真相に触れかけた、その瞬間だった。
カンボジアの路上で衰弱した状態で見つかった中国人の女性インフルエンサーが、帰国後に当時の体験を語り始めた直後、配信が突然遮断された。さらに翌日にはアカウントも凍結され、不自然な展開に注目が集まっている。
問題の女性は、中国の動画アプリ 抖音(中国版ティックトック)で活動していた配信者Umi(本名・吳甄楨)。福建省出身で、美容系コンテンツを中心に発信し、約4万1千人のフォロワーを持っていた。
2025年末、彼女はカンボジアの路上で発見された。髪は乱れ、顔は汚れ、足には骨折とみられるけがを負っていて、配信時の姿とは大きくかけ離れていた。
帰国後は活動を再開したものの、現地で何があったのかについて長く語らなかった。
しかし4月2日の配信で、ついに口を開く。
「高収入の仕事に誘われて海外に行った」
「到着後にパスポートを取り上げられ、行動を制限された」
さらに、パソコンを使う仕事に関わらされたとし、「だまされた」と語ったが、詳細については言葉を濁した。
配信は多くの視聴者が見守る中、約30分で突然終了し、画面には「配信が終了しました」と表示し、話はそこで途切れた。
そして翌日。本人のアカウントは全面的に凍結された。視聴者が最も知りたかった「その先」は、語られないままとなった。
中国では近年、「高収入の仕事がある」とだまして若者を東南アジアに渡航させ、現地で監禁し、詐欺に加担させる事件が相次いでいる。パスポートを取り上げ、逃げられない状態に置くケースも多い。
国連は、少なくとも30万人が人身売買によって東南アジアに送り込まれ、オンライン詐欺に従事させられていると推計している。拠点では暴力や監禁を行うなど、組織的な犯罪が広がっていると指摘している。被害者の中には中国人だけでなく、台湾や東南アジア各国の若者、さらに日本人を含むケースも報告されている。
こうした背景を踏まえると、今回語られかけた内容の重さは小さくない。
なぜ、あのタイミングだったのか。何を語ろうとしていたのか。
配信の遮断とアカウント凍結を受け、彼女の発言は当局の検閲に触れた、すなわち当局にとって不都合な内容だったとの見方が広がっている。華人圏では、臓器売買や詐欺拠点の背後に中国共産党があるのではと以前から広く共有されており、今回の検閲がその見方を裏付けたと受け止める声も少なくない。
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