2022年7月に安倍晋三元首相が銃撃され死亡した事件を巡り、殺人罪および銃砲刀剣類所持等取締法違反(銃刀法違反)などの罪で起訴された山上徹也被告(44)の第7回公判前整理手続きが、5月27日に奈良地方裁判所で非公開で行われた。被告本人も出席し、約1時間にわたり証拠や争点の整理が行われた。
奈良地裁は、初公判を2025年10月28日に開始する案を検察側・弁護側に提示しており、現在は審理日程の調整が主要な争点の一つとなっている。裁判所関係者によると事件の社会的影響の大きさや証拠の複雑性により、合意形成には時間を要しているという。
事件は2022年7月8日、奈良市の近鉄大和西大寺駅近くで発生。参議院選挙の応援演説中だった安倍元首相が、山上被告により手製の銃で銃撃され死亡した。被告はその場で現行犯逮捕され、2023年1月に殺人罪および銃刀法違反などの罪で起訴された。
被告は取り調べで、母親が旧統一教会(世界平和統一家庭連合)に多額の献金を行い家庭が破綻したことに強い恨みを抱き、安倍氏が同団体と関係していると信じて犯行に及んだと供述している。
検察側が請求した起訴前の精神鑑定では「完全責任能力あり」との結果が出され、弁護側も精神状態については争わない方針を示している。今後の審理では、家庭環境や旧統一教会の影響といった情状面、自作銃の殺傷能力や違法性などが中心的な争点となる見通しだ。
弁護側は背景事情を量刑判断に影響させる戦略をとる一方、検察側は事件の計画性や社会的影響の重大性を強調する構えで、証拠採用の範囲を巡る対立も予想されている。
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