5月15日、違法なオンラインカジノの利用が拡大する中、与野党はカジノサイトの開設や運営、誘導広告を禁止する法改正案を今国会に提出することで合意した。ギャンブル依存症対策基本法の改正を軸とした今回の動きは、インターネット上で拡大する違法賭博の「抜け穴」を封じることを目指しており、今国会中の成立が見込まれている。
サイト開設・運営、広告・SNS誘導も包括的に禁止
改正案の最大の柱は、オンラインカジノサイトの設立・運営の禁止に加え、これらのサイトへ誘導する広告やSNSでの情報発信も違法とする点にある。現状、海外に拠点を置くカジノサイトへのアクセスや利用をあおる広告、著名人やインフルエンサーによるSNS上の誘導行為が規制の「抜け穴」となっている。今後は、こうした行為も包括的に禁止し、警察などからの要請に基づき通信事業者が違法広告や投稿を削除しやすくすることが狙いだ。
法案は、国内の不特定多数の人に対するオンラインカジノサイトの提示や誘導行為を明確に禁止する。SNSや検索エンジンの運営事業者は適用除外としつつ、違法広告や投稿の削除が円滑に進むような仕組みも盛り込まれている。
社会問題化するネットカジノ
オンラインカジノは、日本国内からのアクセスや賭博行為が刑法上の賭博罪に該当するにもかかわらず、「海外サーバーだからグレーゾーン」といった誤解や巧妙な宣伝で利用者が急増している。警察庁の調査によると、国内の利用経験者は約337万人、年間賭金総額は約1.2兆円に上る。特に20代・30代の若年層で利用が目立ち、違法性を認識せず参加するケースも多い。依存症や多重債務、犯罪被害など深刻な社会問題となっており、規制強化が急務である。
オンラインカジノをめぐっては、芸能人やスポーツ選手の利用が相次いで発覚し、社会的な影響も拡大。ネット上では「有名人もやっているから大丈夫」といった誤解が広がり、違法性を知らずに利用する人が後を絶たない。
国・自治体による周知と啓発も
改正案では、国や地方自治体がオンラインカジノの違法性を広く周知し、啓発活動の推進も盛り込んでいる。今後は、政府や自治体による積極的な広報や教育活動を進める見通しだ。
ただし、現時点では罰則規定が設けられておらず、実効性の確保が課題である。今後は、運用状況を見極めつつ、罰則の導入やさらなる規制強化も検討される可能性がある。
今国会成立へ、与野党が協力
今回の合意には自民党、公明党、立憲民主党、日本維新の会、国民民主党、共産党、れいわ新選組、有志の会など8党・会派が参加。各党は今月中にも党内手続きを完了し、衆院内閣委員会の委員長提案として法案を提出、今国会での成立を目指す方針だ。
オンラインカジノ規制の強化は、ネット社会の新たなギャンブルリスクに対応する法整備の第一歩となる。今後は、実効性ある運用や罰則の検討、依存症対策の充実など、さらなる取り組みが求められる。
法案成立後、オンラインカジノ利用者はどうなるか
今回の法案は主に「サイトの開設・運営」や「誘導広告・情報発信」の禁止に焦点を当てており、利用者自身への新たな罰則は盛り込んいない。しかし、オンラインカジノの利用自体は従来通り、刑法上の賭博罪に該当する違法行為であることは変わらない。
今後は、政府や自治体による違法性の周知・啓発活動が強化され、「知らなかった」「グレーだと思っていた」といった主張はより難しくなる。サイト運営や広告・SNSでの誘導を厳しく規制することで、利用者がオンラインカジノにアクセスする機会や情報が大幅に減り、実質的に利用が困難になると予想される。
オンラインカジノ利用者は、今後さらに厳しい社会的・法的リスクに直面し、利用のハードルが大きく上がることになる。
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