緊迫する円安160円攻防戦 中東有事の影で加速する「日本売り」の正体

2026/03/17
更新: 2026/03/17

「断固たる措置を含めて、そういう姿勢でいる」――。

16日の参院予算委員会。片山さつき財務相の言葉には、かつてない緊迫感が漂っていた。1ドル=159円台という、2024年の介入水準を再び突き抜ける円安。市場は今、単なる通貨の変動を超えた「日本経済の地殻変動」を注視している。

なぜ今、これほどまでに円が売られ続けるのか。その背景には、一過性の地政学リスクだけでは説明できない、多層的な因果が潜んでいる。

表面化する火種 中東有事と「有事のドル買い」

通常、国際情勢が不安定になれば「安全資産としての円」が買われるのが常識だった。しかし、現在の中東情勢緊迫化は、逆に円を追い詰めている。

日本はエネルギーの約9割を輸入に頼る資源弱国だ。原油価格の高騰は、輸入支払いのための「円売り・ドル買い」を強制的に発生させる。かつての「有事の円」は、今やエネルギー安保の脆さを露呈する「弱気の円」へと変貌している。

今週19日、運命の「ダブル決定会合」

市場が固唾を飲んで見守るのが、3月19日(木)という一日だ。

【午前4時(米FOMC):米国の決断】 

まず日本時間の夜明け前、米連邦準備制度理事会(FRB)が金利方針を発表する。中東情勢の影響でガソリン代などの物価が再び上がっているため、インフレ再燃を警戒し、米国は「高い金利を維持する」という、円安を加速させかねない厳しい姿勢を示すとの見方が強い。

しかし、エネルギー価格の高騰が逆に米景気を冷やすとの懸念もあり、パウエル議長が「景気への配慮」をにじませれば、相場の流れが急転する可能性も秘めている。

【正午ごろ(日銀会合):日本銀行の苦悩】

一方の日銀は、利上げを急げば国内景気を冷やすというジレンマに陥っており、慎重姿勢を崩しにくい。

この「日米の金利差」の開きこそが、投機筋に絶好の「円売り」の口実を与えている。

構造的な出血:エネルギーの陰に隠れた「4つの真実」

だが、金利差や原油高はあくまで表面的な理由に過ぎない。より深刻なのは、日本の稼ぎ方そのものが変化してしまったことだ。

デジタル赤字

 Google、Amazon、Netflix。私たちが便利さを享受するたび、24時間365日、目に見えない形で莫大な「円」が米国へ流出している。

新NISAの皮肉

将来の備えとして日本人が選んでいるのは、日本株ではなく米国株や全世界株だ。個人の家計マネーが、組織的に外貨へとシフトし始めている。

戻らない利益

日本企業は今や「海外で作って海外で売る」のが主流だ。たとえ企業が最高益を上げても、そのドルは日本に還流(円買い)されず、海外での投資に消えていく。

外交の足元

同日予定される日米首脳会談を前に、日本は米国の理解なしに大規模な介入には踏み切りにくい。投機筋はその「外交的な縛り」を冷徹に見透かしている。

160円という「防波堤」の先にあるもの

160円という数字は、単なる通過点ではない。ここを突破されることは、日本の輸入物価の限界点を超え、国民生活に直接的な打撃を与えることを意味する。

今週の政策決定、そして片山財務相が振るう「介入」という宝剣は、果たしてこの構造的な円安を食い止められるのか。私たちは今、通貨の価値という鏡を通して、日本という国の「自立の形」を問われている。

エポックタイムズの速報記者。東京を拠点に活動。政治、経済、社会を担当。