「高市早苗をどう懲らしめるか?」
そんな問いかけが、中国のネット空間に投げ込まれた。
きっかけは、高市首相の台湾をめぐる発言だった。
それに中国当局と、一部の愛国派ネット民が一斉に反応した。
投稿者の狙いは単純だった。
反日感情をあおり、罵倒や過激な言葉を集めること。
ところが、コメント欄は思わぬ方向へ転がり始める。
そこにあったのは、怒号でも暴力的な言葉でもなかった。
代わりに並び始めたのは、妙に静かで、やけに具体的な「提案」だった。
中国ネットユーザーが挙げた「制裁」は、暴力ではなかった。
彼らが思いついた「憎き敵に対する最も残酷な制裁」とは、「中国の一般庶民として生活させる」、という発想だった。
我が国の官僚の財産も公開し、震え上がらせる。
恒大グループの不動産を買わせる。
国産の電気自動車を買わせる。
毎日12時間働かせ、月の休みは2日だけ。
給料は遅れがちで、請求すれば「悪意ある賃金請求」として処分。
ある日、家は予告なく取り壊される。
理由を問えば、「誰がやったか分からない。アルバイトの仕業だ」と説明される。
月200元(約4500円)ほどの年金を渡される一方で、400元(約9000円)の医療保険料と年金保険料を請求される。
銀行口座は引き出し制限、電動バイクは没収、戸籍登録は不可。

どれも奇抜な空想ではない。
中国のネットユーザー自身が、見てきた、聞いてきた、あるいは体験してきた「日常」を並べただけだ。
興味深いのは、これらの案が示し合わせたわけでもないのに、驚くほど似通っていたことだ。
罵倒の代わりに生活を語り、怒りの代わりに制度を並べる。
海外のネットユーザーは、この光景を「苦難をブラックユーモアに変えた集団的な皮肉だ」と評した。
自分たちの現実を磨き上げ、そのまま相手に投げ返している、というわけだ。
結論は、驚くほど単純だ。
中国で暮らさせ、中国の現実を身をもって味わわせろ――それだけでいい。

別のコメントでは「見れば見るほど現実的だ。まさに覚醒の道であり、その道のりは決して簡単ではない」と受け止める声も見られる。(スクリーンショット)
ここで描かれているのは、高市首相個人への攻撃ではない。
中国のネットユーザーが突きつけたのは、自分たちが日々生きている社会そのものだった。
このやり取りは、中国のネット上で広がっている「衝塔(チョンター:塔に突っ込む=タブーに触れる)」と呼ばれる独特の皮肉文化の一例だ。
怒鳴らず、批判もせず、ただ日常を並べることで現実を突きつける。
だからこそ、読む者はぞっとする。
そこに描かれているのは空想ではなく、実際に起きている「現実」そのものだからだ。
提示されているのは、特別な罰ではない。
中国での一般庶民のごく普通の暮らしとして受け止められている現実である。
なお、ここで言う「一般庶民」は、中国で、人気漫画『ONE PIECE』に登場する特権階級になぞらえて「天竜人」とも呼ばれる特権階級とは、まったく別の世界に生きる人々を指している。
つまり、中国で一般庶民として生きること自体が、「憎き敵に対する最も残酷な制裁」として語られてしまう社会なのである。
そして、だからこそ、いまの中国では子どもが生まれない。
「我が子を愛しているから、こんな地獄に来させたくない」
かつて誰かがそう語っていた。その言葉が、今も忘れられない。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。