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中共 二重国籍者の精査拡大 戸籍抹消や入国拒否も

2025/12/19
更新: 2025/12/19

最近、カナダなどから中国に帰国した華人の間で、中国の出入国管理当局による二重国籍をめぐる審査を受けたとの報告が相次いでいる。外国籍を取得しながら中国の戸籍を保持している人に対し、現場で戸籍抹消の手続きが開始されるケースも出ている。専門家は、中国共産党(中共)のこうした動きの背景には、少なくとも五つの狙いがあると分析している。

12月3日、中国メディアは、全国の主要な入国・出国管理拠点で、二重国籍者を対象とした精査が始まったと伝えた。これまでのように戸籍の抹消を促す指導にとどまる対応とは異なり、今回は猶予期間が設けられず、二重国籍者は出入国時にシステム上の警告が直ちに作動するという。

例えば、河北省衡水の拠点では、カナダ国籍を取得した中国系男性が到着直後に当局に呼び止められ、入国は認められなかった。

また、オーストラリアに長年居住する中国系男性のサムさんは、今年9月、杭州から出国しようとした際、出入国管理当局に足止めされた。故郷に戻って中国の戸籍を抹消しなければ出国できないと告げ、航空券を無効とし、滞留中は1日500元の罰金を科したという。同氏は、空港で同様の理由で足止めされる他の中国系旅客も目にしたと語った。

カナダ籍の中国系作家、盛雪氏は、中共が二重国籍者の精査を進める背景には、少なくとも五つの要因があると指摘する。

盛氏は、第一の理由として、「二重国籍者は、二つの価値観や法制度の影響を受け、居住国に対する忠誠の問題も生じ得る存在であり、中共の視点では信頼性に欠けると見なしている」と述べた。

第二の理由としては、政権が内外で圧力に直面する中、人口に対する統制を一層強化する必要性があると指摘する。第三の理由は、デジタル監視体制の誇示だという。

盛氏は、「中共は、AIなどを用いた管理・監視技術を、統治の実効性として内外に示す必要がある。二重国籍者の精査は、個人レベルまで統制が及ぶことを示すシグナルでもある」と分析する。

第四の理由として、対外デカップリングと、国内統制の強化を挙げる。

「これらの人は中共の恩恵を受けつつ、自由主義国の保護の下にあり、いざとなれば中国を離れることができる。中共の考え方では、こうした状況は認められない。今回の精査は、将来の非常時や動員体制を見据えた人口管理の一環でもある」と述べた。

第五の理由として、身分、戸籍、家族、財産を通じて、人々を体制に結び付ける狙いがあるとする。この政策は、二重国籍を持つとされる党幹部にとっても影響が及ぶ可能性がある。

一方、中国民主党創設メンバーの朱虞夫氏は、党幹部に対しては別の対応が取られるとの見方を示した。

朱氏は、「なぜなら、多くの高級官僚の中には、国家指導部に準じる幹部や中央省庁トップ級の高官であっても、密かに二重国籍を取得している者が少なくないからだ。

中共の法制度は、きわめて恣意性が強く、あらゆる運用が自らの政権維持を最優先に行われている。こうした動きを見る限り、中共は国を閉ざす方向に舵を切ろうとしていると考えられる。そして中国では、文化大革命2.0が始まるだろう」と語った。

元北京の弁護士である賴建平氏は、今回の動きには経済的な動機もあると指摘する。

賴氏は、「中共は現在、財政が逼迫しており、年金財源も深刻に不足している。年金を受給すべき人の数は増え続けている。こうした状況の中で、中共は、一部の二重国籍者が国内で受け取っている年金やその他の社会保障給付を打ち切る、あるいは削減しようとしている。率直に言えば、それは彼らの財産を奪うことに等しい」と述べた。

精査は空港に限られていない。瀋陽に長年居住し、すでにカナダ国籍を取得している女性も、警察から戸籍抹消を求められ、社会保険や各種給付の見直しが行われると通告されたという。

賴氏は、この動きが中共が戦争に備えていることの関係性を指摘した。

「中共が台湾海峡や南シナ海で侵略戦争を始めれば、国際社会の激しい反発を招く。二重国籍者はどこに忠誠心を向けるのかが問題になる。中共は、そうした人々に立場の選択を迫っている」と述べた。

中国メディアによると、精査開始後、全国の主要な空港や国境施設で足止めした人数は前月比で約3倍に増加した。主要空港では延べ8300人余りの国籍を精査し、このうち1200人の入国を拒否し、3700人に60日以内の戸籍抹消を求めたという。上海と深センだけでも、1千件を超える戸籍登録が抹消された。