メルセデス・ベンツ 米議会審議中の新法案で米国販売が不能に陥る恐れ

2026/05/31
更新: 2026/05/31

メルセデス・ベンツの筆頭株主は北京市政府が出資管理する自動車メーカー・北汽集団(BAIC)であり、中国人富豪が保有する持ち株と合わせると2者の合計が15%を超え、米国下院で審議中の新法規の適用要件を満たす可能性があり、新型ベンツ車の米国での販売に支障をきたしかねない。

すでに米国下院エネルギー・商業委員会を通過した「2026年自動車現代化法案(H.R.7389 – Motor Vehicle Modernization Act of 2026)」は「外国の敵対的政府が直接または間接的に株式を保有する」自動車メーカーによる米国への輸入・販売・製造を禁止するものだ。中国、ロシア、北朝鮮はいずれも「外国の敵対国」に分類される。

同法案には中国資本系企業向けの適用除外条項が設けられており、2026年1月1日以前から米国で5年以上にわたり乗用車を生産している自動車メーカーは除外の対象となり得る。

ただし、「外国の敵対的政府が直接または間接的に保有する株式が一切ある場合」には適用除外は認められないとも定めている。また、外国の敵対国に「支配」される企業についても規制対象としており、その定義は特定の外国人または複数の外国人の合計持ち株比率が15%に達する場合とされる。

中共関連の持ち株が15%超

ベンツの筆頭株主は北汽集団(持ち株比率9.98%)であり、北京市国有資産監督管理委員会が直接出資管理する国有企業、すなわち中国共産党政府が出資管理する企業であることから、同政府の支配や影響を受ける立場にあり、まさに新法案が規制の対象とする外国の敵対国に「支配」される企業に該当する。

ベンツの第2位の大株主は中国の富豪・李書福(吉利汽車創業者兼董事長)だ。李書福は投資持ち株会社Tenaciou3 Prospect Investmentを通じてベンツ株の9.69%を保有している。中国の産業政治的な環境を考慮すれば、これは中共政府と関連した間接的な影響力として解釈できる余地がある。

北汽集団と李書福の2大株主が合計で保有するMercedes-Benz Group AG株は19.67%に達し、規定の15%を超えている。Mercedes-Benz Group AGはベンツグループの全事業を管轄し、ドイツのフランクフルト証券取引所に銘柄コード「MBG.DE」で上場している。

ベンツが米国に正式工場を設けて30年になる。アラバマ州タスカルーサにあるベンツ工場は1995年に設立されたもので、ドイツ国外における同社初の大型生産拠点だ。同工場の年間生産量の約3分の2は輸出向けで、メルセデス・ベンツUSインターナショナル(MBUSI)を米国最大の自動車輸出企業の一つに押し上げている。1997年以降、タスカルーサ工場の累計生産台数は450万台を超える。

ベンツのもう一つの工場はサウスカロライナ州チャールストン近郊のラドソンに位置し、2006年に設立された。2018年には半組み立て工場から完全な製造工場へと拡張・昇格した。

現在、ベンツが米国で雇用する従業員数は1万人を超えており、サプライチェーンへの波及効果を考慮すれば、さらに多くの雇用を生み出している。

CNBCの報道によると、事情に詳しい関係者は、法案には解釈によっては対応次第でベンツが米国での事業を継続できなくなる可能性もある曖昧な部分が存在すると指摘した。同法案は発効後5年以内に、敵対的政府が支配する企業による米国内での自動車の製造・販売・輸入を禁止することを目的としている。

同法案は下院エネルギー・商業委員会委員長でケンタッキー州選出のブレット・ガスリー共和党議員が提出したもので、現時点では下院のみで審議が進んでおり、上院版は存在しない。ただし、上院では5月上旬に「2026年コネクテッドビークル安全法案(Connected Vehicle Security Act of 2026)」が提出された。同法案は中国製車両の脅威の増大から米国の自動車産業を守ることを目的としている。

米国自動車産業の保護

「2026年コネクテッドビークル安全法案」の上院版はオハイオ州選出のバーニー・モレノ共和党上院議員とミシガン州選出のエリッサ・スロットキン民主党上院議員が共同提出し、下院版はミシガン州選出の共和党ジョン・ムーレナール下院議員と同州のデビー・ディンゲル民主党下院議員が共同提出した。

同法案は米国の自動車産業および国家安全保障の関係者から幅広い支持を得ており、労働組合、自動車各社、業界団体がそれぞれ支持声明を発表した。

全米自動車労働組合(UAW)のショーン・フェイン委員長は「わが国と経済の安全保障は強固な米国自動車産業にかかっている。アメリカンドリームは米国内の良質な組合員向け自動車関連雇用とともに生まれ、維持されてきた。製造業を再建し、労働者階級の生活水準を向上させたいのであれば、短期的な企業利益を追い求めた世界規模の底辺への競争を招く形で自動車産業をアウトソーシングし続けることは許されない」と述べた。

ゼネラルモーターズ(GM)は「GMは米国の製造業の保護・強化および米国自動車メーカーのグローバル競争力向上を目的とする政策を支持しており、国内の労働力・施設・技術への長期投資に引き続き取り組む」との立場を示している。

李思斉