アメリカがイランの港への海上封鎖を発表したことで、世界のエネルギー市場は大きく揺れ、原油価格は一時、1バレル100ドルを上回った。専門家は、この措置がイラン経済に直接打撃を与えるだけでなく、中国などの主要輸入国にも影響を及ぼすと指摘している。一方で、その影響が長引くかどうかは、供給網の調整力や今後の地政学的な展開に左右されるとの見方も出ている。
協議が決裂したあと、米側は圧力を一段と強めた。米中央軍は、イランの港に出入りするすべての船舶を対象に封鎖を実施すると発表した。一方で、ホルムズ海峡を通過する船舶の通航権には踏み込まず、海峡全体を封鎖するのではなく、イランの輸出だけを封じる形を取った。圧力の焦点をイランの輸出に絞りつつ、世界の海運への打撃を抑える狙いがある。
この措置の核心は、衝突を全面的な航路封鎖ではなく、経済的な締め付けにとどめる点にある。ホルムズ海峡は世界の石油輸送のおよそ2割を担う要衝であり、海峡を封鎖すれば世界経済への影響は一段と大きくなる。これに対し、イランの輸出に狙いを絞れば、イランの財政基盤を弱めながら、市場の混乱をある程度抑える余地がある。
供給面では、イラン産原油の輸出停滞が市場を強く意識させている。AP通信によると、封鎖発表を受けてWTIは8%上昇して104.24ドル、北海ブレントは7%上昇して102.29ドルとなった。イラン産原油の供給が短期的に滞るとの見方が、原油価格が100ドルを突破する直接の要因となった。
さらに、今回の措置はエネルギー市場の力学にも変化をもたらしている。これまでは、ホルムズ海峡の通航リスクそのものが市場を揺らす主要因だったが、今回は米側がイランの輸出港を直接封じる形を取った。航路そのものではなく、供給の出口を押さえることで市場の主導権を握ろうとする動きといえる。
時事評論家のジェイソン氏は、イランがこれまで、通航船舶への課金や、ドルではなく人民元や暗号資産による決済を通じて、国際市場に影響力を及ぼそうとしてきたと指摘した。そのうえで、こうした動きはドルの国際的な地位を揺さぶる試みでもあり、同時に海峡を通るタンカーの数を制限することで、多くの船舶を湾岸地域に滞留させ、国際貿易や物流の流れを大きく乱してきたと分析した。
需要面では、影響はまず中東産原油への依存度が高いアジアに及ぶとみられている。ロイターによると、封鎖下でも中国、インド、東南アジア向けの一部タンカー航行は続いているが、物流の不透明感は強く、供給先の切り替えや調達コストの上昇が課題となっている。
ジェイソン氏はまた、多くのアジアの航空会社が運航計画の見直しや減便を迫られ、肥料など石油化学関連産業にも影響が広がっていると指摘した。さらに、イランは機雷除去や安全確保を名目に、海峡の通航管理の主導権を握り、国際貿易のルールを握ろうとしているとの見方を示した。
ただ、影響がどこまで広がるかは、封鎖が続く期間に大きく左右される。ロイターによると、シタデルのケン・グリフィン氏は、ホルムズ海峡の混乱が半年から1年続けば、世界経済は景気後退に向かうおそれがあるとみている。一方で、UCLAの俞偉雄氏は、今回の危機は1970年代の石油危機というより、1990年から91年の湾岸戦争時に近く、戦闘終結後には供給網と原油価格が比較的早く戦前の通常の状態に戻る可能性があると指摘した。
専門家は、今回の局面は現時点では短期的な供給ショックの性格が強く、長期的な供給断絶とまではないと見ている。実際、15日には追加協議への期待も出て、原油価格は100ドルを下回る場面があった。衝突が沈静化し、代替供給が進めば、価格と物流が比較的早く落ち着く可能性もある。
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