ルビオ米国務長官は28日、中国共産党(中共)と関係のある学生や、安全保障上重要な分野を専攻する中国人学生に対し、アメリカがすでに発給した学生ビザの取り消しを開始すると発表した。また、今後の発給審査も大幅に厳格化する方針を示した。
この措置は、トランプ2期目政権下で進められているもので、国務省と国土安全保障省が連携して実施する。声明では「ビザ新方針は中国優先ではなく、アメリカ優先である」と強調している。
声明によれば、対象は中国本土と香港からの学生で、「中共とのつながりがある者」や「機微な技術や戦略分野に関わる者」が中心となる。また、申請者のSNS履歴などの審査も今後はより厳格に行うとしており、各国の在外米大使館に対しては、学生ビザの新規面接を一時停止するよう指示を出している。
アメリカには現在、約1900万人の大学生が在籍しており、そのうち留学生の割合は5.9%。国際教育協会によると、2023〜24年には約110万人の留学生がアメリカに渡航し、そのうち中国とインドからの学生が半数を占めていた。
しかし、米中関係の悪化を背景に、2024年の中国人留学生数は前年比4%減の約27万7千人に落ち込んだ。
FBIは、中共政府がアメリカの大学キャンパスで根付いている「学術の自由」「国際協力」「情報の開放性」といった文化を利用し、スパイ活動や技術情報の収集を行っているとして警戒を強めている。
こうした背景の下、今年3月にはアメリカ下院共和党議員らが「中共による知的財産の窃取を防止するためのビザ制限法案」を提出。5月12日にはフロリダ州のアシュリー・ムーディ上院議員が、FOXビジネスの番組で「中国人には国家情報法により情報収集の義務が課されている。そうした国に対し毎年30万件の学生ビザを発給することは許されない」と語った。
中共の「国家情報法」は、中国国内外を問わず、中国人が政府の情報活動に協力する義務を負うことを定めた法律であり、アメリカではこれが中国人留学生のスパイ活動への関与リスクとして問題視している。
実際に、アメリカの大学紙「スタンフォード・レビュー」は5月7日、スタンフォード大学内において中共が長年にわたりスパイネットワークを構築していたと報道。偽名利用や人的ネットワークを通じて、中国関連研究を行う学生に接触し、機微な研究情報を収集していた実態を明らかにした。
調査では、一部の中国人留学生が中共政府から研究成果の定期報告を求められ、従わなければ中国に住む家族に対して経済的・政治的な圧力がかけられるケースもあったとしている。
アメリカ国家安全保障会議(NSC)の元中国担当官マシュー・ターピン氏や、FBI前長官クリストファー・レイ氏はこうした動きについて、「中共による学術分野でのスパイ行為は、史上最大規模の知的財産の流出を招いている」と警告した。
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