アメリカのトランプ大統領は12月17日夜、ホワイトハウスで全米向けの演説を行い、就任から約11か月間に取り組んできた主要政策を振り返るとともに、来年発表予定の経済、医療、住宅などの新政策についても予告した。演説の中でトランプ氏は、現政権の状況をバイデン政権時代と何度も比較しながら、「自分が引き継いだのは混乱の極みだった」と述べ、現状の立て直しが進んでいることを強調した。
インフレ沈静化と賃金上昇「生活コストは下がっている」
トランプ大統領はまず、インフレと生活費の問題に焦点を当てた。就任当時、インフレ率は数年来の高水準にあり、物価上昇によって多くの家庭が生活費のやりくりに苦労していたと指摘した。最近では、ガソリン代、航空券、ホテル、食料品などの価格が下落しており、感謝祭の七面鳥や卵の価格も下がったと述べた。また、賃金と雇用についても触れ、賃金上昇率がインフレ率を上回り、就任以降に増加した雇用の「すべてが民間部門で生まれた雇用だ」と語った。
不法移民ゼロを強調 治安回復と「覚醒派」抑制をアピール
移民と治安の分野では、南部国境での管理を強化し、過去7か月間において不法移民の入国を許していないと説明した。また、犯罪者の送還や都市の治安回復に取り組み、海上ルートを通じた麻薬密輸の規模が大幅に減少したことを報告した。教育問題については、キャンパス内での「覚醒派(ウォーク)過激分子」の影響力を抑えたと述べ、教育の管理権を各州に戻すべきだと主張した。
関税と減税で「18兆ドル投資」 ビッグ&ビューティフル法案
経済政策についてトランプ氏は、関税政策が国内投資を呼び込み、製造業の回帰を促したと強調した。アメリカ国内に工場を建設すれば関税を免除できる仕組みを導入し、「18兆ドル(約2700兆円)の投資をアメリカにもたらした」と述べた。さらに、議会が可決した「ビッグ&ビューティフル法案(大きく美しい法案)」に言及し、チップ所得、残業手当、社会保障税などに対する減税措置を盛り込んだ結果、多くの家庭が年間1.1~2万ドル(約165~300万円)を節約できるようになったと説明した。
また、トランプ氏は145万人を超える軍人がクリスマス前に特別な「戦士ボーナス」として1人あたり1776ドル(約26万6千円)を受け取る見通しであると発表した。
医療とエネルギー政策の分野では、処方薬の価格引き下げを推進し、「最恵国方式」に基づいて薬価を引き下げる方針を示した。その関連情報を来年1月から順次公表していくと述べた。同時に、現行の「オバマケア(医療保険制度改革法)」を批判し、資金を「国民の手に直接渡し」、人々が自ら保険を購入できる仕組みに改めるべきだと主張した。
エネルギー政策に関しては、国家エネルギー緊急事態を宣言したと明らかにし、新たな発電施設の建設、電気料金やエネルギーコストの引き下げを進めていくと述べた。
住宅問題については、高騰する住宅価格や住宅ローンの負担が国境の移民問題と関係しているとの見方を示し、典型的な新規住宅ローンの年間コストを3千ドル(約45万円)引き下げたと述べた。今後、より抜本的な住宅改革計画を発表する方針であるとも明らかにし、「近く」次期連邦準備制度理事会(FRB)議長の人選を発表するとした。あわせて、低金利政策を通じ住宅ローン支出のさらなる抑制を目指す考えを示した。
演説の締めくくりでトランプ氏は、「国境はすでに安全であり、インフレはすでに止まり、賃金は上昇し、物価は下落している」と語り、アメリカはより力強い経済成長を迎えるだろうと今後を展望した。最後に、国民にクリスマスと新年の祝福の言葉を贈った。
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