中国 習近平体制を揺るがす軍「五つの異変」 高官粛清とロケット軍失脚の深層

2026/09/10
更新: 2026/09/10

中国共産党(中共)第20回全国代表大会以降、軍では、高級将官の失脚、調査、処分、公的行事への長期不参加が前例のない規模で相次いでいる。これは通常の反腐敗運動の範囲を超え、軍上層部の人事と統治に深刻な問題が生じている可能性を示す事態である。

中央軍事委員会、ロケット軍、陸軍、海軍、空軍、五つの戦区、軍事教育機関に至るまで、軍の中枢を担ってきた上将級の幹部をめぐり、失脚、調査、処分、長期不在といった情報が相次いでいる。中共当局は個別事案について断片的な発表にとどめ、詳細を十分に明らかにしていない。しかし、公開された人事情報や重要行事への出欠状況を照合すると、軍内部で広範な人事再編と統制強化が進んでいることは明らかである。

ただし、公式に調査・処分が発表された事案と、公的行事への不参加や人事上の動きから失脚が推測される事案は区別する必要がある。以下では、その点を踏まえながら、中共軍上層部をめぐる五つの問題を整理する。

一、中共軍をめぐる五つの重大な異変

1.軍選挙委員会の11人中9人が失脚と取り調べ

第一の異変は、中共軍の全国人民代表大会代表選出に関わる選挙委員会の主要構成員をめぐる異変である。

2022年12月に公表された同委員会は、張又侠を主任、何衛東を副主任とし、李尚福、劉振立、苗華、張升民、鍾紹軍、王仁華、何宏軍、王成男、孫斌ら計11人で構成されていた。

その後、このうち大半に当たる9人が、調査・処分され、失脚した。軍上層部における人事と政治的信頼が根底から揺らいでいることを示す。

2.中央軍事委員会「7人中5人」の失脚

第二の異変は、習近平が第20回党大会後に主導して構成した中央軍事委員会をめぐる機能不全である。

中央軍事委員会は7人で構成され、習近平を主席とし、張又侠、何衛東の両副主席、李尚福、劉振立、苗華、張升民の委員で発足した。

しかし、その後、張又侠、何衛東、李尚福、劉振立、苗華の5人が「重大な腐敗問題」により取り調べ・処分の対象となったとされる。

李尚福氏は執行猶予付きの死刑判決を受け、その後に無期懲役へ減刑された場合でも終身拘禁となる。何衛東氏と苗華氏は党籍・軍籍を剝奪され、司法手続きに移送された。張又侠氏と劉振立氏は全国人民代表大会の代表資格を剝奪され、党・政府・軍における職務もすべて解かれた。

3.ロケット軍歴代司令員4人の失脚

第三の異変は、ロケット軍の歴代司令員をめぐる相次ぐ失脚と人事上の異変である。

ロケット軍は、核戦力、弾道ミサイル、長距離精密打撃能力を担う中共軍の戦略的中枢である。習近平が軍制改革を通じて再編・強化した同部隊では、これまでに習近平が自ら登用した司令員4人、すなわち魏鳳和、周亜寧、李玉超、王厚斌の全員が、「重大な腐敗問題」を理由に調査・処分対象とされた。魏鳳和氏は執行猶予付きの死刑判決を受け、無期懲役へ減刑された。

ロケット軍をめぐる問題は、単なる汚職事件にとどまらない。装備調達をめぐる不正、軍需企業との癒着、部隊指揮、人事、機密管理に及ぶ構造的な腐敗が疑われている。核・ミサイル戦力は、平時には外部から実態を検証しにくい。だからこそ、指揮官層の大規模な失脚は、中国の軍事力が公式発表のとおりに機能しているのかという重大な疑問を生む。

台湾海峡や東シナ海をめぐる軍事的緊張が高まるなか、中国の戦略戦力をめぐる不透明性は、地域の安全保障にとって無視できないリスクである。

4.上将級幹部32人が調査・処分対象に

第四の異変は、上将級の幹部に対する調査、処分、失脚が異例の規模で広がっていることである。

第20回党大会以降、中央軍事委員会、政治工作部、連合参謀部、装備発展部、後勤保障部、陸軍、海軍、空軍、ロケット軍、武装警察部隊、戦区、国防大学、軍事科学院に至る幅広い組織で、上将級の幹部が調査・処分の対象となった、あるいは人事上の異変が指摘されている。その数は32人に上るとされる。

そこには李尚福、魏鳳和、苗華、何宏軍、王仁華、周亜寧、李玉超、王厚斌など、軍の装備調達、政治工作、戦略兵器、作戦指揮を担ってきた人物が含まれる。全員について同程度の公式確認があるわけではないとしても、これほど多くの上将級幹部に疑惑や人事上の異変が集中していること自体、極めて異例である。

軍上層部の腐敗は、もはや一部の幹部による不正にとどまらず、組織全体に広がる制度的な問題として捉える必要がある。

5.上将級幹部26人が公の場から姿を消した

第五の異変は、多数の上将級幹部が重要な公的行事への出席を確認できない状態が続いていることである。

全国人民代表大会、中国人民政治協商会議、上将への昇格式、中国国防部の重要行事、空母進水式、中央委員会総会、高級幹部向け研修会など、本来であれば軍の主要幹部が出席するとみられる場で、複数の将官の不在が続いている。

徐起零、胡中明、徐西盛、汪海江、呉亜男、黄銘、王強、肖天亮、楊学軍らを含む26人については、長期にわたり公的行事への出席が確認されていないとされる。

中国では、軍幹部が公の場に姿を見せなくなった理由が、健康上の問題、配置転換、調査、拘束、政治的失脚のいずれによるものか、当局から明確に説明されないことが多い。しかし、軍種、戦区、武装警察部隊、軍事教育機関にまたがる多数の上将級幹部が、同時期に公的行事へ出席しなくなる現象は、偶然とみなすには不自然である。軍内部では広範な調査、人事再編、統制強化が進んでいる可能性が高い。

二、なぜ軍の腐敗はここまで深刻化したのか

これまで、中共軍における腐敗問題について何度も分析し、「反腐敗を掲げるほど腐敗が深まる」理由にも触れてきた。たとえば、中国共産党が国際的に広く採用されている公務員の財産申告・公開制度を導入していないことも、その一因である。ここでは重ねて論じない。

ここで改めて指摘したい根本的な原因は、中国共産党が「真・善・忍」を信条とする法輪功の修煉者に対し、27年にわたり続けてきた迫害である。

1999年7月20日、中国共産党の独裁者であった江沢民は、法輪功をめぐるいかなる事実や説明にも耳を貸さなかった。法輪功を実践する人があまりに多く、自らの権力を脅かす可能性があると恐れ、法輪功を迫害すべきだと決めた。そして、国内外からの批判を顧みず、国家機構を総動員して法輪功への迫害を開始した。

江沢民は、党・政府・軍の最高権力を一手に握り、宣伝機関と強権的な統治装置を掌握していた。国家の財政資源も動員できる以上、法輪功を短期間で封じ込められると考えたのである。

しかし江沢民は、どのような手段を講じても、法輪功への弾圧を成功させられないとは予想していなかった。

追い詰められた江沢民は、さらに歪んだ方策を思いついた。すなわち、法輪功迫害に従う官僚であれば、どれほど腐敗していても登用・重用し、腐敗が深刻な者ほど出世させるというものである。

その結果、江沢民は、中国共産党政治局委員で中央軍事委員会副主席を務めた郭伯雄、徐才厚らを含む、重大な腐敗に関与した人物を登用・重用した。

江沢民、郭伯雄、徐才厚らが先導したことで、軍の腐敗は、がん細胞のように組織の上層から末端まで急速に広がった。

習近平は2012年の就任後、数え切れない会議を開き、厳しい警告を繰り返し、関連する法規・規律を整備し、腐敗防止のための教育・啓発を実施してきた。また、死刑、死刑執行猶予、無期懲役を含む重い刑罰を、多くの高級官僚や軍高官に科してきた。

しかし、軍内の腐敗を抑え込むことには成功しなかった。それどころか、腐敗はますます深刻化し、前述した五つの重大な異変を招くに至った。

なぜなのか。

第一に、習近平は政権発足以来、江沢民による法輪功迫害政策を継続してきた。
第二に、習近平は、当時の党・政府・軍の最高層における深刻な腐敗を支えた最大の後ろ盾であった江沢民を追及しなかった。それだけでなく、江沢民の死後、党の歴史的指導者として高く位置づけた。
第三に、軍における腐敗は末期がんにたとえられる段階にまで達しており、抗がん剤治療、放射線治療、外科手術に相当する対策を講じても、もはや効果が期待できない状態にある。

結語

法輪功の修煉者は、「真・善・忍」を信条としている。中国共産党が法輪功を27年間にわたって「真・善・忍」を掲げる人々への迫害を続ける一方で、虚偽、悪意、闘争を政治運営の手段として用いるなら、その影響は党、政府、軍、経済、文化の全域に及ぶ。軍内腐敗はその最も危険な表れの一つである。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
王友群