中国の大手不動産デベロッパーである恒大集団などが経営危機に陥って以来、中国の不動産市場は低迷から立ち直れずにいる。市場コンサルタントによると、中国本土での投資リターンが過去4年間の不動産不況で低下しているため、香港を含むグローバル投資家は投資を中国から日本の不動産市場へと移している。
6月22日付のサウスチャイナ・モーニング・ポストの報道によると、国際的な不動産管理会社コリアーズ・インターナショナルがまとめたデータでは、同年第1四半期にグローバル投資家は日本の住宅市場に112億ドル(約1兆6千億円)を投資し、過去5年平均を6%上回った。これにより日本は世界4位の不動産投資先となった。報告書によると、投資元の上位3地域は、アメリカ、シンガポール、香港である。
注目すべきなのは、中国本土の投資家までもがこの潮流に加わっていること。この期間中、中国投資家は日本の住宅市場に約10億ドル(約1500億円)を投資しており、これは過去5年の平均4億2800万ドル(約630億円)の2倍以上となっている。
不動産サービス会社ジョーンズ・ラング・ラサール(JLL)のデータによると、2024年第1四半期における日本国内外の住宅ファンドによる投資総額は12億ドル(約1800億円)で前年同期比16%増となった。
総合不動産コンサルタント企業コリアーズ・ジャパンの投資サービス責任者、谷川雅浩氏は「香港の投資家は従来、中国本土市場に注目してきたが、中国の不動産市場が崩壊の危機に瀕しているため、資本を日本やオーストラリアなど、より安定した市場に移している」と述べた。
円安と政治不安が追い風に 富裕層の日本移住も加速
2020年以降、中国本土では債務危機が続き、新築住宅価格が24か月連続で急落している。この動きにあわせて円安が進行し、日本の不動産資産が国際的に魅力を増している。過去1か月で円は対ドルで約1%下落し、過去12か月で累計9%下落した。一方、インフレ率は今年1月に4%と2年ぶりの高水準に達し、5月は3.5%にやや低下。こうした経済状況も、海外投資家にとっては日本不動産への参入機会となっている。
6月10日の声明によると、香港に拠点を置くシェアリハウス不動産運営会社ウィーブ・リビングとアメリカのプライベートエクイティ企業KKR(Kohlberg Kravis Roberts & Co. L.P)は、東京の六本木、南麻布、白金などの高級エリアで6物件を新たに取得。これにより、日本での投資物件数は計17件に増加した。
香港のベンチャーキャピタル企業マインドワークス・キャピタルの子会社、マインドワークス・プロパティーズは、東京港区にある多世帯住宅ビル「ヘイブン芝浦」を取得し、日本市場への本格参入を果たした。
多国籍不動産企業 JLL(Jones Lang LaSalle Incorporated)のアジア太平洋地域キャピタルマーケットリサーチ責任者パメラ・アンブラー氏は、文化、美食、桜で知られる日本は、2012年以来、賃料収入と高入居率によって年間5%以上の総合リターンを実現し、2024年には43億ドル(約6310億円)の不動産投資を呼び込むと予測した。
さらに、中国共産党の専制的な政治体制への不満がゼロコロナ政策期間中に高まり、中国富裕層の日本移住も加速している。2023年末時点で、日本には約82万2千人の中国居住者がおり、前年比6万人増と過去最大の増加幅を記録した。。
ウォール・ストリート・ジャーナルは、中国生まれで日本国籍を取得した東京の不動産ブローカー、Osamu Oriharaさんの話として「2019年と比べて収入が2倍から4倍に増えた」主な顧客は中国人富裕層だと報じた。
Oriharaさんは「以前とは異なり、長期滞在ビザを求める中国人が増えている」と同紙に語った。
同報道によると、不動産記録に基づき、ハヤシさんが住む48階建てのビルでは、約3分の1のマンションが中国名の個人または中国名の企業を代表する者によって所有されている。東京湾近くの高層マンションが立ち並ぶ地域の住民は、こうした典型的なビルでは4分の1以上が中国人であると述べた。
日本人の住宅取得に逆風も
こうした海外からの投資熱の高まりは、日本人の暮らしにも影を落としている。不動産経済研究所によると、2025年5月、首都圏で発売された新築マンションの平均価格は9396万円に達し、前年比25.5%上昇。中でも東京23区では平均価格が1億4049万円と36.1%の急騰を記録した。
背景には2億円、3億円を超える高額物件の即日完売が相次ぐ実態があり、富裕層向け物件が市場を押し上げている。物件供給が減る中、海外資本による「爆買い」が価格を引き上げ、一般の日本人にとって住宅取得がますます困難になるという側面も顕著になりつつある。
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