8月21日、アメリカとイギリスは同日、イランに対する新たな制裁を発表した。アメリカ側は、香港、中国、アラブ首長国連邦(UAE)、およびマーシャル諸島に拠点を置く複数の企業や船舶が、イランの石油輸出を支援し、制裁規定に違反していたと指摘した。イギリス側は、こうしたネットワークが、ウクライナやイスラエルにおける活動を含め、テヘランの「破壊的な」海外活動を支えていると表明した。
アメリカ財務省は、今後もイラン政権を支援し世界の安全保障を脅かす者に対しては、断固として責任を追及し続けると強調した。
米国の制裁内容あ
アメリカ財務省外国資産管理局(OFAC)によれば、今回の制裁は主にギリシャ国籍のアントニオス・マガリティス氏と同氏の海運ネットワークを対象とするものだと説明した。彼は長年にわたる海運業の経験を利用し、イランの石油の違法輸送・販売を仲介してきたとされ、その資金がイランの先端兵器計画に供与されていた。
マガリティス氏が関与している企業は以下の通りである。
・Marant Shipping and Trading S.A.(ギリシャ/マーシャル諸島)
・Square Tanker Management Ltd.(マーシャル諸島)
・Comford Management S.A.(マーシャル諸島)
・United Chartering S.A.(マーシャル諸島)
・Cristobal Marine Corp.(マーシャル諸島、Rose Shipping傘下。同社は2024年12月にすでに米国の制裁対象となっている)
また、マガリティス氏はMS ENOLA、MS ANGIAなどの船舶の運営にも関与しており、これらはイランの石油を運搬した実績がある。
さらに、米国はUAEのOzarka Shipping – FZCOとその所有する船舶、そしてマーシャル諸島や英領ヴァージン諸島に登録されたその他の海運会社に対しても制裁を科している。
中国・香港の6社および4隻のタンカーに制裁
今回、アメリカの制裁リスト(特別指定国民=SDNリスト)には、中国本土と香港の6社、および4隻のタンカーが含まれている。
中国本土のSDN指定企業は以下の通りである。
・青島港海業董家口油品有限公司
・洋山申港国際石油貯運有限公司
香港のSDN指定企業は以下の通りである。
・Ares Shipping Limited
・香港航順船運有限公司(Hong Kong Hangshun Shipping Limited)
・Regal Liberty Limited
・U Beacon Shipping Co., Limited
これらの企業と関連するタンカーは以下の通りである。
・「Adeline G」(パナマ船籍、U Beacon Shipping Co., Limitedと関連)
・「Ares」(クック諸島船籍、Ares Shipping Limitedと関連)
・「Giant(別名:Macho Queen)」(香港区旗および中国国旗を掲げている、Regal Liberty Limitedと関連)
・「Kongm」(パナマ船籍、香港航順船運有限公司と関連)
スコット・ベッセント米財務長官は、「本日発表したマガリティス氏とそのネットワークに対する措置は、イランの先端兵器プログラムへの資金提供、テロ組織の支援、そして我々の部隊や同盟国の安全を脅かす能力を削ぐものである」と述べた。
また、「トランプ大統領の指導の下、財務省は今後もイラン政権を支援し、世界の安全を脅かす者に対して厳しく責任を追及し続ける」と付け加えた。
英国の制裁内容
イギリス外務省は同日、イランの石油王ムハンマド・ホセイン・シャムハニ氏と、同氏が関与する4社に制裁を課したと発表した。これらは、イランがウクライナおよびイスラエルにおいて展開する「不安定化行動」を支援していたとされる。
制裁内容には、シャムハニ氏本人に対する資産凍結と渡航禁止、そして海運、石油化学、金融分野でシャムハニ氏が活動する4社に対する資産凍結が含まれている。イギリス政府は、シャムハニ氏とそのネットワークがイランの石油輸出および資金流動において重要な役割を果たし、イラン政権に財源を提供していると指摘した。
イギリス外務省のハミッシュ・ファルコナー中東担当相は、「イランは取引ネットワークおよび関連組織による収益に依存して、不安定化行動を展開しており、地域内の代理勢力やパートナーの支援、さらにイギリス国内における脅威の実行などを可能にしている」と述べた。
一方、イランのロンドン大使館は、イギリスの「一方的かつ違法な措置」および「根拠のない非難」と非難した。
アメリカはすでに先月、シャムハニ氏に対して制裁を科しており、彼が複雑な仲介ネットワークを通じて多数のコンテナ船やタンカーを管理し、世界中でイランおよびロシアの石油・その他商品を販売していたと非難している。欧州連合(EU)も7月に彼を制裁対象に加えている。
今年6月、アメリカとイスラエルはイランの核施設を攻撃し、それに対してイランは、アメリカとの間で進めていた核開発抑制に関する協議を中止した。イランは核兵器開発の意図を否定し、西側諸国の主張を「根拠がなく、政治的動機に基づき、敵意に満ちている」としている。
しかし、イギリスの国会議員らは先月、イランがイギリスに対して多層的かつ拡大する脅威をもたらしていると警告を発している。これには、反体制派やユダヤ人コミュニティに対する攻撃や暗殺の可能性、スパイ活動、ハッキング攻撃、さらには核兵器開発の試みが含まれている。
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