中国で、台湾の国旗「青天白日満地紅」をあしらったTシャツ470枚が当局の介入により押収されていることが、本紙の取材で分かった。違法性は示されず、正式な押収書類も出ないまま、「問題がある」として流通が止められている。
Tシャツの制作を進めていたのは、欧榮貴(おう・えいき)氏である。欧氏は中国南部で街頭での抗議活動に関わり、過去に拘束や服役を経験した後、現在は海外に拠点を移している。本紙の取材に対し、台湾の国旗をあしらったTシャツは、十数年前から制作され、主に個人間のやり取りを通じて静かに広まってきたことを明らかにした。
当時から当局が好ましく思っていなかったのは確かだが、一部の着用者が一時的に拘束される程度で、刑事事件に発展するケースはほとんどなかったという。欧氏は、台湾の国旗をあしらったTシャツを着ることは、デモなどに参加せずに自分の考えを示す、目立たない方法だったと説明した。。
今回のトラブルは、2025年後半に新たな制作を進めた際に起きた。布地を用意し縫製工場に依頼したところ、試作品完成後に「政治的に敏感だ」として製造を拒否された。別の工場で完成させ、印刷工程に回した直後、協力者が警察に呼び出され、その後、工業団地の管理側が介入。470枚のTシャツは倉庫に封鎖された。
管理側は、どの法律に触れるのかは説明せず、「問題のある品だ」とのみ説明。「海外へ直接送るなら対応する」「本人が来なければ処分の可能性がある」と通告した一方、代理人による回収は認めなかった。
管理側の担当者とのやり取りの中で、相手が「上から言われている」「指示を受けている」と受け取れる言い回しを繰り返したことから、欧氏は、背後で治安当局の意向が働いているとみている。
欧氏はこれまで、制作や発送を慎重に行い、関係者に責任が及ばないよう配慮してきたという。「当局も誰が関わっているかは把握していたはずだが、大きく動けば注目を集める。だから長年、黙認に近い形だったのだと思う」と話す。
近年、中国では台湾を象徴する旗や色、図案への管理が目立って強まっている。今回の押収も、逮捕や公表といった強硬策ではなく、物流や管理権限を使って静かに止める手法が取られた点が特徴だ。
「ダメだとは言わない。理由も言わない。でも通さない」。欧氏は現場の空気をそう表現する。十数年続いてきた民間の行為が、説明のないまま突然止められる。その曖昧で息苦しい空気こそが、いまの中国社会の現実を映している。
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