【軍事】日本の沿岸防衛にMQ-28案 無人機で変わる南西防衛

2026/09/10
更新: 2026/09/10

米ボーイングは、日本の無人システムを活用した沿岸防衛構想「SHIELD」への参加を視野に、無人戦闘機MQ-28「ゴーストバット」を防衛省へ提案する考えを示した。日本政府による採用・調達は未定だが、導入が実現すれば、有人戦闘機と無人機が連携した防衛態勢や、南西諸島を含む西太平洋の安全保障環境に影響を及ぼすだろう。防衛省はSHIELDに2026年度予算案で1001億円を計上し、2027年度中の体制構築を掲げている。

日本がMQ-28を導入するかどうかは決まっていない。ただ、導入が実現すれば、有人機と無人機を組み合わせる日本の防衛態勢は大きく変わる将来性がある。西太平洋の安全保障環境にも影響を与えそうだ。

SHIELD構想 2027年度の本格運用を想定

ボーイング・ディフェンス・スペース&セキュリティのスティーブ・パーカー社長兼CEOは、防衛省にMQ-28を提案する意向を示した。防衛省が検討を進める新たな沿岸防衛戦略との連携を視野に入れたものとみている。

防衛省は2026年度予算で、SHIELD構想関連に約1001億円を計上している。SHIELDは「Synchronized, Hybrid, Integrated and Enhanced Littoral Defense」の頭文字を取った名称である。「同期・混成・統合・先進型沿岸防衛」を意味する。

無人航空機、無人水上艇、無人潜航機などを組み合わせ、沿岸部を守るネットワークをつくる構想である。防衛省は2027年度中の本格運用開始を想定している。

ただし、日本政府がMQ-28の採用や調達を決めたわけではない。ボーイング側が、日本の将来の無人戦力に向けた選択肢として提案している段階である。

MQ-28「ゴーストバット」とは 有人機と連携する無人戦闘機

MQ-28は、有人戦闘機と連携して任務を行う無人機である。ネットワークを通じて情報を共有し、有人機の情報収集の範囲や活動できる距離を広げる役割を担う。米軍などでは、こうした機体を「協働戦闘機」と呼んでいる。

全長は約12メートルで、ジェットエンジンを搭載する。航続距離は3700キロメートルを超え、最高速度はマッハ0.9程度とされる。操縦席がないため、機体内部には燃料やセンサー、電子戦装備などを搭載できる。

任務に応じて搭載機器を替えられる点も特徴である。レーダーや赤外線センサー、電子戦装備、通信中継装置などの搭載を想定している。

MQ-28はオーストラリア空軍との共同開発で進めてきた。2026年6月には、米軍主導の多国間統合演習「ヴァリアント・シールド2026」に参加した。北マリアナ諸島周辺で、F-35A、F-35B、F-15EX、E-3、E-2D、EA-18G、RC-135など、米軍や同盟国・パートナー国の有人機とともに運用した。

無人機を組み合わせる沿岸防衛

SHIELDでは、空中、海上、海中の無人システムを組み合わせることを想定している。複数の無人機や無人艇を分散して運用し、沿岸部の監視や情報収集を続ける態勢を目指す。

ボーイングは、MQ-28をその空中戦力の候補と位置付けている。有人戦闘機に無人機を加え、空中、海上、海中のシステムを連携させる考えである。

こうした態勢では、センサーで得た情報を共有し、目標の探知、追尾、対処を複数の部隊で行うことになる。特定の高価な有人機だけに依存しない防衛態勢をつくる狙いがある。

南西諸島の警戒監視はどう変わるのか

MQ-28の航続距離や柔軟な運用能力は、南西諸島での防衛にも関わる可能性がある。有事には、南西地域の基地が弾道ミサイルや巡航ミサイルの攻撃を受けるおそれがある。

無人機は、搭乗員を危険にさらさずに運用できる。このため、分散配備や長時間の警戒監視に使いやすい。南西諸島の周辺で、継続的な監視や早期警戒を行う選択肢が広がる。

日豪協力が進展 MQ-28Aの研究・試験参加へ

MQ-28をめぐる協力は、日米豪の防衛技術協力や指揮統制にも関わる。MQ-28は、米軍や同盟国・パートナー国の有人戦闘機、情報収集や指揮を担う航空機との連携を重視している。

日本とオーストラリアは2026年4月18日、MQ-28Aを含む協働戦闘機の分野で協力するための実施取決めに署名した。

この取決めにより、日本は2026年度中、オーストラリアで行われるMQ-28関連の研究や飛行試験に関する教育・訓練に参加できることになった。

ただし、この取決めは日本による機体の調達や共同開発を決めたものではない。研究や試験への参加を対象とする協力の枠組みである。

日本はイギリス、イタリアとともに、第6世代戦闘機の開発を目指す「グローバル戦闘航空プログラム(GCAP)」も進めている。防衛省は2025年初め、GCAPに関わる有人機と無人機の協働運用をシミュレーションする研究について、ボーイングと約1億5500万円規模の契約を結んだと報じられている。

MQ-28との協力は、機体を導入するかどうかだけにとどまらない。無人機の自律制御や複数の無人機を連携する運用、通信妨害のおそれのある環境で情報を共有する技術など、将来のGCAP関連研究に生かせる見込みがある。

西太平洋の軍事バランスと中国のA2/AD能力

MQ-28が日本の防衛態勢に組み込まれれば、台湾海峡を含む周辺の海や空の軍事バランスにも影響を与える可能性がある。

中国軍は近年、対艦弾道ミサイルや防空ミサイル、海軍力を組み合わせた「接近阻止・領域拒否(A2/AD)」能力を強化してきた。米軍や地域の同盟国・パートナー国の接近や活動を妨げることを目的とする能力である。

宮古海峡とバシー海峡は、中国軍が第一列島線を越え、西太平洋へ進出する際の重要な通路である。この周辺では、警戒監視や電磁波を利用した情報戦、制空権をめぐる競争が重要になるとみられる。

MQ-28を前方地域で継続して運用できれば、相手方の防空網に近い空域で、情報収集・監視・偵察を長時間行うことができる。得られた情報を日米の戦闘機や海上部隊と共有できれば、海や空の目標を早く把握し、対応を急ぐことにつながる。

MQ-28は、レーダーや赤外線センサー、電子戦装備を搭載し、通信の中継にも使える。有人機より前方で警戒監視を行うほか、相手方の防空網に関する情報収集なども想定できる。

将来的には武器の搭載も検討対象となり得る。ただし、具体的な武装や日本での運用方法は、調達を含めて決まっていない。

MQ-28の導入が実現すれば、日本の南西地域を含む西太平洋の防衛態勢を支える新たな航空戦力となるだろう。その効果は、機体そのものの性能だけでは決まらない。日米豪で情報をどこまで共有できるか、指揮統制をどのように行うか、有人機と無人機をどこまで連携させられるかが重要になる。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
夏洛山
大紀元時報(中国語)記者。長い従軍経験があり、軍事番組「Military Focus」を主宰する。