中国の食品安全や衛生の問題は、今にはじまった話ではない。
下水油、正体不明の肉、床に落ちた食材をそのまま使う調理、期限を直して売られる食品……そんな話を聞いても、人はどこかで思ってしまう。「まあ、自分が食べる分は大丈夫だろう」と。
しかし、昨年末に成都の観光名所・春熙路(しゅんきろ)で、その油断を真正面から打ち砕く出来事が起きた。なんと、前の客が食べ終わった鍋のスープをそのまま鍋に戻し、次の客に提供する屋台が、堂々と営業していたのである。
「まさか本当に目の前でやるとは」。観光客の驚きが、そのままネット上を駆けめぐった。
あまりにも自然な動きだったため、最初は自分の見間違いかと思ったという。しかし、次々と同じ行為が繰り返され確信した。
観光客の女性が「衛生的に問題ではないのか」と問いかけると、店主はこう言い切った。
「串鍋料理はどこでもこうしている」
「二十年以上、ずっとこのやり方だ」
「外から来た人が気にしすぎだ」
さらに店主は、「今日の商売を邪魔するなら、こちらも黙っていられない」と、威圧的な言い方までした。
女性はその場を離れず、これから座ろうとする客に「この店はスープを使い回している」と注意し続けた。その様子を撮影した動画がSNSに投稿されると、大きな反響を呼んだ。
騒ぎを受けて、成都市の市場監督管理局はこの屋台を調査し、スープの使い回しが事実だったと認定した。「厳しく処分する」としているが、具体的な内容は明らかにされていない。
観光客が集まる繁華街、春熙路で起きた今回の出来事は、中国の屋台グルメの裏側に、今も衛生への不安が残っている現実を浮き彫りにした。
「自分だけは大丈夫」
そう思ってしまう人の心理が、いかに危ういかを突きつける出来事でもあった。
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