パナマ・ベネズエラ・キューバで進む対中共包囲網 トランプ政権の戦略

2026/07/27
更新: 2026/07/27

2026年、アメリカは建国250周年を迎えた。

7月3日夜、トランプ米大統領はサウスダコタ州のラシュモア山で演説し、共産主義について、第1次世界大戦、第2次世界大戦、真珠湾攻撃、さらには「9・11」同時多発テロをも上回る、アメリカ建国以来最大の脅威だと述べた。

そのうえで、「アメリカは共産主義を打ち破る」と強調した。

現在、世界で最大規模を持つ共産党は中共である。

中国共産党(中共)は過去数十年にわたり、中南米の一部の社会主義政権や、形を変えて活動するマルクス主義勢力を通じ、米州各地の政治、経済、安全保障分野に影響力を広げてきた。

第47代米大統領に就任したトランプ氏は、モンロー主義を現代的に再解釈し、米州におけるアメリカの主導権を強化するとともに、中共の影響力を域外へ押し戻そうとしている。

こうしたトランプ流の外交戦略は、中国語圏の一部で「ドンロー主義」とも呼ばれている。

トランプ政権が米州で進めてきた主な措置は、少なくとも次の六つである。

1.パナマ運河への中共の影響力拡大を阻止

トランプ政権は、政治、経済、軍事、外交上の圧力を組み合わせ、パナマ政府に中共の巨大経済圏構想「一帯一路」から離脱するよう促した。

さらに、パナマ政府が運河両端の港湾を管理下に置くことを後押しし、中共がパナマ運河への影響力を強めようとする動きを食い止めた。

2026年1月、パナマ最高裁は、香港の長江和記(CKハチソン)傘下の子会社が保有していた、運河両端の港湾運営契約について、憲法に違反するとの判断を示した。

同年2月下旬、パナマ政府は、この二つの戦略的港湾の運営を引き継いだ。

これに対し、中共はパナマ籍船舶への検査や留め置きを強化した。

2026年2月から7月までに、中国の港湾で検査や留め置きの対象となったパナマ籍船舶は473隻に達し、2025年通年の256隻を大きく上回った。

4月28日、アメリカはボリビア、コスタリカ、ガイアナ、パラグアイ、トリニダード・トバゴと共同声明を発表した。

声明は、「パナマはわれわれの海上貿易体制を支える柱であり、いかなる不当な外部圧力からも守られなければならない。パナマの主権を損なおうとする行為は、われわれすべてに対する脅威である」と指摘した。

アメリカなどからの圧力を受け、中共は一定の譲歩を余儀なくされた。

7月、パナマと中国は海上輸送協定を更新した。

パナマのカルロス・オヨス外相代行は最近、中国港湾におけるパナマ籍船舶への検査や留め置きの頻度が、過去の通常水準に戻ったと明らかにした。

2.マドゥロ拘束 中共が南米の重要拠点を喪失

トランプ政権は、中共の「古くからの友人」とされてきたベネズエラのニコラス・マドゥロ前大統領を拘束した。

これにより、中共は南米における重要な政治的足場を失うとともに、安価な石油の供給源や、中国製品の輸出市場も失った。

1月3日、米特殊部隊はマドゥロ氏を拘束し、裁判を受けさせるためニューヨークへ移送した。

ベネズエラでは事実上の政権交代が起き、デルシー・ロドリゲス暫定大統領はアメリカとの協力を進めた。

これにより、アメリカとベネズエラの関係は徐々に正常化へ向かっている。

7月20日、ルビオ米国務長官は、ベネズエラが8月1日から正式に民主化移行プロセスを始めると明らかにした。

米国務省の声明によると、2015年に選挙で選出されたベネズエラ国民議会と暫定政府は合意に達し、8月第1週から政治移行と国民和解の枠組みを始動させる。

ルビオ氏は、これはベネズエラ国民が民主主義へ向かう重要な一歩であり、アメリカは移行プロセス全体に積極的に関与すると述べた。

米国務省は7月16日の声明で、移行はベネズエラ国民が主導すると強調した。

アメリカは平和的で民主的な選挙を支援するとともに、1億8千万ドルを超える復興支援を提供し、国際的な融資や信用供与の確保にも協力するとしている。

中共とベネズエラ社会主義政権との27年にわたる同盟関係は、事実上終わりを迎えた。

中共は今後、ベネズエラから安価な石油を得ることが難しくなる。

また、中共がベネズエラに供与した100億ドルを超える融資も、回収不能となる可能性がある。

これまでの投資も、損失につながるおそれがある。

盤石に見えた中共とベネズエラ政権の同盟が短期間で崩れたことは、米州だけでなく、ほかの地域にも連鎖的な影響を及ぼす可能性がある。

3.キューバ政権へ最大限の圧力

トランプ政権は、中共のもう一つの「古くからの友人」であるキューバ指導部にも最大限の圧力を加えている。

社会主義体制を続けるキューバでは、体制転換の可能性が現実味を帯びる歴史的局面を迎えている。

中共にとっては、カリブ海地域で最も重要な反米拠点を失う可能性がある。

冷戦時代、キューバは旧ソ連にとって、中南米における反米の前線基地だった。

ソ連崩壊とソ連共産党の解体後、中共がソ連に取って代わり、キューバは中共の「良き友人、良き兄弟、良き同志」と位置づけられるようになった。

キューバとアメリカの最短距離は約145キロで、この海域はフロリダ海峡と呼ばれる。

キューバ北岸は、米フロリダ半島南端のキーウェストと海を隔てて向かい合っている。

中共はキューバ国内で少なくとも三つの情報収集施設を運用しているとされ、アメリカの国家安全保障に重大なリスクをもたらしている。

米南東部にある軍事施設、作戦司令部、宇宙関連の発射施設、そのほかの機密拠点が、中共の監視対象となる可能性がある。

また、この地域におけるアメリカの航空、宇宙、海上活動も監視されるおそれがある。

アメリカがマドゥロ氏を拘束したことで、キューバが長年ベネズエラから受けてきた石油や天然ガスの供給経路は断たれた。

石油、天然ガス、電力の不足が深刻化し、キューバはかつてない危機に陥っている。

アメリカは現在、経済、政治、軍事、外交の各方面からキューバに最大限の圧力を加えている。具体的には、石油禁輸、ミゲル・ディアスカネル大統領や複数の政府機関、関連組織への制裁、ラウル・カストロ元国家評議会議長を殺人容疑で訴追する措置などが含まれる。

7月13日、米国務省は新たに10の団体への制裁を発表した。これらの団体がキューバ政権の資金源に関与し、政府による国民への弾圧を支援したことが理由だとしている。

キューバの社会主義体制は、かつてないほど大きな圧力にさらされている。

4.「米州の盾」で安全保障協力を拡大

トランプ政権は「米州の盾」構想を打ち出した。

アメリカを中心に西半球の各国を、安全保障協力を軸とする地域連携へとまとめ、軍事協力、情報共有、共同作戦を強化することで、麻薬組織や国境を越えた組織犯罪に対処する狙いがある。

同時に、中南米における中共の経済的、戦略的影響力に対抗することも目的としている。

3月7日、トランプはフロリダ州で「米州の盾」サミットを主催した。

中南米とカリブ地域から、アルゼンチン、ボリビア、チリ、コスタリカ、ドミニカ共和国、エクアドル、エルサルバドル、ガイアナ、ホンジュラス、パナマ、パラグアイ、トリニダード・トバゴの12か国の首脳が出席した。

ホワイトハウスは、サミットの目的について、「麻薬テロ組織への対処と、大規模な不法移民の阻止に向けた最前線の戦略を推進し、アメリカと西半球全体をより安全にすることだ」と説明した。

ノーム前国土安全保障長官は、「米州の盾」担当特使に任命された。

5.USMCA再交渉で中国製品の迂回輸出を阻止

トランプ政権は、アメリカ・メキシコ・カナダ協定、いわゆるUSMCAの再交渉にも乗り出した。中国製品がメキシコやカナダを経由し、現地産を装ってアメリカ市場に流入するのを防ぐ狙いがある。

2026年7月1日はUSMCA更新の期限だったが、トランプ氏は更新を明確に拒否した。

このため、協定は自動延長されず、今後は毎年の見直し対象となる。

現在の交渉は、アメリカとメキシコが二国間で協議を進めている。カナダは交渉に参加していない。

アメリカは、メキシコ製自動車に国家安全保障を理由とする25%の追加関税を課し、メキシコ産の鉄鋼とアルミニウムには50%の関税を課している。

これに対し、メキシコは報復措置を取らず、アメリカとの交渉を積極的に進めた。また、アメリカの意向に沿う形で、中国製自動車に50%の関税を課した。こうした対応はアメリカから評価されている。

メキシコのエブラルド経済相は、「現時点で克服できない重大な意見の相違は見当たらない」と述べ、比較的早期に合意へ達するとの見通しを示した。

エブラルド氏によると、アメリカとメキシコの間で意見が対立している項目は、前年の54項目から14項目に減少したという。

一方、カナダはアメリカの追加関税に対して報復措置を取った。

これを受け、アメリカは7月20日、約200億ドル相当のカナダ製品に50%の追加関税を課すと発表した。

関税は30日後に発効する。

カナダ政府の統計によると、2025年もアメリカはカナダにとって最大の輸出先であると同時に、最大の輸入相手国でもあった。

カナダの対米輸出額だけで、対中貿易総額、すなわち輸出と輸入の合計に匹敵するか、それを上回っている。

また、カナダの対米貿易総額は、対中貿易総額の7倍以上に達する。

アメリカはカナダにとって最大の輸出市場である。

最大の輸出市場に対する報復措置を長期間続けることは難しく、最終的にはアメリカとの交渉を模索せざるを得ないだろう。

交渉の結果、中国からカナダを経由してアメリカへ輸出される商品には、厳しい制限が課されることになるとみられる。

6.中南米7か国で保守派政権が誕生

アメリカが中南米諸国に対する左派的政策への支援を削減した後、チリ、ボリビア、ペルー、エクアドル、ホンジュラス、コロンビア、コスタリカの7か国で、保守派候補が相次いで大統領選に勝利した。

2025年10月、ボリビア大統領選の決選投票では、中道右派のロドリゴ・パス氏が勝利し、左派政党「社会主義運動」が20年にわたり続けてきた支配に終止符を打った。

同年12月のチリ大統領選決選投票では、右派共和党のホセ・アントニオ・カスト候補が、約58%の得票率で勝利した。

2026年6月には、ペルーの右派政党指導者ケイコ・フジモリ氏が僅差で勝利した。

エクアドルでは中道右派のダニエル・ノボア氏が再選を果たし、ホンジュラスでは保守派のナスリ・アスフラ氏が当選し、就任した。コスタリカでは2月の選挙で、右派のラウラ・フェルナンデス氏が勝利した。

6月21日に行われたコロンビア大統領選の決選投票では、トランプ氏の支持を受けたデラエスプリエジャ氏が49.66%を獲得し、左派のイバン・セペダ上院議員の48.7%を僅差で上回った。

この7か国で新たに選ばれた指導者はいずれも親米的で、その多くが中共に強い警戒感を持っている。

一連の選挙結果は、米州各国で保守派が勢力を伸ばし、外交面でもアメリカとの連携を重視する傾向が強まっていることを示している。

米州で後退する中国共産党の影響力

キューバとベネズエラはいずれも、かつては米州の豊かな国だった。

しかし、両国では社会主義体制のもとで富と権力が一部の特権層に集中し、多くの国民が貧困に陥ったと指摘されている。

左派政策や社会主義政策を採用してきたそのほかの国々も、経済、社会、政治の危機に直面している。

保守主義理念を掲げるトランプ氏が大統領に就任して以降、「アメリカを再び偉大にする」とのスローガンのもと、過去数十年間にわたるアメリカ政府の中共に対する宥和政策を根本から転換した。

中共をアメリカにとって最大の戦略的ライバルと位置づけ、政治、経済、安全保障の各分野で対抗措置を強めている。

トランプ2期目政権が始まって以降、アメリカは米州における指導的地位を強化した。

トランプ流に再解釈されたモンロー主義は、アメリカと米州諸国との関係を再構築する新たな柱となり、米州の地政学的構図を塗り替えつつある。

以上の六つの措置は、米州における社会主義勢力や中共の影響力を弱めるための具体的な行動である。

中共の米州での影響力は、すでに大きな打撃を受けている。

今後も、中共の米州における影響力は、さらに後退する可能性がある。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
王友群