政府は6月20日、サイバー攻撃を未然に防ぐ「能動的サイバー防御」の司令塔となる「国家サイバー統括室」を7月1日に発足させることを閣議決定した。これは、現行の「内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)」を改組し、より強力で実効性のあるサイバー防御体制を構築するための措置である。
新たな統括室は、今年成立した「能動的サイバー防御」関連法に基づき設置される。これにより、政府や重要インフラ企業がサイバー攻撃を受ける前に、攻撃の発信元となるサーバーなどにアクセスし、無害化する措置を講じることが可能となる。また、政府は重要インフラ関連企業と連携し、サイバー攻撃のリスクを監視するために通信情報を取得・分析するなど、総合的な調整も担う。
統括室のトップには、次官級の「内閣サイバー官」という新たな役職が新設される。これにより、従来よりも高い権限と責任を持って、警察や自衛隊、民間企業との連携や情報共有を調整することが期待されている。
政府は今後、2026年中に侵入・無害化措置の運用を開始し、2027年中には通信情報の取得・分析の本格運用を目指す方針である。平将明サイバー安全保障担当相は「司令塔機能をしっかり果たし、能力を構築していく」と強調した。
また、サイバー施策全体を統括する「サイバーセキュリティ戦略本部」についても、7月1日付でトップを官房長官から首相に格上げし、構成員を関係閣僚から全閣僚に拡大する。これにより、政府全体でのサイバー安全保障体制の強化が図られる。
今回の改組は、国内外でサイバー攻撃の脅威が高まる中、迅速かつ的確な対応を実現するための体制強化策である。今後は、警察や防衛省・自衛隊の能力を最大限に活用し、官民連携を進めながら、国や重要インフラの安全確保に努めることが求められる。
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