日米で高等教育と国家安全保障のあり方をめぐる議論が激しさを増している。背景には中国共産党(中共)による影響力拡大や「国家安全」を最優先する中共の姿勢への警戒感が強く、日本でも外国人留学生への多額の給付をめぐる問題が表面化し、支援制度の見直しが進んでいる。一方、米国ではハーバード大学と中共の関係が安全保障上の懸念となり、外国人留学生への規制が強化された。学術交流と国家の安全保障をどう両立させるか――中共への懸念を背景に、日本は今、国際化と国益のはざまで大きな岐路に立たされている。
日本の外国人留学生支援、見直しへ 文科省が制度改革を検討
日本の博士課程学生向け支援制度「次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING)」をめぐり、外国人留学生への多額の給付が社会的な議論となっている。2024年度のSPRING受給者1万564人のうち約4割にあたる4,125人が外国人で、そのうち中国人が2,904人(全体の約3割)を占めることが明らかになった。国会では3月に有村治子参議院議員が「国民生活が厳しさを増す中、日本の学生を支援する原則を明確に打ち出さなければ理解が得られない」と指摘し、制度の見直しを求めた。こうした声を受け、文部科学省は「日本人学生への支援内容の拡充」や「日本人と留学生の支援内容の見直し」を含む制度改革に着手し、今夏までに具体案をまとめる方針だ。
米国、ハーバード大と中国共産党の関係が焦点 外国人留学生に制限
一方、米国ではハーバード大学と中共の関係が安全保障上の大きな問題として浮上している。トランプ政権はハーバード大学の外国人留学生受け入れ資格を一時取り消し、留学生比率を現在の約27%から15%程度にまで制限すべきだと主張。特に中共と関係のある中国人留学生や、重要分野を研究する学生に対してはビザの取り消しや審査の厳格化を進めている。
背景には、ハーバード大学が中共政権系組織や中共軍と関わりのある大学との共同研究、巨額の中国からの寄付などを受けてきたことがあり、米議会でも透明性や安全保障上の懸念が指摘されている。
学術交流と国家安全保障は「中国共産党への懸念」が焦点に
日米両国で学術交流のあり方が大きく問われている背景には、中共への根強い警戒感がある。日本では、中共の軍事力強化や東シナ海・南シナ海での現状変更の動き、さらには国家安全を最優先する中共の姿勢が、社会や政界で深刻な懸念事項と受け止められている。米国でも、中共が学術・経済・政治分野に及ぼす影響力拡大への警戒が強まり、ハーバード大学をはじめとする学術機関と中共との関係が問題視されている。
こうした中共への懸念が、日米両国で学術交流の改革や留学生政策の見直しを促す大きな原動力となっている。つまり、現状の問題の根本には中共の動向と影響力拡大への警戒があり、学術分野においても国家安全保障を重視した新たなルール作りが求められている。今後、日米を中心に学術交流と安全保障のバランスをどう取るかが、重要な政策課題となる。
日本、岐路に立つ
日本は今、学術・研究の国際化と国家安全保障、そして国民の理解をどのように両立させるかという大きな転換点を迎えている。支援制度の見直しや大学の国際連携の透明性確保など、国際社会の信頼と国益を両立させる新たなルール作りが急務となっている。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。