東京都世田谷区と渋谷区は、マイナ保険証の利用が進まない現状を踏まえ、国民健康保険(国保)に加入するすべての区民に対し、健康保険証と同等の効力を持つ「資格確認書」を一斉に交付する方針を明らかにした。
資格確認書は、マイナンバーカードを健康保険証として利用できない人を対象とした代替手段であり、国は高齢者や障害者などの「要配慮者」に限定して交付する方針を示した。今回の両区の判断は、マイナ保険証の普及を目指す政府の方針とは一線を画すものである。
渋谷区は2025年7月から約4万6千人分、世田谷区は9月から約16万人分の資格確認書を、それぞれ国保加入者全員に郵送する予定だ。なお、国保加入者ではない会社員や公務員などは対象外だ。
現在の紙の健康保険証および資格確認書は、今年9月30日をもって有効期限を迎える予定だ。一方、2025年3月時点のデータによると、マイナ保険証の全国平均の利用率は27.26%にとどまり、厚生労働省の推計でも、医療機関を受診した人のうちマイナ保険証を使用した割合は42.0%と過半数に届いていない。
こうした中で世田谷区の保坂展人区長は5月26日の記者会見で、新たな制度について理解が浸透しているとは言い難い中、区民が保険診療を受ける権利を保障するための判断だと説明した。
「保険に入っているのに、保険診療ができないケースは避けなくてはならない。極めて合理的な判断だと思う」と述べた。
渋谷区は「『マイナ保険証』の普及を推進する立場に変わりはないが、システムトラブルの懸念もあることなどから総合的に判断した」と言う。
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