米政府は1月13日、エヌビディア(NVIDIA)の高性能AI半導体H200について、中国向け輸出を条件付きで正式に承認した。対中先端半導体輸出政策は転換点を迎え、ワシントン政界では直ちに激しい議論が起きている。
米商務省産業安全保障局(BIS)が連邦公報に掲載した最終規則によると、H200および同等クラスの製品について、中国およびマカオ向けの輸出審査は、従来の「原則不承認」から「案件ごとの審査」に変更される。ただし米政府は、これは全面的な解禁ではなく、厳格な管理下での限定的な承認であると強調している。
新規則では、エヌビディアの最先端製品に次ぐ性能を持つH200を輸出する際、第三者によるテストと審査を受け、実際の計算能力が米側の設定する上限を超えていないことを確認する必要がある。また、中国とマカオ向けに出荷されるH200の累計計算能力は、同期間にアメリカ市場へ出荷される総量の50%を超えてはならない。
さらに、エヌビディアは、米国内市場に十分な供給を確保し、中国向け輸出がアメリカ顧客への納入に影響しないことを証明する義務を負う。対中輸出のために、アメリカ向けの先端製造能力を転用することも禁じられる。
用途と安全管理面では、新たに複数の順守要件が正式規則に盛り込まれた。中国の購入者は、無断の遠隔アクセスを防ぐ十分なセキュリティ管理体制を有していることを証明し、当該チップを軍事用途やその他の機微な分野に使用しないことを明確に誓約しなければならない。
クラウドサービスについても制限が設けられた。H200がIaaS(インフラ提供型クラウド)として提供される場合、輸出業者は想定される遠隔利用者を申告し、AIモデルの重み(AIモデルの学習成果)や学習成果が規制対象に移転しないよう、技術的・管理的措置を講じる必要がある。
中国の需要急増 在庫を大幅に上回る
ロイターによると、中国のハイテク企業によるH200の発注は200万個を超え、エヌビディアの現在の在庫約70万個を大きく上回っている。
先週ラスベガスで開かれた世界最大級の先端技術見本市CESで、エヌビディアのフアンCEOは、同社がH200の生産能力を拡大しており、中国および世界市場からの強い需要に対応していると述べた。この需要の高まりは、クラウドデータセンターにおけるH200の計算能力のレンタル価格を押し上げているという。
国家安全を巡る論争
一方、国家安全保障の分野では警戒感が強い。バイデン政権下で国家安全保障会議の技術・国家安全担当ディレクターを務めたサイフ・カーン氏は、新規則により中国のAI全体の計算能力が大幅に引き上げられると警告した。
約200万個のH200が中国に流入すれば、その計算能力は、米最先端AI企業1社の保有計算能力に匹敵すると指摘。さらに、「顧客確認(本人確認)」や用途制限の履行、中国のクラウド事業者による規制回避の防止など、実務面での執行は極めて困難になると述べた。
これに対し、トランプ政権内部では、先進半導体の輸出を認めることで、中国国内の競合企業、特に厳しい制裁下にあるファーウェイなどの台頭を抑え、エヌビディアやAMDとの技術格差縮小を防げるとの見方が示されている。ホワイトハウスのAI政策責任者であるデービッド・サックス氏もこの立場を支持している。
トランプ氏は先月、関連販売を認める方針を示すとともに、エヌビディアに対し売上の25%を米政府に納めるよう求めた。大統領は、国家安全と技術的優位を「継続的に強固にする」ことを前提に、輸出を認めると強調している。
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