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中国車企業の価格戦争が激化 手抜きと品質問題が表面化

2025/06/11
更新: 2025/06/11

中国の自動車市場で再び混乱が広がっている。価格競争、企業間の対立、そして品質危機と、問題が連鎖的に浮上している。

5月20日、第一汽車の紅旗は2025年型H9の価格を9.4万元引き下げた。これに続いてBYDは23日、22車種で最大34%の値下げを実施した。長安汽車、零跑汽車、吉利、小米、華為も次々と同様の措置を取り、5月26日には奇瑞が一挙に38車種を値下げし、エントリーモデルのSUVを3.49万元で市場に投入した。

中国乗用車連合会の統計では、2024年の初め5か月間の値下げ幅が2023年通年の9割に達しつつある。自動車流通協会も、2024年の業界利益が前年同期比で7.3%縮小し、2025年第1四半期の利益率が3.9%に低下し、過去10年で最低水準に落ち込んだと明らかにしている。

価格競争が止まらぬ中、企業幹部らは「2025中国自動車フォーラム」で激しく火花を散らした。BYDの総経理・李雲飛氏は、同業他社を「悪質で愚かだ」と断じ、長城汽車の董事長・魏建軍氏はBYDを「自動車業界の恒大だ」と揶揄した。さらに、吉利の副総裁・楊学良氏は「泥棒が泥棒を捕まえるようなものだ」と発言し、場の緊張を高めた。

しかし、口論以上に深刻な事態は、相次いで発覚している品質事故だ。1月には広東省河源市でBYD元Plusが衝突により車体が粉砕した。6月初旬、Zeekr001が深圳での事故で真っ二つになった。6月5日には、あるブロガーが特定ブランドのEVのバンパービームの薄さを実験で暴き、「ジュース缶のように脆弱」と断じたうえで、メーカーに対し「全く節度がない」と強く批判した。

元広西自動車構造エンジニアの黄国成氏は、多くの企業が見た目を優先し、安全性を軽視していると指摘している。さらに、検査用の車両には高品質の部品を用いながら、量産車では材料を削減し、コストを抑えるという手法が横行している。

こうした問題は中国国外にも広がっている。マレーシアの報道機関は、BYD Atto 3のオーナーがドアセンサーの故障で重大事故寸前に至り、最終的にメーカーが車両を買い戻して騒動を収めた事例を伝えている。

アメリカの経済学者・黄大衛氏は、大紀元の取材に対し、中国の自動車産業が「資金調達、拡張、過当競争、崩壊」という悪循環に陥っていると分析した。競争の主導権が市場ではなく政策に移行し、安全性や品質に深刻な影響を及ぼしていると指摘している。

台湾国防安全研究院の研究員・王繡雯氏も、品質事故が続発すれば、中国の電気自動車が国際市場で信頼を失うと警鐘を鳴らした。

中国共産党は「反過当競争」を掲げ、工業情報省や自動車協会も業界の秩序回復を提唱している。しかし、外部の目は冷ややかだ。地方政府が税収に依存し、産業チェーンに深く根ざす腐敗構造の中では、企業が価格競争から撤退するのは極めて困難だ。

さらに、国際的な圧力も強まっている。欧州連合はBYDや吉利を対象に反補助金調査を開始し、アメリカは中国製電気自動車に対する関税を100%に引き上げた。東南アジア諸国も次々と現地産業保護のための規制を導入している。

黄大衛氏は、過当競争が中国自動車業界の内部エコシステムを破壊し、中国の電気自動車が掲げる「海外進出の夢」すら打ち砕くと警告している。