中国が沖縄県・与那国島南方の日本の排他的経済水域(EEZ)内に設置していたブイを撤去したことが明らかになった。海上保安庁は5月28日21時、公式ホームページ上でこの事実を公表した。これにより、日本のEEZ内で確認されていた中国のブイは全てなくなったことになる。

与那国島南方のブイは、台湾に近い海域で2023年12月に設置が確認されていた。日本政府は設置直後から中国政府に対し、繰り返し撤去を求めてきた。海上保安庁は今回、「台湾東のブイはなくなった」と航行警報で発表し、警報を取り下げた。日本政府関係者によれば、中国の作業船が5月27日に現場で作業を始め、28日に撤去が完了したことが確認されたという。
中国共産党政権はこれまで、与那国島南方のブイについて「気象観測用であり、設置は合法」と主張していた。しかし、国連海洋法条約では、他国のEEZ内でその国の同意なしに調査や観測を行うことはできないと定められている。日本政府はこの立場から、ブイの撤去を強く求めていた。
また、中国は2023年7月にも沖縄県・尖閣諸島沖の日本EEZ内にブイを設置していたが、2025年2月にこれを移設したと発表していた。今回の与那国島南方のブイ撤去により、日本のEEZ内に中国が無断で設置したブイは全て消失したことになる。
林芳正官房長官は5月29日の記者会見で、「存在しなくなったことを確認した。当該ブイについての問題はなくなった」と述べ、問題の解決を強調した。
過去にも中国共産党政権が類似の手法で日中関係を揺さぶった事例は存在する。たとえば、上述のように尖閣諸島沖の日本EEZ内に中国がブイを設置し、日本側が繰り返し撤去を求め、最終的に中国側が移動や撤去を行うという経緯が複数回確認されている。また、東シナ海や南シナ海における中国の現状変更行動や、海警法の施行による一方的な権益主張なども、力による既成事実化や外交カードとしての利用といった「揺さぶり」の一環と指摘されてきた。
今回のブイ撤去について、「日中関係の改善」と評価する見方が報道上で示されているが、実際には日本のEEZ内に無断で設置されたものが撤去され、国際法上の通常状態に戻っただけである。無断のブイ設置は「違法行為」と明確に批判し、日本側が毅然とした対応を取るべき問題だ。今回の撤去をもって中国との関係改善と評価する根拠は乏しい。今後も同様の行為が繰り返される可能性は否定できず、警戒と監視を続ける必要がある。
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