ハドソン研究所の研究員ジネブ・リブア氏は、中国共産党(中共)政権が過去20年にわたりイラン政権やその代理勢力、湾岸諸国と関係を深め、投資と連携を進めながら「新たな世界秩序」戦略の拠点を中東に築いてきたが、その構図は「壮絶な怒り」作戦によって終わりを迎えたと指摘した。
リブア氏は3月4日、エポックタイムズの動画番組「American Thought Leaders」に出演し、米国が関与する意味について「米国の視点から見れば、関与とは単に同盟国を支援することではなく、長年にわたり中国の『チェス盤』になってきた中東の構図そのものを作り替えることだ」と述べた。
リブア氏は、中国が台頭するには米国の影響力を弱める必要があり「中東ではイランがそのための道具だった」と説明した。
リブア氏によれば、中国はイランの軍事力強化を支援し、その見返りとして多くの利益を得てきた。しかし、米国がイラン政権指導部への攻撃に関与したことで、その戦略計算は逆転しつつあるという。リブア氏は「この再調整は中国に大きな代償を伴う」と述べた。
中国がイランを支援した方法
リブア氏は、中国がイランの兵器体系と地域での影響力拡大に多額の資源を投入してきた一方、イラン政権が急速に崩れつつあることは世界各国に波及効果をもたらし、中国と交渉している国々に対し「中国共産党政府が本当に優位に立っているのか」を再考させる可能性があると指摘した。
中東における中国の影響を研究するリブア氏は、米軍による攻撃開始直後に「イラン問題の核心は中国にある(The Iran Question Is All About China)」と題する論文を発表し、イランを「インド太平洋世紀の序章」と位置付けた。
リブア氏によれば、中国はイランの軍事装備の多くの構成要素を調達するのを支援してきた。特にミサイル開発に必要な化学物質の供給が重要だった。イランの国内産業は石油化学に偏っており、これらの特殊化学物質を生産する能力や技術が不足しているためである。
さらに中国は、いわゆる「デジタル権威主義」をイランに輸出し、大規模監視技術を提供してきた。今年初め、イラン政権が数千人の抗議者を殺害し、出来事の報道を検閲しようとした際、この監視技術が注目された。また、イランの通信インフラは中国企業のファーウェイとZTEに大きく依存している。
しかしリブア氏は、こうした中国の支援は2月28日に実施された政権への協調攻撃の前ではほとんど意味を持たなかったと述べた。
リブア氏は「世界はその状況を見ている。アフリカ諸国も見ている」と指摘した。アフリカや東南アジアを含む多くの政権が国内不安定に直面しており、権力維持に必死な状況にあるという。
中国企業はこうした政権に対し、抑圧のための技術を販売し、中国と取引する利点を権威主義体制に示してきた。しかしリブア氏は「その多くは今まさに消えつつある」と述べた。
リブア氏は、ベネズエラやイランが中国から購入したミサイル探知システムが米軍の作戦を阻止できなかったことを例に挙げ「実際には多くの中国技術がそれほど優れていないことが証明された」と指摘した。そして、米国と競争する存在として自らを描こうとしている中国にとって、それは大きな屈辱だと述べた。
リブア氏は、各国が今後も中国と取引する可能性は高いとしつつも、「一帯一路」のように中共政府に極めて有利な条件を押し付けるほどの交渉優位は失われるとの見方を示した。
またリブア氏は、イラン情勢の急展開が中国国内でも体制にとって不都合な状況を生む可能性があると指摘した。
リブア氏は、中国政府が「米国は衰退している」「東が台頭し、西側は完全に衰退して崩壊している」「米国は何もできない」と14億人の国民に宣伝してきたと説明「しかし米国はそれが誤りであることを証明した」と述べた。
台湾侵攻におけるイランの役割
リブア氏によれば、中国共産党の習近平が台湾侵攻を計画する場合、イランは重要な役割を担う。
リブア氏は「制裁回避という点で、イランは極めて重要な存在だ」と述べた。中国はロシアがウクライナ戦争開始後に西側制裁で締め付けられるのを見て、物々交換協定などを通じてイランと並行的な経済システムを構築し、西側金融網を回避する仕組みを整備してきたという。
リブア氏は、中国当局が「グローバル・サウスの台頭」や米国を排除した新しい世界秩序を強調する演説の中で、この仕組みを誇示してきたと指摘した。イランで政権交代が起きれば、この選択肢は消滅する可能性がある。
またリブア氏は、紅海でのイランの代理勢力による戦闘が長期化すれば、同盟国が米軍の能力を疑う状況を生みかねなかったと述べた。
フーシ派武装勢力はミサイルやドローンで商船を攻撃し、世界の海上貿易の約12%が通過する航路を混乱させた。この事態を受け、米軍は紅海で航行の自由を確保する任務に関与していたが、その対応は欧州諸国や湾岸諸国、米国に大きな負担をもたらしていた。
リブア氏は当時の状況について、米国は十分な成果を上げられず、行き詰まっていたと説明した。そして、中国が台湾侵攻を行う場合には、こうした状況が中国にとって有利に働く可能性があると指摘した。中国は米国の注意をそらし、同盟国に対して米国が安全保障で頼れる存在なのか疑念を抱かせたいからである。
リブア氏によれば、フーシ派はイランの代理勢力であるだけでなく、中国とも関係している。リブア氏の調査では、フーシ派の兵器の約35%が中国製だという。
さらにリブア氏は、ヒズボラのポケベル爆発事件の後、イランが主要な同盟勢力を救う能力を欠いていることが明らかになり、ヒズボラやフーシ派などの代理勢力の間で論争が起きたと指摘し「その時、中国が介入したと考えられる」と述べた。
弱体化するイスラム体制
リブア氏は、イランのイスラム体制は昨年のイスラエルとの戦争の時点ですでに弱体化しており、現在は解体されつつあると指摘した。
リブア氏によれば、イラン軍の指揮系統は完全に崩壊し、状況を把握できていない状態だという。イラン指導部は体制を完全に掌握していると考えていたが、再編成の過程でむしろ脆弱性が高まり、紛争開始から最初の100時間で主要司令官が殺害された。
またイランは、米国の攻撃に反対していたトルコを含む近隣諸国に対しても攻撃を行った。リブア氏はこれを、米国の同盟国から停戦要求を引き出そうとする「絶望的な試み」だと説明した。
しかしリブア氏は「実際には世界がイランの弱体化を見ている」と述べた。
リブア氏は、この状況は昨年のイスラエルとの12日間戦争の後から明らかになっていたと指摘し「戦争に敗れれば代償が伴う」と述べた。
リブア氏によれば、これまでイランの最高指導者アリ・ハメネイ師は米国との交渉を引き延ばし、嘲笑することさえできたが、現在は体制支持派・反対派の双方で政権への信頼が低下している。
リブア氏は、イスラム共和国は単なる神政国家や独裁体制ではなく、革命体制として支持者を育成し続ける必要があると説明した。そのため中東やアフリカ、さらに欧州でも宗教学校を拡大し、次世代の支持者や戦闘員を養成してきたという。
しかしリブア氏は、こうした体制維持の仕組みの多くが崩壊したと指摘した。またイラン政府は水資源管理など基本的な行政能力でも深刻な問題を抱えているという。
リブア氏は、市民の視点から見ればイスラム共和国は何も提供していないと述べ、その結果として体制に失望した若者の抗議活動が増えていると説明した。
さらにリブア氏は、イラン国民が周辺国の近代化を目の当たりにしていることも体制への不満を高めていると述べた。アゼルバイジャンが地域大国として台頭し、サウジアラビアやアラブ首長国連邦など湾岸諸国が若者への投資や近代化政策を進めていることを、イラン国民は比較して見ているという。
米国の構想と中東再編
一方でリブア氏は、現在の作戦におけるトランプ大統領の構想は、イランという「永遠の脅威」を管理し続ける従来の政策でも、外部から民主主義体制を移植するような政権交代でもないと指摘した。
リブア氏によれば、今回の構想は米国と自由世界の利益に沿った「世界規模の再編」である。
リブア氏は、イラン市場が開放され、友好的な政権が誕生すれば欧州企業にとって巨大な機会になると述べた。ドイツ産業は新たな顧客を獲得し、地域全体にも大きな経済機会が生まれる可能性があるという。
リブア氏は、この変化が新たな経済回廊を生み、中国の「一帯一路」構想を解体する結果につながる可能性があると指摘した。


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