参議院は27日午後、「国家情報会議設置法案」を可決し、情報分野で重要な一歩を踏み出した。情報収集・分析能力の強化を目的に、日本は「国家情報会議」および「国家情報局」を設置する。中共による対日スパイ活動が拡大する中、与野党は同機関の発足後、日本国民と国家利益の保護が実効的に図られることを期待している。
日本衆院が「国家情報」法案を可決、中共が反発
衆議院公式サイトは、先に可決された「国家情報会議設置法案」を公開した。
法案第2条は、日本の「国家情報会議」が所掌する事務として、重要情報の収集・調査および外国によるスパイ活動への対処を規定している。
「国家情報会議」は議長および議員で構成される。内閣総理大臣が議長を務め、会務を統括する。議員は、国務大臣・内閣官房長官・特命担当大臣・国家公安委員会委員長・法務大臣・外務大臣・財務大臣・経済産業大臣・国土交通大臣・防衛大臣が務める。
設置される「国家情報局」の局長は内閣官房長官を補佐し、局内事務を掌管する。
法案可決を受け、高市早苗首相は官邸で記者団に対し、複雑・厳しい国際情勢の下、同法案の成立は情報基盤の整備、情報収集・分析能力の向上、国民の安全確保、国益の擁護に資するものだと強調した。
読売新聞によると、政府内には国家情報局の設置を機に、同盟国・同志国との情報共有と協力関係の強化につなげたいとの期待がある。
中共外交部報道官は5月28日の記者会見で「日本国内や国際的にも多くの論争と疑問を引き起こしている」と述べ、懸念を表明した。また、日本の情報機関が歴史上、軍国主義の推進に加担し対外侵略戦争を発動したと批判し、「慎重な行動」を日本側に要求した。
中国人留学生がスパイに動員される事例が頻発
日本では、中共が留学生をスパイとして利用しているとの報告が相次いでいる。東洋経済は2023年10月、在日中国人留学生によるスパイ活動の実態を報じ、中共当局が学生を取り込む手法として「アメとムチ」を駆使していると指摘した。
中国人留学生会の元幹部は同誌に対し、一部の中国人留学生会は実質的に中共大使館の管轄下に置かれており、指示に逆らうことができないと明かした。この関係者は中共関連の会合に必ず出席し、大使館の招待会に参加して命令を受けることもあったという。
中共大使館が下す命令には、留学生が所属する団体・研究室の組織構成や研究情報、連絡先・住所、接触対象者の情報などの収集が含まれていた。
また、反中共組織に潜入して活動内容や出席者情報を収集すること、中国人留学生との交流を通じて反中共の人物を識別すること、企業でインターンシップ中の留学生に対して企業情報を収集・持ち帰らせることなども命じられていた。
中共大使館・領事館が留学生を操る主な手法は、学費や活動費の提供、帰国時の就職斡旋などである。評価基準は、大使館の指示への対応と「愛国心」の程度とされている。
2021年4月、警視庁は中国人2名を起訴し、電磁的記録の不正作成・提供の疑いをかけた。両名は2016年から2017年にかけて宇宙航空研究開発機構(JAXA)に対して行われた大規模サイバー攻撃への関与が疑われている。
同報道は、在日中国人スパイの数は数万から数十万人に上ると推計している。
また、日本にはいまだ「反スパイ法」が存在せず、関連事案への処罰が軽いとも指摘し、社会全体の危機意識の向上がスパイ対策強化に不可欠だと結んでいる。
中共が日本に秘密警察拠点を設置、スパイ活動が警戒を呼ぶ
BBCは2024年6月、「中共のスパイ活動の脅威は拡大しており、西側諸国はいまだ対応が追いついていない」と題する記事を掲載した。
同記事によると、中共のスパイ機関は2000年代には産業分野にまで活動領域を広げていたが、当時の西側企業は中国市場での利益を損ないかねないとして沈黙を保っていた。
日経ビジネスはかつて、「身近にいる中国工作員、マッサージ師や観光客にも紛れている」と題する記事で警鐘を鳴らし、中共スパイの対日活動の実態や工作員の統制手法を多数の事実に基づき報じている。
参議院の公式サイトには、2025年4月の第217回国会答弁文書が掲載されており、中共がスパイ関連法を利用して日本人および在日中国人を拘束した事案について危機感を持つべきだと訴えている。同文書は、中共が海外に秘密警察拠点を設置している実態にも触れている。
読売新聞の2022年12月の報道によると、外務省はかつて日本国内に中共の秘密警察拠点が2か所存在すると公表した。産経新聞の2024年3月22日付記事によると、警察当局は東京都内で中共の秘密警察拠点とみられる施設に対して家宅捜索を実施した。
東京大学の阿古智子教授は、放置すべきではなく、継続的な監視と警戒が必要だと述べた。
日本世論、法案成立を積極的に評価
「国家情報会議設置法案」の可決について、産経新聞は社説で「国家情報会議」創設法案の今国会での成立を求め、インテリジェンス強化の重要性を指摘している。
社説は、情報は外交・防卫・経済・科学技術と並んで国力を支える重要な柱であるにもかかわらず、戦後の日本政府は十分な対策を講じてこなかったと指摘した。同法案の成立は、国家・国民の保護のために情報能力を強化する上での一歩であり、高市政府による関連施策の展開に期待すると結んでいる。
法案の成立はあくまでも改革の出発点であり、同志国と同水準の体制・環境の整備と、米英などの同盟国・同志国との協力獲得が目指すべき目標だとも強調した。
社論はさらに、高市政府が「外国代理人登記法」の制定を検討していることを踏まえ、スパイ活動を直接取り締まるための「反スパイ法」の整備も必要だと主張した。これは日本に敵対的な外国勢力とその協力者を摘発し、国家・国民を守るために不可欠だとしている。
日本経済新聞は社説で、国家情報業務の運用にあたっては国民のプライバシーを侵害しないよう十分に配慮する必要があるとした上で、国家情報局が実効性と透明性を両立させることを期待した。
「国家情報会議」の今後の組織設計
読売新聞によると、「国家情報会議」の傘下行政機関として設置される「国家情報局」は今夏に発足する見通しで、各省庁の情報を統合する機能を持ち、定員はおよそ700人の規模となる。国家情報局長は内閣情報官から格上げされ、国家安全保障局長と同格の地位に置かれる。
「国家情報会議設置法案」は、国家情報局が外務省・防衛省・公安調査庁などの省庁に対して必要な情報・資料を提供・説明することを義務付けており、政府全体が情報を統合・分析し指揮機能を強化できる体制を整えることを目的としている。
高市首相は今回の法案成立を「改革の第一歩」と位置付けた。情報収集・分析機能の強化に向け、政府は今後、専門家会合を設置し「国家情報戦略」の策定と、スパイ活動に対処するための法整備に取り組む方針だ。
時事通信の報道によると、自民党と日本維新の会の連立合意書には、2027年度末までの「対外情報庁(仮称)」や情報要員養成機関の創設、スパイ防止関連法の「速やかな成立」が盛り込まれている。
今回成立した法案には「外国代理人登記法」は盛り込まれていない。ただ、高市首相は5月26日の国会審議で、外国政府の指示を受けて政策誘導や宣伝活動を行う個人・団体を登録制とする制度の整備が必要だとの考えを示した。
政府関係者によると、「外国代理人登記法」の制定は国内での外国情報活動の抑制につながるもので、未登録のまま活動を行った場合は違法となり、捜査の対象となる可能性があるという。
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