の自由、報道の自由、女性の政治的・経済的権利の拡充といった一連の改革にも取り組んでいる。
最近では、フランスのエマニュエル・マクロン大統領と会談し、ダマスカスへの制裁解除に向けた協議を行った。
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