厚生労働省は2025年6月27日、福岡厚労大臣による定例記者会見を実施した。会見では、新型コロナワクチン接種後のスパイクタンパク質の長期残存に関する論文報告と、若年層へのワクチン接種政策の経緯について、記者から質問が相次いだ。
スパイクタンパク質の長期残存と論文報告
記者からは、mRNAワクチン接種後のスパイクタンパク質が長期に残存することを示唆する論文が複数存在するにもかかわらず、厚労省が「残存に関する報告はなされていない」としている点について質問があった。
福岡大臣は、薬機法に基づき、製造販売業者は「重大な疾病、障害、死亡が発生する可能性があることを示す査読済み論文」を報告する義務があると説明した。そのうえで、指摘された論文については「重大な疾病に該当する可能性や発生の観点から、法律に基づく報告が必ずしも必要とは考えていない」と述べた。
また、「ワクチン接種後のスパイクタンパク質の残存と副反応の可能性を示唆する論文については、専門家の意見を伺った上で検討する」とし、今後の検討スケジュールについては「必要な情報の収集・整理が終わり次第、検討を進める」と述べ、現時点では具体的な時期は未定であるとした。
ワクチン安全性と長期的影響
mRNAワクチンは日本国内で2021年から大規模に接種が始まった。厚労省は当初、スパイクタンパク質は体内ですぐに消失するとしていたが、近年では「1年以上たっても消えない」とする論文も報告されている。これについて大臣は「スパイクタンパク質の残存と副反応との因果関係は証明されていない」としつつも、今後も最新の知見を収集し、専門家の意見を踏まえて対応を検討する姿勢を示した。
若年層へのワクチン接種政策の経緯
若年層への接種政策については、2022年5月に開始された4回目接種の対象は「60歳以上および基礎疾患を有する18歳以上」とされ、12歳以上の若年層は対象外となっていた。また、努力義務や接種勧奨の対象も4回目接種以降は高齢者等に限定された。2023年9月からの秋開始接種では、接種対象を6か月以上に広げつつも、努力義務や公的関与の対象は重症化リスクが高い65歳以上等に限定された。
特例臨時接種(全額公費負担)は2024年3月末まで継続され、その間、接種を希望する者に接種機会を設けるよう、若年者も対象となっていたが、2024年4月以降は定期接種制度に移行し、65歳以上等が定期接種の対象、若年層は有料の任意接種となっている。
厚労大臣の危機感は?
新型コロナワクチン接種後の健康被害救済制度で、これまでに1,026名が死亡認定されていることについて、記者が福岡厚労大臣に危機感を持っているかどうかを問いただした。大臣は「いろいろな副反応については、必ず全例、専門家の方々に評価していただいている」と述べ、さらに「安全性を引き続き、しっかり見ていくことは大切だと思っております」と答えた。大臣は危機感の有無については明言を避けたが、今後も専門家による評価と安全性の監視を重視する姿勢を示した。
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