農水省は16日、コメ流通の円滑化および価格抑制を目的に、政府備蓄米の入札制度を見直すと発表した。早期に小売現場への供給が可能な集荷業者を対象に、6万トンの「優先枠」を新設するほか、買い戻し条件の緩和や追加放出によって市場供給量を拡大する。
新たに設ける優先枠は、5月28~30日に実施予定の第4回入札から適用する。小売業者に直接納品するケースには2万トン、卸売業者を経由する場合には4万トンの枠を設け、販売先が確定している集荷業者が対象となる。
また、備蓄米の落札業者に対する政府の買い戻し条件については、従来の「原則1年以内」から「最長5年以内」へと大幅に延長される。これは、販売リスクを軽減し、入札参加を促す狙いがある。
江藤農水相は、価格安定化に向けて、5~7月にかけて毎月10万トン、合計30万トンの備蓄米を追加放出する方針も示した。一方、備蓄米の在庫確保のために行ってきた年間10万トンの買い入れ入札は当面中止するとした。今後、米価や流通状況の改善が見られない場合には、落札業者に対する買い戻し義務の免除も検討する。
こうした見直しの背景には、備蓄米が消費現場に届くまでのタイムラグがある。3月の入札で放出された約21万トンの備蓄米のうち、4月13日までに小売店に到達したのはわずか1.4%にあたる3018トンにとどまっていた。
コメ価格は、4月28日~5月4日の週に5キロあたり4214円と、前週比で19円安となり、18週ぶりに下落した。ただし、前年同期(2106円)と比べて依然として2倍超の高値圏にある。農水省は、猛暑による2024年産の減収(前年比5%減の720万トン)や、インバウンド需要の増加が価格高騰の背景にあると分析している。
政府は今回の措置を通じて、民間流通における供給量を増やすことで需給バランスの改善を図り、コメ価格の安定を目指すとしている。今後、供給拡大が価格の抑制につながるかが焦点である。
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