戦争は突然始まらない 中共の新法が示す台湾有事への警告

2026/08/10
更新: 2026/08/10

民主主義国家には、警告の兆候を見過ごす悪い習慣がある。「挑発的な言葉は国内向けにすぎない。強硬な法律も大半は象徴的なものだ。経済的な相互依存が、いずれ権威主義体制を穏健化させる」。そう自らに言い聞かせ、危険の芽を過小評価してしまうのである。

しかし、歴史が教えるところは明快だ。強大な国家が、国境を越えた行動を正当化するための法的、政治的根拠を構築し始めた時、その動きを軽視してはならない。

中国共産党政権は、まさにその警戒を促す新たな材料を示した。中共の「民族の団結と進歩の促進に関する法律」は7月1日に施行された。同法第63条は、中国国外の組織や個人についても、政府が「民族の団結を損ない、民族間の分裂を生じさせる」と判断した行為に対し、法的責任を問えると規定している。

つまり中共は、自国の国境を越えた行為についても、法的な関与を及ぼす根拠を主張しているのである。民主主義国家は、この主張が意味するところを正面から理解すべきだ。

われわれは、この原則を明確かつ断固として拒否しなければならない。中国の法律が、海外に暮らす中国系、チベット系、ウイグル系、台湾系、その他のルーツを持つカナダ国民について、その政治的忠誠心や発言、民主的権利を決めることなどできない。

さらに、より大きな戦略上の警告もある。

ロシアが2022年にウクライナへの全面侵攻を開始するまで、プーチン大統領は長年にわたり、歴史、言語、文化、民族を根拠として、ウクライナがロシアとは本当に別の国家なのかを疑問視する主張を重ねていた。2021年には、ロシア人とウクライナ人は本質的に一つの歴史的民族に属すると公然と主張した。その数カ月後、ロシア軍はウクライナの国境を越えた。

もちろん、中共はロシアではない。新法の施行が、台湾をめぐる紛争が不可避であることを意味するわけでもない。しかし、権威主義国家は、自らの論理に基づいて行動に移る前に、その論理を対外的に示すことが少なくない。

だからこそ、民主主義国家は、彼らの発言やシグナルを深刻に受け止めるべきである。

中共が台湾について主権を主張し、約2400万人が暮らす台湾の併合を実現するため、武力行使を放棄しない姿勢を示していることを考えれば、その重要性は極めて大きい。

欧州も、台湾海峡の安全保障を「遠いアジアの問題」として扱うことをやめるべきだ。台湾は世界の半導体産業の中核に位置し、通信、人工知能(AI)、自動車、航空宇宙、現代の防衛システムに不可欠な先端半導体を生産している。

台湾海峡で大規模な紛争が起きれば、世界の貿易やサプライチェーンは深刻な混乱に陥る。その影響は、ほぼ直ちに欧州の企業や家庭にも及ぶだろう。

ウクライナから得られるもう一つの教訓も、民主主義国家の指針となる。それは、抑止は戦争が始まる前にこそ最も大きな効果を発揮するということだ。

ロシアによる2008年のジョージア侵攻や2014年のクリミア併合に対し、国際社会は非難と制裁を科した。しかし経済関係は維持され、欧州はロシアのエネルギーに大きく依存し続けた。

モスクワは、西側諸国の憤りには限界があると判断することができた。そして最終的に、その判断は悲惨な結果をもたらした。

われわれが貿易や外交などの分野で中共政権との関係を模索することは、主権や威圧、国際秩序をめぐる根本的な意見の相違が存在しないかのように振る舞うことを意味してはならない。

同時に、民主主義国家は、権威主義国家が支配するサプライチェーンへの危険な依存を減らす必要がある。半導体、重要鉱物、エネルギー、通信技術、医薬品、そして国家防衛に必要な産業基盤へのアクセスを強化しなければならない。

われわれ自身も、石油・天然ガス、ウラン、重要鉱物、鉱業技術、農業、先端技術、さらには大西洋と太平洋の双方の市場へのアクセスという、大きな戦略的優位性を持っている。

こうした資産を保有していることを謝罪する必要はない。むしろ、それをさらに発展させるべきである。

台湾も、その経済戦略の一部となり得る。環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)を含む国際経済機関への台湾のより深い参加を支持することは、民主主義国家間の経済関係を強化し、威圧に対する脆弱性を低減することにつながる。

より広い原則は単純である。しかし、その重要性は増している。

主権は重要だ。国境も重要である。そして民主主義国家の国民には、別の国が民族、言語、歴史を根拠として自らへの権限を主張することなく、自らの未来を決定する権利がある。

この一世代、西側諸国は、経済統合によって権威主義国家が徐々に民主主義国家へ近づいていくと考えてきた。

しかし、現実は必ずしもそうではなかった。権威主義国家は経済統合や技術、さらには法律さえも利用し、自らの利益を国境の外へ拡大することができる。

われわれは中共に対して自信を持ち、現実的に対応しなければならない。同時に、中共政権が主権、国家統一、台湾をどのように捉えているのかについて、北京自身の言葉に注意深く耳を傾ける必要がある。

歴史は、次に何が起きるのかを記した招待状を送ってくることはめったにない。むしろ、結果が訪れるはるか前から、警告の兆候は現れている。

問われているのは、それを認識する準備ができているかどうかである。

責任ある国家に求められるのは、そうした警告を十分に早い段階で認識し、抑止を成功させることだ。そして何より、戦争そのものを始めさせないことである。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
ブライアン・ブルロット氏は、オタワに拠点を置くプライベート・エクイティ会社、スターリング・トラストの会長です。経営学の博士号を取得しており、軍務経験に加え、民間および公共部門における要職を歴任するなど、40年以上にわたる豊富な経験を有しています。