米国 中国の2銀行への制裁を警告も実名公表せず その背景にある考慮

2026/04/17
更新: 2026/04/17

米財務省は複数の銀行に警告書簡を送り、イランの活動を引き続き支援する外国金融機関に対して制裁を科す方針を示した。ベッセント財務長官は、すでに中国の2つの銀行に警告書簡を送付したことを認め、それらの銀行がイランと取引関係を持っている場合、米国の二次制裁の対象になると明らかにした。

イラン戦争が第7週に入る中、米国はイランに対する海上封鎖を開始した。米財務省は複数の銀行に警告書簡を送り、イランの活動を引き続き支援する外国金融機関に対して二次制裁を実施する方針を示した。

スコット・ベッセント米財務長官は4月15日にホワイトハウスで開いた記者会見で「中国の2つの銀行がすでに米財務省から書簡を受け取っている」と確認した。

ベッセント長官は、どの2行かは明らかにしないとしたうえで、イランの資金がそれらの口座を通過していることを米側が証明できれば、二次制裁を発動する用意があると伝えたと述べた。

学者は、米側が中国の2銀行に言及しながら名称を公表しないことには、3つの意味合いがある可能性があるとみている。

台湾・南華大学国際事務・企業学系の孫国祥専任教授は、第1に、米側は的確に圧力をかけつつも、出口を完全には閉ざしていないと指摘した。第2に、名称を明かさないことで、中国、香港、アラブ首長国連邦、オマーンなどの関連銀行の間で「自分たちのことではないか」「顧客や取引先が関係しているのではないか」との疑念が広がり、萎縮効果が拡大するとの見方を示した。第3に、執行の柔軟性を米側の手元に残す狙いがあり、相手が協力すれば直ちに措置を強化せずに済み、協力しなければ後に公表して処分することで、政治的にも市場的にもより大きな効果を得られると述べた。

同日、米財務省は交流サイトにも投稿し「経済の怒り(Economic Fury)」作戦を積極的に推進し、イランに対する最大限の圧力を維持していると表明した。声明では、「すべての金融機関は注意すべきであり、財務省は利用可能なあらゆる手段と権限を行使しており、イランの活動を引き続き支援する外国金融機関に対して二次制裁を科す準備を進めている」とした。

孫氏は、米側がイランの資金の流れ、原油代金の決済、影の船団、オフショアのペーパーカンパニーと中国系金融機関を一つの線で結び付ければ、対象は2行にとどまらず、取引網、保険、海運、決済、貿易金融へと連鎖的に拡大する可能性があると述べた。

そのうえで、中共政府にとって最も厄介なのは個別の処罰ではなく、中国の金融システム全体がドル主導の世界的ネットワークから依然として完全には切り離せない点にあると指摘した。人民元をいくら強調しても、原油保険、債券保険、海運金融、大宗商品の価格決定は、現実にはなおドルに依存しているとした。

中国資本市場のベテランである徐真氏は、現時点の情勢からみて、これは米側が近く予定される「トランプ・習会談」に向けて周到に配置した交渉カードである可能性があるとの見方を示した。

徐氏は、今回の警告には、中国の大小銀行や世界の他の銀行に対する金融面での「核抑止」と警告の意味があり、米国が戦争に勝つ能力と意思を示すものだと述べた。一方で、現在の米国の中東戦略の重点と5月のトランプ・習会談を踏まえれば、米中の金融戦が大きくエスカレートする可能性は高くないと指摘した。実名を挙げずに警告するのは、中国共産党(中共)に退路を残し、5月の会談で米側の交渉材料を増やすためでもあるとした。

評論では、政治的な意図という点で、「名前を公表していない2銀行」の制裁リストを手元に持っているほうが、交渉の場でより具体的な駆け引きの材料に転化しやすいと指摘している。ひとたび名称を公表すれば、制裁は発動せざるを得ず、交渉の余地は失われるという。

孫氏は、中共政府は現在、3重の圧力に同時に直面していると述べた。第1に、米側は各国の金融機関に対し、買い手によるイランとの資金・原油取引を断つよう求めている。第2に、中東情勢の不安定化によって、中国のエネルギー安全保障と「一帯一路」の西方展開が同時に圧力を受けている。第3に、中共政府が公然とイランを支持すれば、米側の二次制裁を早めることになると指摘した。そのうえで、中共はいま、反米姿勢のためにどこまで実際の資金を払う覚悟があるのかという、極めて現実的な問いに答えざるを得なくなっていると述べた。

米側はいま、矢をつがえながらも放ってはいない。それは5月の会談で、この矢の威嚇効果を最大限に発揮させるためであり、これは高いレベルの「金融版チキンゲーム」だとしている。

徐氏は、現在の米・イラン戦争は、実際にはトランプ氏による一石二鳥の戦略だと述べた。第1に、イランに核放棄を迫り、ホルムズ海峡を開放させ、中国の触手を断つこと、第2に、中国共産党のエネルギー安全保障を正確に突き、工業基盤に深刻な打撃を与えることだとした。これが長期化すれば、中国経済はデフレからスタグフレーションへと転じる可能性があり、中共が延命の拠り所としてきた対外貿易上の優位を弱め、国民の生活コストを押し上げ、社会矛盾をさらに激化させるおそれがあると述べた。

中国共産党は長年にわたり、イランやベネズエラなどの安価な原油に依存してきた。これは輸出競争力と工業収益を維持するうえでの、目に見えにくいコスト上の優位性となっていた。こうした高強度のエネルギー戦と金融戦が続けば、中国経済は改革開放以降で最も厳しい試練に直面する恐れがある。