中国共産党(中共)上層部はこのほど、軍への政治統制を改めて強めた。高級将官を対象にした「鉄の規律」と称する措置を打ち出し、「絶対的な忠誠」と「道徳的な純粋さ」を求めている。専門家は、習近平が10年以上にわたり続けてきた軍内の「虎討ち」について、腐敗を一掃するどころか、より深い権力危機と信頼の崩壊を露呈させたとみている。
中共中央軍事委員会は近日、「軍隊高級幹部の教育・管理・監督を強化する若干の措置」を通達した。主要幹部の厳格な管理、上層部による率先垂範、主要指導者への監督管理の強化などを求めている。
文書の全文は公開していない。官製メディアの新華社によると、この措置は7分野26項目から成る。いわゆる新時代の「全面的な党内統治の厳格化・全面的な軍内統治の厳格化」の経験を総括したものだという。
また、思想面の統制強化と政治面の引き締めを徹底し、「厳格な教育、厳格な管理、厳格な監督」という「鉄の規律」を確立するとしている。
台湾国防安全研究院の沈明室研究員は、官製メディアが明らかにした条文の内容を見る限り、その多くは抽象的な道徳規範を積み重ねたものだと指摘する。権力闘争の中では、政治的な道具として使われやすいという。
沈氏は「本来であれば、法に基づいて管理すればよいはずだ。しかし、多くの道徳的な規範を打ち出している。権力闘争や粛清を行う際には、当然ながら際限なく拡大解釈でき、責任追及や粛清の口実になり得る」と述べた。
この26項目の「鉄の規律」では、高級将官に対して「思想改造の自覚性と徹底性を高める」ことも求めている。さらに、監督を職務遂行のすべての過程と、仕事や生活のあらゆる場面に及ぼすとしている。
軍事評論チャンネル「マーク時空」の司会者、馬克氏は、これは中共による新たな整風運動であり、互いに通報し、告発し合う段階に入っているとみる。
馬克氏は「高級将官を監督するこの条例を打ち出したことは、思想を統一し、どのように行動すべきかを示すものだ。次の段階として、5中全会の前に、さらに一部の将官が摘発されるとみている。この条例の目的は、施行後に互いに通報し、告発させることにある。延安整風(反対派粛清)であれ、中共が政権を取った後の歴代の粛清や反右派闘争であれ、いずれもこのような過程をたどってきた」
今回の26項目の発表時期は、中共軍内で激しい高層部の粛清が進む時期と重なる。
今年1月、中央軍事委員会副主席の張又侠と、中央軍事委員会統合参謀部参謀長の劉振立が、重大な規律・法律違反の疑いで調査を受けた。これにより、2022年の人事交代後に7人だった中央軍事委員会のメンバーは、主席の習近平と、副主席に就任したばかりの張昇民の2人だけになった。
軍上層部をめぐっては、最近も不自然な動きが相次いでいる。
国防相の董軍は、重要な国際会議や外交行事を相次いで欠席している。5月30日には、シンガポールで開かれたアジア安全保障会議も欠席した。
また、董軍の前任者である魏鳳和と李尚福については、当局がすでに執行猶予付き死刑判決を公表している。
沈氏は、高圧的な粛清は軍内の萎縮を招くと指摘する。軍幹部が実務上の判断や責任を避けるようになり、政治的な忠誠表明ばかりが目立つようになるという。
沈氏は次のように述べた。
「措置が下された後、しばらくの間は誰もが規則に従い、違反したり、目立つ行動を取ったりすることを避ける。しかし時間がたつと、それが法律に基づくものではないことが分かってくる。上層部や執行する側との関係が良ければ、こうした道徳的要求は実質的な意味を失う。やがて政治運動は冷え込み、誰もやりたがらなくなる。そして腐敗が再び生まれる。つまり、腐敗の循環になる」
26項目が発表される前の4月、習近平は軍の高級幹部向け研修クラスを初めて開いた。軍の将官に対し、「法規を理解し、規律をわきまえ、畏敬の念を持つこと」を求め、「法規制度の執行に例外はない」と強調した。
馬克氏は、習近平が絶対的忠誠の体制を築こうとしているとみる。官僚を毛沢東時代のような「清廉潔白」な存在に戻し、特別待遇は受けられても、私的な蓄財は許されないという体制を目指しているという。
また。「習近平は思想面で左傾化を進めるだけでなく、官僚たちにも毛沢東時代のような『清廉さ』を求めている。これは、習近平が党を立て直すために掲げる目標の一つだ。しかし現状を見る限り、党内には大きな抵抗がある。習近平は党の最高指導者として、権力と資源を意のままに動かす立場にある。そのため、習近平にとって金銭の意味は大きくない。しかし、配下の官僚たちにとってはそうではない」と指摘した。
馬克氏はさらに、継続する高圧的な粛清の下で、中共軍の戦闘力には疑問符が付いていると指摘した。ただし習近平にとっては、軍が実戦能力を維持しているかどうかよりも、自身に絶対的に忠誠を尽くし、政権の安全を確保できるかどうかの方が明らかに重要だという。
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