中国でネット通販の小規模事業者が相次いで店を畳んでいる。政府が財政難のなか、全国で過去1〜3年分の取引データを遡って税金をまとめて請求し、突然の負担に耐えられなくなった中小の店が撤退しているためである。
10月からはアリババや拼多多(ピンドゥオドゥオ、ピンドウドウ)、微信など全プラットフォームに売上データの提出が義務化され、税務当局は一斉に照合作業を開始した。11月に入り「申告内容と売上が合わない」として数十万元(数百万円)規模の請求を受けた事業者が各地で急増している。
売上が一定額を超えると税率が大幅に上昇する仕組みのため、薄利の店ほど直撃を受けやすい。年商120万元(約2600万円)〜500万元(約1.1億円)の事業者は税率1%だが、500万元を超えると13%に跳ね上がる。
本紙が取材した浙江省義烏(イーウー)で海外向けの小商品を扱っていた業者・明生氏は、数年続けてきた商売を今年やめ、海外で働く決断をしたという。義烏は世界最大級の小商品卸売市場を抱える地域として知られるが、今は税負担で撤退が相次ぎ、かつての活気を失いつつある。
明生氏は、税金の請求を受けて店を畳む例が周囲で目立ち「もともと薄利多売で利益がほとんどないため、税金を払えば続けられない」という声を頻繁に耳にすると話した。なかには夜逃げ同然で撤退する店もあるという。
税金を払えば利益が消え、値上げをすれば客が離れるという悪循環に陥り、商売を続けられない業者が増え続けている。海外向けのネット販売でも閉店が増え、注文が減ったという声がすでに出ている。
背景には、中国経済の低迷や不動産不況、地方政府の巨額債務が重なる深刻な財政難がある。SNSでは「大手は海外に逃げ道があるが、小さな店だけが狙われている」との不満が噴出しており、ネット通販市場の縮小と失業の拡大が今後さらに進む懸念が強まっている。

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