また中国で暴走車。8人をはねた男は車ごと川に転落。政府は「事故」と言うが、人々は信じない。社会に渦巻く不信と絶望が、事件のたびに噴き出す。
中国南部・広西チワン族自治区百色(ひゃくせき)市で10月17日昼前、車が交差点で複数の市民や電動バイクを立て続けにはねた後に逃走。その後、川に転落し運転手の男(35)は死亡したとみられている。
地元警察の発表によると、「死者はなく、8人が軽傷、7台の電動バイクと1台の乗用車が損傷した」という。警察は「単独事故」と説明したが、ネット上では「また社会報復ではないか」との声が広がった。
(現場の様子、2025年10月17日、広西チワン族自治区百色市)
市民が撮影しSNSに投稿した現場の映像には、灰色の乗用車が猛スピードで交差点に突っ込み、人とバイクを次々とはね飛ばす衝撃的な光景が映っている。
巷では「男は多額のネットローンを抱え、離婚後に酒に溺れていた」「借金苦と孤独が動機だった」とする噂が人づてに広がっているが、当局はこれについて言及していない。

こうした事件が起こるたび、当局は「精神疾患」や「偶発事故」として片づける。しかし、多くの人々はもう信じていない。これまでにも、社会不安を招きかねない政権に不都合な要素がその都度消されてきた経験から、人々は次第に「政府発表と逆のことこそ真相なのでは」と悟るようになった。「政府が白と言ったら黒に違いない」「官製メディアの句読点すら信じない」と断じる市民も少なくなく、政府への信頼はすでに地に落ちている。
もちろん単なる事故の可能性もある。それでも、中国では悲劇が起きるたびに「社会報復ではないか」と疑うのが人々の反射となっている。それは根拠のない噂ではなく、信頼を失った社会が抱える怨嗟と絶望の表れである。真相はまたしても、濁った川の底に沈んだままだ。

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